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中村鴈治郎さん&中村壱太郎さんが語る! シネマ歌舞伎『曽根崎心中』 「きもの de シネマ」番外編

中村鴈治郎さん&中村壱太郎さんが語る! シネマ歌舞伎『曽根崎心中』 「きもの de シネマ」番外編

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、シネマ歌舞伎の新作『曽根崎心中』に所縁ある、中村鴈治郎さん&中村壱太郎さんのご登場です!

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シネマ歌舞伎になって「一番喜んでいるのは父」

中村鴈治郎さん&中村壱太郎さんにお会いする機会に恵まれました、椿屋です。みなさま、ごきげんよう。

今回は、歴史的大ヒットで歌舞伎ブームを巻き起こした映画『国宝』に大きく関わってきた鴈治郎さんと日本舞踊 吾妻流家元吾妻徳陽として所作指導を担った壱太郎さんが登壇された、シネマ歌舞伎『曽根崎心中』の舞台挨拶付き完成披露上映会にお邪魔してきました。

©松竹株式会

©松竹株式会社

冒頭の挨拶で、

「曽根崎心中という演目がシネマ歌舞伎になるということで、一番喜んでいるのは多分父ではないかと思います。それをみなさまにお届けできることを大変嬉しく思っています」

と胸の内を語った鴈治郎さん。祖父である二世鴈治郎氏と父・四世坂田藤十郎氏が復活させた「曽根崎心中」を美しい映像で残すことのできた喜びが、観客にシェアされました。

©松竹株式会

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「シネマ歌舞伎になるにあたって、編集にも携わることになり、改めて舞台映像を見たんですが……このときで父は80手前。それでもとにかく若々しいお初で、その姿が一気に私の中でも蘇ってきました。お初という役は、珍しく年齢をあからさまにする芝居なんですね。

『19歳と言うことによって、もしお客様がひとりでもクスッと笑ったり嫌な顔をするようだったら、私はもう絶対二度とお初をしない』と言っていました。父は1,401回もお初をやりましたけど、とにかく死ぬまでお初でいたかったんだと思います」

©松竹株式会

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「19歳で19歳のお初をさせていただいたのが、まさに京都の南座でした。そのとき初めて祖父から手取り足取りお初を習ったことで、この役はすごく印象に残っています。どんなに回数を重ねていても、『毎日初めてやる気持ちになるんだよね』って祖父が話していたことが思い出されます。

いままさに南座で形は違えど曽根崎心中をやっているなかで(尾上右近さんとダブルキャストで上演された『曽根崎心中物語』のこと)、祖父の初々しさというか、年齢を超えてずっと演じられる凄さを改めて感じますし、徳兵衛は僕にとってはイコール父のイメージで、そういう役はなかなか他にはないので、それだけ特別なんだなと感じているところです」

と、「曽根崎心中」という演目への想いを真摯に言葉にされていました。

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シネマ歌舞伎ならでは!映像ゆえの見どころとは

今回、シネマ歌舞伎として蘇った『曽根崎心中』は、2009年4月に上演された「歌舞伎座さよなら公演」の記録映像を編集したもの。

さよなら公演ということもあって、当該の舞台は6台のカメラで撮影されていたといいます。

鴈治郎さん

「その映像がすべて残っていたんです。各場面で6つの映像の中からここはこの部分にしよう、そこはこっちを使いましょうと、編集をし直したわけです。

できるだけ父がキレイで可愛らしく映っているものを選びました。現代の高い技術を駆使して、ときには大向こうの声を消したりしながら(笑)、いいものができたと思います」

と、鴈治郎さん。

壱太郎さんは、

「舞台をご覧になるときにオペラグラスを使う方もいらっしゃると思いますが、シネマ歌舞伎ならではのアップの凄みはぜひ体感していただきたいですね。とくに道行という、最後ふたりが死んでいく森の場面の、祖父の手の動きとか、舞台では見られない角度の表情とか。舞台はその空間を共有するって感じですが、シネマ歌舞伎は一人ひとりが映像世界に没入できるものだと思います」

と、舞台にはない魅力を語りました。

座りツーショット

「それとね、舞台ですといきなり客席が明るくなってそれで終わりですけども、映画ですからエンドロールが流れます。あの余韻の残し方は映画ならでは。しかもこの映像にはエンドロールの後にもちょっとだけおまけがついています。そこも楽しんでいただければ。以前は本編終わったらすぐに立ち上がっていたんですが、この頃やっぱりエンドロールってええもんやなぁという気がしてます(笑)」

と、鴈治郎さんがさらなる見どころをお茶目に話し、会場には和やかな空気が流れました。

ハレの場に相応しい羽織袴のコーデに注目!

この日の装いは、おふたりとも袴との色合わせが印象的な組み合わせでした。

「やっぱり役者っていうのは紬物を好むんですね。そこに袴を付ける。紋付袴、で羽織が一番正式な装い。ですが、映画『国宝』で喜久雄や俊介が着ていたように、昔の役者は着流しに羽織で楽屋入りもしていましたね。

僕も日本舞踊家・吾妻徳陽になると、稽古場に行くときは着物を着流しで着て羽織なんです。父や僕が持っている色紋付は紬物が多かったりします。袴はどんな色でもいいというわけではなく……どちらかと言うと茶褐色のものや銀鼠色を好んで穿きますね」

と、教えてくれたのは壱太郎さん。

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壱太郎さん着姿

登壇されたときから、そのキラリと輝く生地が目を引いた壱太郎さんの着物。

「このラメが入っている着物は、実は祖父から譲り受けたもの。これは、海外での公演とか、今日みたいな華やかな場じゃないとなかなか着れないですね。祖父もそんなに着てなかったと思います(笑)」

と振り返る壱太郎さんの隣で、

「これは、父の趣味じゃないね、母だろうね」

と鴈治郎さんがにやり。

壱太郎さん着物

ライトが当たる度、さり気なく上品に輝く

そんな鴈治郎さんの装いについて訊けば――。

「これしかなかったんです(笑)」

なんて軽口でクルーたちを笑わせつつ、実は、日本アカデミー賞授賞式の際にお召しになっていた着物とのこと。

「アメリカのアカデミーでは黒紋付の方がいいかと思って向こうに送ってね。こっちに届いていたのは日本アカデミーのときのだったね」

鴈治郎さん着姿

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「袴ってね、一般的には箱に結ぶ(一文字結び)じゃないですか。私がいつも結び切り(駒結び)にするのは、藤間流のいまの宗家のお祖父さまが結び切りにしてらして、理由を訊いたら、神主さんはみんな箱には結ばないって仰って、そこからずっと結び切り」

と、思わぬ話も飛び出します。するとすかさず、壱太郎さんが

「それに、袴で踊る際に箱結びだと激しい動きで解ける可能性があるので、結び切りを好む傾向にありますね」

と補足してくれるという阿吽の呼吸はさすが父子です。

鴈治郎さんの紋

鴈治郎さんの家紋は「イ菱」。成駒家の家紋ではなく、成駒家は役者それぞれに全員が違った紋を使っている。「歌右衛門家の祇園守の丸に遠慮して菱型にしたんだろうね」と、鴈治郎さん

「もっと男性こそ着物を着てくれればいいな」

「曽根崎心中」では、お初は藤色のイメージが強く、徳兵衛が着ている萌葱の格子柄の着物も印象的です。作中の衣裳について、壱太郎さんは現代にも通ずるコーデが魅力だと語ります。

「物語の舞台となった元禄は、着物がとてつもなく豊かだった時代。『元禄花見踊』なんて、まさにその真骨頂ですよね。さらに衣裳だけでなく、鬘も網といって時代劇と同じような髪型をしていることもあって、後ろを通る通行人にしたってね、いまのコーディネートにも取り入れられるような要素が多い装いなのは、面白いところじゃないでしょうか」

©松竹株式会社

©松竹株式会社
「徳兵衛のあの衣裳は、血が付くと取れないんですよ。気をつけているけど付いたらごめんなさいって言うしかない(苦笑)」と鴈治郎さん

稽古場への移動はもっぱら洋服だというおふたり。鴈治郎さんは、「車の運転しにくいしね」なんて笑いながらも、「もっと男性こそ着物を着てくれればいいな」との心強い言葉をいただきました。

「冬はあったかいし、夏は涼しいし。風が通ると本当に気持ちいいよね。慣れたら食事もなんぼでも食べられるし。他人のこと言えへんけど……普段あまり着物を着ていない僕も一緒で、機会をつくることやろうね」

昔は、歌舞伎の客席が密かなお見合いの場になっていた時代もあったとか。歌舞伎を観に行くために着物を誂え、互いに遠くから見定める――そんな文化が生まれたことも踏まえれば、歌舞伎を鑑賞することは、着物を着る絶好の機会のひとつ。

現代のデートスポットでもある映画館もしかり。ぜひ演目や作品にちなんだコーデでおでかけを愉しんでみてください。

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「着こなしは、衿の抜き方と帯の高さで決まる」

とはいえ、「だからって、着物で着飾ってないといけないものでもないしね」と、普段着であっても劇場に足を運んでほしいと望むおふたりに、女性のどんな着姿にグッとくるかを訊いてみました。

ド直球な質問に少し苦笑しながらも、間を置かずに答えてくださった鴈治郎さんの“ここイイネ!”ポイントは、和傘。

「傘差してるのがええね、和傘でね。着物には洋傘より和傘が合うと思うわ」

とのこと。

対して、壱太郎さんはというと……

壱太郎さん

「着物を着ていて良いところは、自然と背筋が伸びるところですね。釦で留まってないってことは、絶対に着崩れが起こる。着崩れないためにどうしようって、勝手に体が考えて動く。すると自ずと美しい姿勢を維持できる。これは素晴らしい。女性の着姿に関して言えば、衿の抜き方ですね」

その回答に、クルー全員が「あー」と声を洩らしながら深く頷くなか、

「例えば年増の役だったら衿を抜かないとか、若い役だったら衿を下ろすし、遊女だったらより下ろす。そういったちょっとした差や、衿を縦に合わせるのか横に合わせるのか、その角度で雰囲気が変わります。

公式な場であれば衿をしっかり合わせて、カジュアルなシーンであればあえて衿を合わせないとか、そういう愉しみ方をすると、女性の着物ってより美しく見えたり、さらに自分らしさの個性が出せるんじゃないかな、と思います。僕らも女形のときは、衿の抜き方と帯の高さにとても気を遣っています。着こなしって、その2つで決まると言ってもいいくらいです」

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「70を過ぎてはんのかな?踊りのお師匠さんでね、浴衣がぐずぐずの人がいてね。ぐずぐずなのにやらしくない。それでそのままずーっと稽古つけてくれてるんだけど、ひとつも着崩れもしない。あれは素敵やなぁと思ってね。でもぐずぐずなの(笑)。凄いなぁって」

と、ふと思い出したように話してくださったエピソードに、鴈治郎さんのお師匠さんへの敬愛が感じられました。

映画『国宝』で手本となった舞台を、ぜひ劇場で

立ちツーショット

映画『国宝』で歌舞伎の指導を務めた鴈治郎さん曰く、

「実は、吉沢亮と横浜流星の役づくりとして、彼らにまず『これを見てよ』って見せたビデオがまさにこれ(今回のシネマ歌舞伎になった「曽根崎心中」)なんです。それが映画化されたんです。ふたりの手本になったものをスクリーンで観ていただける――めちゃめちゃ貴重ですよ!」。

「実は……あの名台詞まで意外と長いんです(苦笑)」という壱太郎さんの言葉通り、映画『国宝』の重要なシーンとして登場する天満屋の場だけでなく、なぜ「死ぬる覚悟」に至ったのか――時代背景と人間関係を踏まえて、劇場にてじっくりとご覧ください。

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