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祓い清めの季節、心ときめく食材を。〈六月 清/山葵〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.6

祓い清めの季節、心ときめく食材を。〈六月 清/山葵〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.6

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日本画家・定家亜由子さんが描く、扇のかたち(扇面)に閉じ込められた月々の自然たちをお届けする連載も折り返しです。今月の作品は、夏に似合いの清らかな風情を閉じ込めた『清/山葵』。亜由子さんらしい、水無月の過ごし方をお届けします。

2026.05.05

カルチャー

シャンシャンと鈴の音響く、御靈神社にて。〈五月 神楽鈴〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.5

ワサビの香りがもたらす、おいしい季節

メインイラスト

聚楽壁に掛かる扇面『清/山葵』

画像は、大好きなあるお料理屋さんに飾っていただいているワサビの花の絵です。

先日、そのお店に伺いましたら、質のよい国産ワサビが様々な理由で品薄となり、お値段がずいぶん高くなっているとおっしゃっていました。

山葵の絵

初夏、香り立つ如き山葵

美しい水のある土地で育つワサビ。

十字架のかたちの真っ白な小さな花が咲くのは、三月頃のことです。六月のエッセイに添えるには、少し季節がずれているかもしれません。それでも、ワサビのあのつんとした風味には、夏のはじまりがよく似合うように思えます。

魚介類など傷みやすい食材へのワサビの殺菌効果は言うまでもありませんが、心身を清める作用もあるような気がするのです。少しじめじめとしたこの時期は、つんとした香りのワサビを口に入れた瞬間からからだがすっきり清らかになっていくようで、おいしい季節でもあります。

ワサビ菜のお漬物なども大好物。これから夏に向かって旬を迎える鱧にワサビをつけていただくのも格別ですし、脂っこい食材が得意でない私も、大好きなワサビと一緒だと、お肉もお魚もおいしくペロリと食べることができます。

「氷」に所縁ある行事への感謝の気持ち

六月は、祓い清めの季節でもあります。

六月朔日、「氷の節句(こほりの節句)」とも呼ばれるこの日、下鴨神社では「氷室ひむろ開き神事」が執り行われます。

氷室外観

下鴨神社の「氷室」とは、神様へのお供え物などを冷やす天然の冷蔵庫のこと。地中深くより汲み上げられた糺の森の湧水を冬の間に凍らせて、氷室の底を年中12,13℃に保ちながら保存する方法で、千数百年余り活用されてきたのです。

2022年の6月1日、下鴨神社で長く途絶えていた「鴨の氷室」を再興し、「氷室開き神事」が御斎行された際、私も参列させていただくことがありました。

合掌造りの屋根でできた氷室の建物の外観はシンプルに見えて素朴ながらも、「葵の庭」と呼ばれる鎮守の森の静謐な雰囲気も相まって一層涼やかで、とても清らかに美しく見えて、厳かなご神事に心身が清められるような気持ちになりました。

氷室

氷室の氷の上に保存していたお供え物を縄で引き上げている様子

古く宮中では、「氷の節句」や「氷の朔日」と呼ばれる六月朔日に氷を口にすると、その年の夏を健やかに過ごせるという暑気払いの風習がありました。その日に「氷室の節会」が行われ、冬に蓄えられた氷が奉納されたと伝わります。

庶民にとって夏の氷は贅沢品でした。京都の人々はその氷を、六月のお菓子「水無月」に見立て、無病息災を願う習わしとしました。

2021.05.30

京都をめぐる

甘春堂 氷の節句に『水無月』を 「京都・和の菓子めぐり」vol.8

それにしても、氷とは不思議なモチーフです。

氷はそもそも、水がかたちを変えたもの。水は自由にかたちを変えて、雨となり、雪や氷となり、また水へと巡ります。水の豊かな土地に暮らしてきた日本人は、花や蝶と同じように、海や山川、水の様々なかたちをも、情感やいのちを纏ったものとして大切に見つめ、造形や作品に現してきたように思います。

さて、一年の折り返しとなる六月三十日の「夏越の大祓」を前に、多くの神社では茅の輪が設置されます。茅の輪をくぐり、水無月をいただく。氷が貴重だという感覚が薄れてしまった現代であっても、私にとっては、なぜか欠かすことができない、楽しみな行事のひとつです。

ここで一度祓い清めて、次の半年に備える——一年のちょうど折り返しに、そんな静かな区切りが地域の様々な場所で守り伝えられていること、私たちへも自然と毎日の日常の中で参加できるように開かれていることを、ありがたく思います。

風待月の亜由子好み

お祝いや少し特別な日に伺う、季節の懐石。特に、お食事のスタートに出会うことのできる八寸は、私の心ときめくお気に入りです。

一枚のお皿に、海の幸や山の幸がちょこんちょこんと宝物のようにきらめいて、季節の演出と共に美しい風景となっている——お食事でありながら、美術鑑賞をするような心持ちになり、心が躍ります。

「八寸」とは、茶懐石で八寸角(約24㎝)の折敷(脚のない縁付きの盆)に料理を盛りつけたことに由来する

「八寸」とは、茶懐石で八寸角(約24㎝)の折敷(脚のない縁付きの盆)に料理を盛りつけたことに由来する

写真は、冒頭のワサビの絵をはじめ、季節折々に扇面の絵を飾ってくださっている祇園「いわさ起」さんの八寸です。とっても暑かった昨年の夏、祇園祭の時期に撮らせていただいたもの。

祇園祭が近づくと、「蘇民将来子孫也」と書かれたあしらいが料理を彩るのも京都ならではです。六月の八寸では、どのような風景に出会えるでしょうか。

ここ「いわさ起」さんでは、タイミングによっては、ワサビの花の扇面のほかに銀杏・さくらんぼ・黒ブドウの扇面など……私の扇面の絵にも、出会っていただけるかもしれません。

2022.05.19

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雨を楽しむ水無月 「月々の文様ばなし」vol.3

2025.06.14

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構成協力/椿屋

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