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暮らしの中で愛されてこそ、作品となる。〈四月 四季飾り棚〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.4

暮らしの中で愛されてこそ、作品となる。〈四月 四季飾り棚〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.4

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日本画家・定家亜由子さんが描く月々の花たち。扇のかたち(扇面)に閉じ込められた美をお届けする4月の作品は、豪華な四季飾り棚『瑞雲の花』です。京都の老舗・宮崎家具とのプロジェクトで誕生した飾り棚づくりにまつわる思い出を語ります。

2026.03.05

カルチャー

守り継がれてきた瑟瑟の桜に、想い寄せる春。〈三月 桜〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.3

京指物の伝統を守り伝える宮崎木工とのご縁

花爛漫の季節がやってきます。

私にとっては、絵の中やアトリエのキャンバスの上だけでなく、暮らしにも花が爛漫と現れる頃です。

桜01

そして四月といえば、やはり桜でしょうか。

花を囲んで人が集うこと。「花を見に行きませんか」と、会いたい人に言えること。
桜が咲く春とは、なんて素敵な季節なのだろうと思います。

昨年、私は桜の木にもまつわる、ひとつの特別な作品に関わらせていただきました。
京都の老舗・宮崎家具さんと制作した「四季飾り棚」です。

構想から数えると、およそ一年。多くの方々の手を経て、昨年末に完成のときを迎えたこの棚の物語を、今回はご紹介をさせてください。

2022.12.26

カルチャー

『宮崎家具』7代目 宮﨑真里子さん【YouTube連動・インタビュー編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.9

宮崎家具の創業は1856年。

1895年、京都岡崎で開催された「内国勧業博覧会」では、桑の飾り箪笥が皇后さまのお買い上げとなり、その後も皇室からの御用命を受けてこられました。

宮崎家具さんの歴史で、とりわけ興味深いのが三代目宮崎平七氏の時代です。1915年、彼は「画伯考案書棚展覧会」を開催しました。鈴木松年・竹内栖鳳・山元春挙・神坂雪佳・上村松園・橋本関雪など、錚々たる日本画家が参加したと記録されています。

家具を単なる道具ではなく、芸術の域へと高めようとするその歩みは、日本画家たちが次々と活躍した時代とも重なります。

そこから110年。宮崎家具さんは、この度の試みを「再興」と呼ばれました。

今回手掛ける四季飾り棚は、単なる家具ではありません。棚そのものが装飾となり、棚という道具としての機能も併せ持つもの。暮らしの中で使われながら、同時に美術として存在するものを目指しました。

その扉に花を描く機会をいただいたのです。

千年先にも愛され続ける『瑞雲の花』に

制作の過程では、宮崎家具さんの工場へお伺いする機会をいただきました。

光と木の香りに包まれたそこは、心地の良い森のようでもあり……制作空間の広さと美しさに驚かされました。

棚

素材となったのは、美しく、いまでは貴重となった樺桜材。

木目も美しい逸品は、ぴったりのお役目が訪れることを待ちながら、宮崎家具さんの倉庫で大切に保管されていたそうです。

桜材は、花と同じく、ほのかな香りを持ちます。そして年月と共に、落ち着いた深みへとゆっくり色を変えていく──使われながら、時間の中で育っていく木です。

職家表具師・静好堂の中島氏にもお力添えいただいた背面部分

四季の花を描いた扇面画を貼りまぜ、優しく温もりを感じる木肌の上に咲かせます。

花の周囲を飾る背面部分には、月の満ち欠けをイメージしたデザインを提案させていただき、漆芸家・服部一齊先生の手によって、沖縄の夜光貝を用いた螺鈿が施され、小さな光がきらめく装飾となりました。

扉の描画部分に開閉の仕組みがあるのが、いつもの扇面画とは違う面白いところ。繊細な部分にも裏打ちや工夫がなされ、日本の表装技術が生かされています。

木・漆・貝・和紙、そして金箔。それぞれの素材の専門家が力を合わせて、ひとつの作品が形になっていきました。

金の砂子で描かれた雲のあいだに、花のつぼみが散るように咲いています。

職家表具師・静好堂の中島氏にもお力添えいただいた扉部分

職家表具師・静好堂の中島氏にもお力添えいただいた扉部分

制作途中、この飾り棚の名前を考えていました。

慶雲か、それとも祥雲か。

金の砂子で描かれた雲を見た瞬間、『祥雲の花』という言葉がふっと心に降りてきました。華やかでありながら、決して重くならない。雲のように軽やかに花が浮かぶ景色。それは、私が絵の中で目指してきた感覚でもあります。

今回の制作では、皆さんと「千年残るものをつくろう」と話していました。

もちろん未来のことは誰にもわかりません。けれど、素材を選び、技術を尽くし、手を重ねることで、できるだけ長く残るものを目指したい。

代々繋がれてきた文化や技術は、決して誰かひとりのものではなく、多くの人の手を渡りながら続いていくものなのだと思います。

作品の完成は、「はじまりのはじまり」

完成した飾り棚は、「洛趣会」にてお披露目となりました。洛趣会は、1928年から続く京都の老舗による招待制の展示会。「きものと」の読者の方の中にも、毎年楽しみにされている方がおられるかもしれません。

掲げられている文言は「お売りしません、お誉めください」。

約30の名店が集い、それぞれが自慢の逸品を披露する会ですが、販売を目的とするものではありません。各店が受け継いできた技術や意匠、その心意気を披露する場なのです。

洛趣会の様子

毎年11月、京都の寺社などを会場に開かれ、今回は2日間で3300人もの方が訪れたと伺いました。その会場に、今回の四季飾り棚もそっと置いていただきました。

作品は、つくった瞬間に完成するのではなく、人が集い、眺め、語り合うことで、はじめて風景の一部となり、作品となるのかもしれません。

洛趣会は、まさに人の営みの中で作品が現れる瞬間を見せてくれる場でした。日本画は、ひとりの力で成し遂げられるものではありません。それを改めて身に染みて感じるプロジェクトでした。

作品の完成は、終わりではなく「はじまりのはじまり」。暮らしの中で使われながら、人とともに時間を重ねていく。

この棚の前に、これからどんな景色が生まれるのでしょうか。その時間を思うと、いまこの瞬間も、とても満たされ、幸せな気持ちになります。

花残月の亜由子好み

白沙村荘 橋本関雪記念館のすぐ近くで亜由子さんが出会った可憐な花筏の風景

白沙村荘 橋本関雪記念館のすぐ近くで亜由子さんが出会った可憐な花筏の風景

満開の桜もいいですが、散る桜も美しい。

私は、花のつぼみ、見頃~満開、桜吹雪……と、同じ桜木にて定点観測のように、3度は楽しむことが好きで、散る桜の中でも「花筏」はお気に入りの景色のひとつです。

花筏とは、桜の花びらが筏のように水面に浮かび、連なって流れていく列のこと。銀閣寺と南禅寺を結ぶ「哲学の道」の脇に流れる琵琶湖疏水沿いの桜並木も、花筏を楽しむことができる名勝として親しまれています。

花筏が生まれるあたり、つまり、哲学の道の北側には、京都画壇の巨匠・橋本関雪(1883〜1945)の邸宅があった「白沙村荘 橋本関雪記念館」があります。

桜02

この桜の樹々、実は「関雪桜」とも呼ばれ、関雪と妻のヨネ(〜1932)によって贈られたもの。生前、関雪はヨネさんと疏水に舟を出して遊んだそうです。

おふたりの微笑ましい姿を思い浮かべながら、水面に浮かぶ花びらを愛でるのも“暮らしの中にある桜”なのです。

【告知】

白沙村荘造営110年特別企画 『定家亜由子の花まんだら 京都と手しごと展』

期間:2026年 5月2日(土)〜5月24日(日)
会場:白沙村荘 橋本関雪記念館 MUSEUM Ⅱ 
住所:京都市左京区浄土寺石橋町37
電話:075-751-0046

新作を中心に、老舗企業や職人らとのコラボレーション作品が展示される。花やいのちと向き合う「写生」を制作の根幹とし、相対する美しさと自身との境界線をなくすことを目指して描き続けてきた日本画家・定家亜由子の新たな活動の歩みと共に、山滴る五月、名園としても知られる白沙村荘にて、日本の手しごとと精神文化が現代に息づく姿が体感できる展覧会だ。

白沙村荘 橋本関雪記念館

白沙村荘 橋本関雪記念館

2022.03.18

エッセイ

日本の国花は桜? それとも菊? 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.48

2022.02.26

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そろそろ桜も 〜現代フォーマル着物考その2〜「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第十夜

構成協力/椿屋

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