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日本初の着物スタイリストが語る”黒の極意” 大久保信子さん(後編) 【YouTube連動】「着物沼Interview」vol.5

日本初の着物スタイリストが語る”黒の極意” 大久保信子さん(後編) 【YouTube連動】「着物沼Interview」vol.5

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日本で初めて「着物スタイリスト」という肩書きで活動を始めた大久保信子さん。”装いの美学”について語ってくださった前編に続き、後編では大久保流”黒の極意”を紐解いていきます。

愛用の浴衣たちに見る美のポリシー

着物歴80年という大久保信子さんは、日本初の「着物スタイリスト」として、雑誌やテレビなど数多くのメディアで著名人の着物スタイリングや着付けを手掛けてきました。

2025.09.08

エッセイ

大久保信子さんのきもの練習帖

2025.07.07

おでかけ

歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル

日本舞踊の稽古や歌舞伎鑑賞などの経験に裏打ちされた確かな知識と確固たる美意識を武器に、長年にわたって活躍されている着物のプロ中のプロです。

大久保信子さん

最初に見せてくださったのは、長年お稽古を続けてきた日本舞踊・藤間流に所縁ある藤モチーフの浴衣。藤間流では、1~2年に1度、皆で揃って浴衣を新調するといいます。

「流儀によって、習っている先生が決めた揃いの浴衣を誂えるの。なるべくスマートに見える柄を選ぶわね」

浴衣

「何年経っても使える留柄のようなもの」と、大久保さん

「昔は昼間は紺地の浴衣、夕方からは白地のものを着るのが暗黙のルールだったけれど、いまではいつでもお好きなものをお召しになったらいいと思います。ただ、薄暗くなると黒い浴衣では目立たない。夕闇に白い浴衣だと、ふわ~と浮き上がって見えて素敵だと思いますよ

浴衣

藍と白の綿絽の浴衣

「綿を絽織りした綿絽の生地は非常に涼しいので、浴衣にすると快適です」

と、大久保さん。

また、同じ浴衣でもシャリ感のある綿紅梅の生地であればワンランクアップし、おでかけにも適しているとのこと。

「私が浴衣を着るときは、下に肌襦袢だけ着用します。若い方だと、ブラジャーと腰巻だけなんて方もいらっしゃるみたいね。近年は暑い時期が長いので、立夏(5/5頃)を過ぎたら、いつでも大手を振って浴衣を着ていいと思います。

大人の女性にはぜひ、博多帯のお太鼓を締めていただきたいわ。素敵だから。足袋で下駄を履いて、銀座でもどこでも歩いてください

2025.07.07

おでかけ

博多帯でキリリ。風薫る初夏のエンターテインメントへ! 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」 vol.5

徹底的に愛して止まない黒地の染め帯

「私、”大人可愛い”って言葉が大好きなの!」

と目を輝かせた大久保さんは、江戸の庶民が親しんだ染め帯をこよなく愛しています。それも、とくに黒地の帯を。

格好いいスタイリッシュなイメージのある黒を、可愛く着こなすのが大久保信子流。

黒のコーデ

頂きものの黒地の小紋に合わせたのは、金通し地の黒地の染め帯。

「いくつになっても可愛さを残さなきゃと思っているの。だから、可愛らしい鞠柄で帯を誂えました。絹地に金が織り込まれていて、少しだけキラキラと、高級感のある仕上がりになりました」

塩瀬染め帯

お気に入りの黒地の塩瀬染め帯(写真左)も、あしらわれた金がゴージャスな印象に。「銀よりは金がいいの!」と大久保さん

季節の帯が欲しくて選んだのはチューリップ柄。こちらも、もちろん黒地の染め帯です。

「これはやっぱりチューリップが咲く頃に締めたいわね。黒は締まる色だし、どんな着物にも合うから大好きなの。よく触りがちなタレなんかの汚れも気にしないで締められるし」

日本橋柄の帯を手に

母から譲り受けた、日本橋の風景を描いた三越百貨店別誂の一条は、「ちょっと凝ったときに締めていく」よそ行きの帯

「こうして改めて見てみると、本当に黒地の染め帯ばっかりね!私やっぱり、染め帯が大好きだわ」

江戸の「粋」を醸し出す大久保信子流の着こなし

帯に続いて、お気に入りの着物も拝見。

お気に入りの着物も拝見

「変わり絽地に友禅、黒地の夏物の訪問着です。夏になったらすすき柄がいいわね。金彩が入ると少し豪華さが増すから、これに龍村(美術織物)の夏帯でも締めればどこにでも行けますよ。紋は入れていません。紋を入れると格が上がりすぎて、着ていく場所を選んでしまうから」

と、大久保さん。

お弟子さん手製の黒地のレース羽織

こちらは、お弟子さん手製の黒地のレース羽織。

「ちょっと肌寒いときなんかに便利よね。秋風が吹いてきた頃、かといって羽織では暑いわってときに、重宝します。黒は何にでも合うから。透かしが綺麗でしょ?羽織紐の変わりに金のネックレスをダブルにして付けると、ひと味違ったお洒落を愉しむことができますよ」

金のネックレスを羽織紐に

「年齢に合わせたコーデを可能にする黒は人を制する色」と断言する大久保さんに、黒を可愛く着こなすコツを問うてみました。すると、

「丸い柄って、可愛く見えると思わない?」

とチャーミングな笑顔を見せてくれました。なるほど。モチーフや文様でシックな黒に可愛さをプラスするなら、すぐにでも取り入れられそうです。

2025.07.06

エッセイ

羽織で着物をもっと楽しむ 「大久保信子さんのきもの練習帖」vol.6

特別な想いを込めて監修した着物と帯

まずは、着物から。
大久保信子流 東レシルックきもの「雪輪」です。

雪輪の着物

「これは、雪が降った日に着てもいい。東レさんのウォッシャブルな生地なので、濡れても安心です。いまの時代、自分でお手入れができることは重要なポイント。洗濯機で洗えるので、汚れはもちろん匂いも気にならないのが嬉しいですね。同じく東レシルックきもので、絽の夏物もつくりました」

2025.07.06

エッセイ

洗える着物のこと 「大久保信子さんのきもの練習帖」vol.13

「一生懸命に繊維の研究をなさっている東レさんならではの着心地良い生地は、歩いたときのシルエットが美しいのも特長です。私は立食パーティなどに参加するときは自分でケアできる着物を着ていくようにしています。そしたら、お友だちがパッと袖や肩に触れても、『洗えるから平気よ』って言えるじゃない?

絽の着物

竹文の意匠が涼しげな印象の夏着物「竹七宝」

続いて、龍村晋さんと共に監修した袋帯。

「色無地、江戸小紋、訪問着、留袖にだって合わせられるオールマイティな式服用の帯です」

※龍村晋……1908(明治41)年、大阪生まれ。古代裂の復元などで日本の工芸染織界に業績を残し、芸術恩賜賞を受賞した龍村平蔵氏の三男。東京帝国大学経済学部卒業後、父である平蔵のもとで古代裂・正倉院裂の研究復元に没頭した。日本はもとよりシルクロードや西欧へと広く題材を求め、その文様を錦に表現。比類ない「伝匠名錦」を生み出し、帯の創作一筋に打ち込んだ生涯で、500にも及ぶ柄を手掛けた。

袋帯2本

帯姿に自信を与えてくれる、風格ある袋帯

「おめでたいことが重なる二重太鼓で結ぶ袋帯は、ある程度の技術を必要とするから、最近だんだん敬遠されつつあるのよね。締めるのが難しいし、お値段も高いし。そう考えると、これからは名古屋帯が主流になるかもしれませんね」

白菊の染め帯を初下ろし!秋色コーデを披露

思い入れのある品々が収納されている大久保さんの箪笥には、一度も着用していないものも大切に保管されていました。

藤間流の帯

藤間勘十郎さんのお弟子さん一同で揃ってこしらえた夏帯。藤色と金色で藤花七宝文が織り描かれている

竺仙の帯

「夏小紋に合わせたらいいかな、と思って」竺仙で買い求めた、大輪の牡丹が咲き誇る麻の夏帯

「着物って、季節の柄を着るから面白い。帯に季節の移り変わりを表現することが、江戸の粋だと思います」

これからの季節にぴったりな白菊の塩瀬染め帯は、せっかくなので、帯ありきのコーディネートにてその場でお着替えをしていただくことに! 矢羽柄の着物を合わせて、初下ろしです。

未着用の帯コーデ

「有職組紐 道明」の帯締めたち

「コーデを考えるときは、頭の中で考えるだけじゃなくて、本物を持ってきて実際に合わせてみるのが一番なの。着物の上に当ててみないとダメ」

と、何本もの帯締めを出して来られました。

「可愛すぎる? これだと強すぎるかしら? こんなところかな?」

と言いながら、色を組み合わせてみます。溶け込む白の次は、帯の柄色にリンクさせた黄色を置いてみて、

「舞台だったらこれくらいの方がいいわね、目立って」

と、愉しそうな様子です。

帯締めコーデ

手早く着替えて、帯結びを終えると、帯揚げを整えていきます。

途中、「若いと前帯の柄は真ん中がいいけれど、年を重ねると少し左に寄せた方が格好いいわね」「小紋ではあまり帯揚げは出さないわね。若い方は太くても素敵だけど、私は細くして、(帯揚げは)結ばなくてもいいの。結ぶとゴロゴロしちゃうでしょ」

なんて、アドバイスも。

着替え

「小紋の場合は半衿は細く出す」のが、大久保信子好み

着付けのポイントを訊いてみれば、

「あまり道具は使わず、腰紐だけで着ます。昔の人がやってたとおりにやるのが一番崩れないでいいかな。いまはそんな心境に達しました」

とのこと。

着姿

大久保さんは、百均で手に入るグラフ用紙をサイズカットした厚紙の帯板を愛用

はい、完成!

「どんな素材であろうと品よくまとめると素敵に見えるもの。私、人生の最高の美学は品だと思うの。これはもう絶対」

いかり肩だから着物は似合わないって仰る方もいるけれど、それなら衿を少し寝かせればいいだけのこと。着る方に合わせた着付けをすれば、誰だって着物を美しく着られます。着物が似合わない日本人なんていないって、信じてますから。

一年に一回しか着ないのとひと月に一度着るのとでは、着こなしが違って当たり前。回数を増やせば必ず上手になりますから、着るチャンスがあればぜひお着物をお召しになってみてくださいね。」

2025.07.06

エッセイ

スッキリした着物姿に見えるコツ 「大久保信子さんのきもの練習帖」vol.12

文章/椿屋
撮影/五十川満

2025.07.05

エッセイ

暑がりさんと寒がりさん 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.61

2025.01.04

カルチャー

日本舞踊の愉しみ

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