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長澤まさみが魅せる、絵師としてのリアルクローズ『おーい、応為』 「きもの de シネマ」vol.70

長澤まさみが魅せる、絵師としてのリアルクローズ『おーい、応為』 「きもの de シネマ」vol.70

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。芸術の秋にぜひスクリーンで観てほしい『おーい、応為』は、主演・長澤まさみさんの自然体な着姿が満載です。

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2025.09.03

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戦後の沖縄を描く、魂震える圧巻の191分!『宝島』 「きもの de シネマ」vol.69

冒頭3分で伝わるお栄のキャラクター

ごきげんよう、椿屋です。

今月わたくしが注目したのは、江戸庶民の日常を見事なまでに活写した『おーい、応為おうい』です。

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

主人公のおえい(後の、応為)を演じるのは、大森立嗣監督とは二度目のタッグとなる長澤まさみさん。

超絶有名浮世絵師である父・葛飾北斎と違って、残されている僅かな資料から浮かび上がるのは、見た目は長身で、当時の女性にとって当たり前のスキルだった家事全般が極端に苦手だったという人物像。それを踏まえたキャスティングだというのは、冒頭シーンが如実に語っています。

始まってすぐ響き渡る、威勢のいい啖呵とべらんめえ口調の怒声。

「悪かったな、北斎の娘で!」

大喧嘩して飛び出したお栄は、簪で無造作にまとめ上げた髪に飾り気のない着物姿で、怒り心頭、大股でずんずんと歩いていきます。

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会
数々の映画やドラマで劇中に登場する料理を手掛けるごちそうプロデューサー・広里貴子さん渾身の特大サイズ鼈甲飴!「この大きい鼈甲飴は作るのが大変でした!大きすぎて割れやすかったり、飾りもいるため量も必要だったので」

しかし、橋の上でふと目に留まった鼈甲飴を買い求め、一口舐めて、笑顔に。けろっとしていて、動じない。とことん、自由。

タイトルシーンまで3分。たった3分で、これ以上ないってくらいお栄のキャラクターが生き生きと描き出されるのです。観客の心を一気に鷲掴みにする、なんて力強いオープニング!!

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

絵を描くことしか興味のない父であり師である北斎(永瀬正敏)の家に転がり込んだ出戻り娘は、自らのことを「俺」と言い、煙管をぷかぷか喫んで、拾い犬を可愛がり、いつしか汚部屋で絵を描くようになります。

2025.07.07

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開館10周年記念展 第2部 『歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―』 岡田美術館 「きものでミュージアム」vol.25

息遣いが聞こえるような長屋生活の描写

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

狭い空間で背中を丸めながら平場で絵筆を動かす姿に、道にしゃがみ込んで蕎麦をすする様子に、飛び起きて火事場へと走り、火消し(鳶)に見入る表情に、江戸の市井に生きるひとりの女性がありありと立ち昇る映像の力に感服します。

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

手拭いを肩にかけて下ろし髪で雨上がりの道をゆく自然体のお栄を体現した長澤さんの存在感が随所で光るのですが……。

中でも、全体を通してあまりにもナチュラルに魅せる“きちんと着ない”リアルクローズな着こなしが、見事と言うほかありません!

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

短めの着丈、素足に下駄。紐帯で結んだ家着から、半巾帯を浪人結びにして矢立やたてと煙草入れを腰に下げた外着まで。とにかく、ラクそう!の一言です。

とくに、散らかり放題の部屋で探し物をしている最中、行李こうりの蓋に挟んだ袖を苛々しながらグイっと引き抜く動作が、あまりに“お栄そのもの”で印象に残っています。

描くことで生きた応為の愛おしい日々

寒くなったら半纏を羽織り、旅先では股引を穿く。夕立に降られてびしょ濡れのまま訪れた母親・こと(寺島しのぶ)の家で着替えたら、色気のなさを見かねたことから「袖口やら裾回しに赤いものを少し付けると優しくなれる」と言われる始末。

2025.06.06

カルチャー

禁断の歌舞伎世界へと誘う、圧巻の一代記『国宝』 「きもの de シネマ」vol.66

そんな彼女でも、ほのかに想いを寄せる殿方との川開き(江戸の夏の風物詩である両国の花火。5月28日に行われた。当時の花火はいまのようにカラフルではなく、橙色一色だったとか)に出かけるときには、いつもより明るい着物で、おめかしするから、これまた親近感!

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

玄人好みとしましては、裏長屋の住人仲間である端唄・小唄の師匠を演じる篠井英介さんの美しい所作をお見逃しなく!さすが日本舞踊の名取りなだけあって、指先まで隙がありません。

「三味線は先生が匙を投げるほどダメなので苦労しました(笑)」

なんて仰っていますが、いやいや、お三味を爪弾きながらの歌声、眼福ならぬ耳福でございました。

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

見どころとして、もうひとつ。応為(お栄)が吉原の張見世はりみせ格子越しに遊女たちをじっと見つめるシーンは、彼女の作品の特長である光と影の巧みな表現が存分に活かされた『吉原格子先之図』(太田記念美術館所蔵)が生み出される重要なシークエンスです。

©2025「おーい、応為」製作委員会

©2025「おーい、応為」製作委員会

当時としては極めて革新的だったこの技法から「光の浮世絵師」「江戸のレンブラント」と称された絵師・葛飾応為の魅力あふれる『おーい、応為』は、ぜひ劇場で。

2023.07.04

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