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新宿高島屋“和菓子魂” 寿ぎの『薔薇』 「和菓子のデザインから」vol.10

新宿高島屋“和菓子魂” 寿ぎの『薔薇』 「和菓子のデザインから」vol.10

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旬の食材を取り入れるだけでなく、見た目の季節感も大切にする和菓子の世界。季節を少しだけ先取りするところも、きものと通ずる心があります。共通する意匠やモチーフを通して、昔から大切にされてきた人々の想いに触れてみませんか。今回は、高島屋のシンボルでもある『薔薇』の意匠について、新宿高島屋で開催された“和菓子魂”の会場に咲いた薔薇の工芸菓子3点と共にご紹介します。

2025.07.07

カルチャー

御菓子司 聚洸 秋の足音『萩』「和菓子のデザインから」vol.9

薔薇咲く、新宿高島屋

2026年10月1日から6日間開催され、大盛況のうちに幕を閉じた新宿高島屋の“和菓子魂”。

新宿高島屋開店30周年を記念して、全国47都道府県・約120店以上の和菓子が集った熱狂の6日間。SNSでもトレンド入りするなど、大きな話題となりました。

2026.09.30

カルチャー

ふらりと楽しむ!新宿高島屋『和菓子魂』のススメ「きものと編集部のおすすめ」vol.16

初日から想定以上の来場者数で、入場制限がかかるほどでしたが、4日目ともなると祭りの賑わいはありつつも、15時台には入場規制も解除となり、事前に和菓子バイヤーの畑さんから教えていただいた通り、各売り場を満喫することができました。

帯の展示販売

2階の物販ブースでは、杉板の銘々皿や和菓子魂Tシャツ、和菓子職人のアクリルスタンドなどに混じって、引網香月堂×織楽浅野の西陣織九寸名古屋帯も。間違いなく、今回の催事の最高価格グッズでしょう!

JR各線で訪れる人をまずお迎えするのが、2階のエントランス横のショーウインドウを華やかに彩る薔薇の花籠です。

2階エントランスのショーウィンドウ

鶴屋吉信『薔薇の賀』

京都の西陣に本店を構える鶴屋吉信の職人が手がけたこちらの大作『薔薇の賀』は、新宿高島屋30年の積み重ねを表す3つの花籠に、本物と見紛うほどの繊細な生砂糖製の薔薇が盛り込まれています。

※生砂糖(きざと)……砂糖と寒梅粉(もちを薄くのばして焼き、細かく挽いた粉)などを合わせて練り、薄く延ばして型抜きし、乾燥させた伝統的な干菓子

しかし、よくよく見ますと、茎や葉の色は現実とは異なる色合いなのです。工芸菓子の写実的な表現の中にも、京菓子店らしい創造性と色彩感覚が宿る美しさに惚れ惚れしました。

工芸菓子アップ

茎や葉は、やわらかなピンクブラウンで表現

通りかかる人が次々と足を止め、スマートフォンを向け、ガラスに張りつくように熱心に鑑賞する姿が後を絶たず、誰もいない状態の写真を撮影するのに難儀いたしました。

「これ、和菓子なんだって!」「え!全部が?」「すごい!」という声に、私も心の中で深くうなずきました。今回の展示では籠部分は工芸菓子ではありませんでしたが、この技術力を持ってすれば、それも可能なのではと思うほど。

こちらの工芸菓子を目にしたのをきっかけに催事に興味を持ち、11階へと足を運ばれた方もいらっしゃったので、掴みはバッチリ!だったのではないでしょうか。

高島屋と薔薇のはじまり

高島屋が薔薇をシンボルフラワーに決めたのは、1952年のこと。当時の社長・飯田慶三氏が、美の象徴として愛される薔薇を高島屋の花としたい、と考えたことがはじまりでした。

それまでの包装紙は、藤紫とねずみ色の無地に、吉祥文様「宝づくし」を型押ししたもの。
日本の伝統的な吉祥文様から、洋花である薔薇へ。これは大きな転換です。

以来、薔薇の包装紙は4代を重ね、現在の4代目は2007年の新宿店リニューアルを機に生まれました。

高島屋のロゴマーク

左がショッパーでお馴染みの4代目「輪バラ」、右は小分けの袋などに使われている「線バラ」。こちらも1960年代生まれとは思えないモダンさ。(出典:高島屋公式コラム「誰もが知るあのデザイン 高島屋『バラの包装紙』の秘密に迫る!」2026/05/28)

時代に合わせて姿を変えながら、人々の「特別な瞬間」を包み続けてきた薔薇は、高島屋の顔であり、「“変わらない”のに、あたらしい。」という企業メッセージそのものでもあります。

そして、そのメッセージは和菓子の伝統に身を置く職人とも、どこか響き合うものがあるのではないかと思うのです。

西洋文化を取り入れた意匠

きものの世界では、薔薇の意匠はどのように存在してきたのでしょうか。

日本にも、古来15〜20種ほどの原種のバラが自生していたそうで、最古の記録としては、奈良時代の『常陸国風土記ひたちのくにふどき』や『万葉集』が挙げられます。また、平安時代には中国から薔薇(しょうび/そうび)が伝来します。

現存する染織り品だと、「薔薇反橋模様水干」(平安時代・金剛峰寺蔵)や、「白麻地尾長烏薔薇春草模様帷子」(江戸 18世紀・江戸東京国立博物館蔵)に薔薇が見られるものの、普段着や晴れ着ではなく、その数はごく少なく流行には至らなかったそうです。

現代の私たちが薔薇と聞いて思い浮かべる西洋の品種が日本に入ってきたのは明治時代になります。きものの柄として図案化されるのは、大正から昭和初期にかけて。

西洋文化に憧れる大正ロマンの機運のなか、女学生の帯や若い女性の普段着に、ハイカラな柄として描かれ人気を博しましたが、取り入れ始めは試験的に長襦袢などの見えない部分からだった、というのも興味深いお話です。

薔薇は世界共通で、愛と美の象徴。

また、きものの世界では、鋭いトゲが魔除けや、自分を護る芯の強さにたとえられることもあり、成人式の振袖にも好まれます。

色ごとの花言葉は、赤が「愛情」「情熱」、ピンクが「上品」「気品」、白が「純潔」「尊敬」。

また、1本なら「一目惚れ」、2本なら「世界はあなたと私だけ」のように、本数によっても意味合いが変わるので、大切な方に薔薇を贈るときやコーディネートのポイントとしても心に留めておくとよいかもしれません。

洋花の柄は、季節を問わず通年着用できるのもうれしいところ。四季の実際の気候の割合が崩れ気味な昨今、何かと助かる万能選手となり得るのではないでしょうか。

三者三様に寿ぎの華

会期中に館内で出会えた薔薇の工芸菓子は3点。いずれも京都の名店から、新宿高島屋30周年への寿ぎが込められていました。

千本玉壽軒『百花繚乱』

千本玉壽軒『百花繚乱』

2階の物販ブースでは、千本玉壽軒・元島真弥さんの『百花繚乱』。花瓶には30色の薔薇が30本、その手前に真っ白な薔薇が1輪、生けられています。

30色は、新宿高島屋の30年を表現していることが、作品に添えられた「1日として同じ日はなかったはず」とのメッセージからも窺えます。

新宿高島屋がお客様に真摯に寄り添ってきた年月への敬意と祝福、そして白い1輪は、「31年目はどんな色に染まるのでしょう?」というこれからへの期待。生砂糖で咲いた31輪が、これまでとこれからとを華やかにつないでいます。

千本玉壽軒『百花繚乱』アップ

1個の菓子に込めるには大きすぎるメッセージを、工芸菓子という形で実現した元島さんの粋なエールに、高島屋の和菓子バイヤーである畑さんも「グッときましたね」と目を潤ませていました。

なお、30本の薔薇には「ご縁がありますように」、31本の薔薇には「あなたを毎日想っています」という意味があるそうですよ!

同じく2階の物販ブースで『百花繚乱』と対をなすように展示されていたのが、塩芳軒・高家啓太さんの『明日へ』。

【和菓子のデザインからvol.7 】で雪のお菓子を見せてくださった高家さんです。

2025.07.06

カルチャー

御菓子司 塩芳軒 ”雪”に願いを 「和菓子のデザインから」vol.7

杉箱に収められたローズボックスは、水引と熨斗で仕上げた贈り物の姿。薔薇は花も葉もすべて有平糖でつくられ、高島屋の紙袋の薔薇のリースの色をそのまま溶かし込んだような愛らしさです。

塩芳軒『明日へ』

塩芳軒『明日へ』

※有平糖(あるへいとう/ありへいとう)……ポルトガルから伝わった南蛮菓子(アルフェニンやアルフェロアなど)がルーツとされる、砂糖に水飴を加えて煮詰めたものを職人が引き伸ばして空気を含ませて作るハードキャンディの一種。茶席の有平糖は有平細工とも呼ばれ、抹茶の前に静かに早く食べ切ることのできる軽やかな甘みが親しまれてきた

塩芳軒『明日へ』アップ

現在、こうした有平糖の細工ができる職人は減少傾向にあるのだそう。海外から伝来し、日本独自の技法で進化を重ねた「和する菓子」ともいうべき有平糖を多くの人に知ってほしいとの思いで製作したと、高家さん談

古来、大切なお祝いや感謝の気持ちを贈り物で伝えてきた文化にならい、ハレの日のお祝いと、有平糖という伝統の技を次代へ届けたい。そんな思いが込められています。

展示に添えられたメッセージカードには、当主である高家啓太さんのお名前のみの掲載ですが、実は今回、息子さんも一緒に有平細工の製作に取り組まれたとのこと。

この一箱に親から子へ、師から弟子へと紡がれる技術が詰まっているのだと胸が熱くなり、両手に収まるサイズ感と杉箱仕立てにも、贈り物のように、伝統の技術も「手から手へ」伝えてゆく職人としての矜持が感じられました。

2024.10.11

カルチャー

京のつくり手語り

菓銘にみる、未来へのまなざし

『薔薇の賀』、『百花繚乱』、『明日へ』。

祝いの「賀よろこ」びから、「百」年先まで咲き乱れる「花」々、そして「明日」へとつないでいく決意、示し合わせた訳でもないのに、気持ちが少しずつ未来へ向かっていくようです。

高島屋の包装紙に込められた「『変わらない』のに、あたらしい。」という姿勢は、伝統の技で薔薇を咲かせたこの3つの作品にも通じているように思えます。

31年目も、薔薇は変わらず、あたらしく咲く。

高島屋の薔薇に出会ったら、会場で見た工芸菓子の薔薇のこともぜひ思い出してみてください。

またいつかどこかで、“和菓子魂”が開催されることを願いつつ、それまではそれぞれの土地で真摯に和菓子に向き合うお店を訪ね歩くことを楽しみたいと思います。

2024.08.31

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和菓子のデザインから

2024.09.25

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