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『アール・デコとモード』三菱一号館美術館  「きものでミュージアム」vol.52

『アール・デコとモード』三菱一号館美術館 「きものでミュージアム」vol.52

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『アール・デコとモード』が三菱一号館美術館で開催中!京都服飾文化研究財団(KCI)のコレクションを中心に、絹のドレスや香水瓶、腕時計などを当時の絵画とともに。100年前、自由をまとった女性たちの煌めきを!

2025.10.09

おでかけ

『永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ』東京都庭園美術館 「きものでミュージアム」vol.51

服飾を通して時代の息吹をたどる展覧会

今回は、三菱一号館美術館で開催中の『アール・デコとモード』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。画像写真の無断転載を禁じます。

『アール・デコとモード』展

1925年のアール・デコ博覧会からちょうど一世紀——その記念すべき節目に、京都服飾文化研究財団(KCI)が誇る珠玉のコレクションが東京にやってきました。

右:ロベール・ボンフィス ポスター

右:ロベール・ボンフィス ポスター「現代産業装飾芸術国際博覧会」 1925年 京都工芸繊維大学美術工芸資料館

ポール・ポワレ、ジャンヌ・ランバン、ガブリエル・シャネル……名だたるメゾンが手がけた1920年代のドレスたちは、絹のきらめきと繊細な装飾で当時の女性たちの自由と美しさを物語ります。

ドレスだけでなく、腕時計や香水瓶、化粧道具など、日々の暮らしを彩ったアイテムも多数展示され、アール・デコの美意識がどのように生活に息づいていたのかを感じることができます。

この日の装い1

100年前のパリにタイムスリップ

展示室に入ると、そこはアール・デコの時代へと誘われる空間。幾何学模様や直線的な装飾が空間を彩り、深みのある色彩と素材の輝きが優しく来場者を迎えてくれます。

ポワレ、ランバン、シャネルなど世界屈指のメゾンによるドレスが並び、100年前のパリに迷い込んだかのような高揚感も。

冒頭の展示室

冒頭の展示室

ドレスと帽子、ハンドバッグ、ジュエリーなどの装飾品――そして当時の絵画やグラフィックが並びます。モードがフランスの「装飾芸術(Arts décoratifs)」として位置づけられていることに気付かされます。

カルティエ製のフルーツサラダ・リング 1930年 国立西洋美術館(橋本コレクション)

カルティエ製のフルーツサラダ・リング 1930年 国立西洋美術館(橋本コレクション)

シャネルの赤いイヴニング・ドレスとモイーズ・キスリングの《ファルコネッティ嬢》が並びます。ファルコネッティ嬢は、1920年代のパリを生きた女優で、アール・デコの時代を象徴する存在でした。

絵画とドレスが並ぶことで、モードは単なる装いではなく、時代の精神を映す芸術であることが浮かび上がります。

赤いシャネルのドレスとキスリングの絵画

シャネルのイヴニング・ドレスとモイーズ・キスリングの《ファルコネッティ嬢》が並ぶ展示

ドレスに寄り添うように並ぶ、絵画やグラフィック。モードと美術が響き合う空間です。

東京都庭園美術館 本館 大客室

左:ピエール・ボナール 《白いコルサージュの少女(レイラ・クロード・アネ嬢)》1930年 ひろしま美術館、右:シャネル デイ・アンサンブル 1928年頃 京都服飾文化研究財団

当時のパリの街に想いを馳せ、解放された女性たちが闊歩する姿を想像しつつ、ワクワクしながら展示室をめぐりました。

ドレスとマルヴァルの絵

左:シャネル ドレス 1926年頃 京都服飾文化研究財団、右::ジャクリーヌ・マルヴァル 《ヴァーツラフ・ニジンスキーとタマラ・カルサヴィナ》 1910年頃 個人蔵/ジャクリーヌ・マルヴァル委員会(パリ)協力

アールヌーヴォーからアール・デコへ

そもそも19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパでは自然の曲線美を讃える〈アール・ヌーヴォー〉が流行。それは、花や植物をモチーフにした装飾や流れるようなラインで彩られたものでした。

この時代のドレスは、レースやフリル、そしてコルセットで極端に締め付けて作り上げた曲線がその特徴。展示のコルセットや下着のウエストの細さには、ただただ驚きます。

コルセットなど締め付ける下着

コルセットなど締め付ける下着

しかし1920年代、都市化と女性の社会進出が進む中で、〈アール・デコ〉が登場します。幾何学模様や直線を基調としたモダンな美学は、衣服にも大きな変革をもたらしました。

最も象徴的なのは、コルセットからの解放です。女性たちは締め付けから自由になり、軽やかで活動的なドレスを纏うようになります。

絹シフォンにビーズや刺繍を施したドレスは動きやすさと華やかさを両立させ、まさに“着るための芸術”となったのです。

アール・デコのドレス

アール・デコのドレスの展示

この様式の変遷は、単なる美の流行ではなく、女性の生き方そのものの変化を映し出しています。アール・デコの衣服は、自由、機能性、そして自己表現の象徴だったのです。

ブラジャーやストッキングの展示

ブラジャーやストッキングの展示

下着も大きく変わりブラジャーやテディが登場しました。スカート丈が短くなり、足が見えるスタイルの流行に伴い、ストッキングが日常的なアイテムとして定着しました。

※テディ……キャミソールやシュミーズにパンティが結合したもの。
図録より

1920年代のテディ

1920年代のテディ

女性の自立と装飾品

アールデコの時代、女性の社会進出やドレスが短くなったことにより、装飾品にも様々な変化が起こりました。

ヒール

ヒール 1925年頃 京都服飾文化研究財団

ずらりと並び、目を引くのは「ジュエルド・ヒール」と呼ばれる美しい靴のヒール。これらは靴を誂える際のサンプルです。

スカート丈の変化は脚線美を演出し、靴を美しく装飾することにつながりました。ラインストーンやメタルビーズ、エナメルの彩色などの装飾はとても煌びやかですね。

婦人用腕時計

婦人用腕時計

その他、腕時計や香水瓶、ライター、そして外出先で化粧直しするのに便利なパウダー入りコンパクトなどがアクティブな女性の装いを彩りました。

ライターやシガレットホルダーなど

ライターやシガレットホルダー、後ろ上段はルネ・ラリックのカーマスコットの展示

印籠を模したフランス製コンパクトは日本や東洋の影響を受けています。

プレストパウダー入りコンパクト

プレストパウダー入りコンパクトの展示

またドレス以外の服装も登場しました。当時、大ベストセラーになった小説の影響で、テニスやゴルフなどスポーツに熱中する女性が出現したのです。

スイムウェアにビーチウェア、テニスウェア、スキーウェア……!現代の感覚だとモード服に見えるようなスポーツウェアも展示されていました。

スイムウェア

スイムウェア 1920年代

ジャクリーヌ・マルヴァルの絵画に登場するパンツルックの女性は、当時活躍した俳優です。

ジャクリーヌ・マルヴァル 《ラ・フィギュラント》 1923年 個人蔵/ジャクリーヌ・マルヴァル委員会(パリ)協力

ジャクリーヌ・マルヴァル 《ラ・フィギュラント》 1923年 個人蔵/ジャクリーヌ・マルヴァル委員会(パリ)協力

女性がパンツをはくことさえ珍しい時代だったのですね。先進的な女性として描かれています。

ビーチウェア

ジャン・パトゥ・スポール・エ・ヴォワイヤージュ ビーチウェア 1929年頃 京都服飾文化研究財団

ディテールまで美しいさまざまなドレス

その他、展示室で出会ったドレスをご紹介します。美しいディテールは、ぜひ会場にて直接じっくりとご覧になられてくださいね。

アール・デコのドレスの展示

アール・デコのドレスの展示

左の黒いジャンヌ・ランバンのイヴニング・ドレスは、スカートは大きく広がりますが、以前のようにコルセットで締め付けていません。超絶技のビーズ刺繡にご注目を。

キャロ姉妹 イヴニング・ドレス

キャロ姉妹 イヴニング・ドレス 1922年冬

こちらはとても直線的なシルエット。シンプルながら絹とラメのブロケード、ビーズ、タッセルなどの装飾が凝っています。

ドレスの展示

画家のラウル・デュフィなどがデザインしたテキスタイルを使用した、印象的なドレスたち。

華やかなテキスタイル

華やかなテキスタイル

ドレスの展示

銀のビーズとラインストーンが華やかなドレス(左)と、帯のような漆器のようなウェストリボンが付いたドレス(右)も。

ドレスの展示

異国趣味のドレスにはどこか懐かしさも。

ドレスの展示

リュシアン・ルロン イヴニング・ドレス 1925年頃

そしてこちらは、『華麗なるギャツビー』のヒロイン・デイジーが着ていたドレスのよう。頭の中にチャールストンのメロディーが流れます。

アール・デコのファッションは1930年代に終焉を迎えました。その後、60年代に再評価され、2000年代のファッションにも影響を与えています。

年代のドレスと2000年代のドレス

アール・デコの影響が見られる1960年代のドレスと2000年代のドレスの展示

女性のファッションは、いつの時代も、その生き方と深く結びついてきました。絹のドレスのきらめきも、香水瓶の金箔も、アール・デコの息吹を宿していた今回の展示。アール・デコの時代に咲いたモードの美しさが、今を生きる私たちにも、静かな勇気を届けてくれるように感じました。

着るものによって生活が変わるのか、それとも生活が変わるから服が変わるのか……そんな問いがふと胸をよぎります。

展示風景

『アール・デコとモード』展ともに

小企画展『フェリックス・ヴァロットン―親密な室内』

アール・デコとモード展の華やぎのあとに、静かなもうひとつの展示を。 フェリックス・ヴァロットンは、木版画や絵画で親密な室内の情景を描きました。 差し込む光や沈黙の中にある感情が、静かに心に響きます。

小企画展『フェリックス・ヴァロットン―親密な室内』

小企画展『フェリックス・ヴァロットン―親密な室内』

※小企画展の観覧料は、企画展(アール・デコとモード展)に含まれます。
※小企画展のみの入場はできません。

Café 1894でティータイムやお食事を

美術館に併設された Café 1894 は、明治期(1894年)に銀行営業室として利用された空間を復元したミュージアムカフェ・バー。クラシックな趣と、2層吹き抜けの高い天井が人気!

 Café 1894

展覧会への期待や余韻とともに、ティータイムやお食事を楽しんでみませんか?美術館でのひとときを、Café 1894でゆったりと締めくくるのもおすすめです。

会期中は、展覧会にちなんだ限定メニューも登場!

タイアップランチ

タイアップランチ「Délices de la mode (デリス ドゥ ラ モード)」(前菜+メイン+パン+コーヒーor紅茶) 2,800円(税込)[販売時間 11:00~14:00(L.O.)]伝統的なテリーヌやジビエ料理を現代風にアレンジ

タイアップデザート

タイアップデザート「レッドベルベットケーキと赤い果実」 1,550円(税込)[販売時間 14:30~16:30(L.O.)]展示室冒頭で印象的な赤いイヴニング・ドレスをイメージしたデザート

休業日:不定休
電話:03-3212-7156 ※予約可能。詳細はWEBサイトをご確認ください。

この日の装い

今回は、アール・デコを意識したコーディネート。

展覧会のメインビジュアルに使われているドレスにも似たアール・デコ風菱形模様の着物に帯はモノトーンのアラベスク柄で雰囲気を合わせました。

この日の装い1

大きな螺鈿風キラキラの帯留めをポイントに。ヘアも当時のヘアスタイルを意識してセット!

この日の装い 帯回り
この日の装い 後ろ

キラキラコーデ割実施中!
本展では「キラキラコーデ割」を実施しています!
キラキラ光るファッションアイテムを身に着けていると100円引きになります。
(チケット窓口当日券のみ対応、他の割引との併用不可、自己申告制)

2025.09.26

着物でおでかけ

茶事を現代的に解釈したアフタヌーンティーを堪能『ザ・サウザンド京都』前編【YouTube連動】「紗月がゆく!着物で行きたい京の宿」vol.11

2025.09.25

ライフスタイル

着物漫画のモデルとなって。【慎太郎ごのみ器展 主宰 矢部慎太郎さん】(前編)「着物ひろこが会いに行く!憧れのキモノビト」vol.9

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ポスター画像

アール・デコとモード
京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に

三菱一号館美術館
https://mimt.jp/ex/artdeco2025/

日時:2025年10月11日(土)~2026年1月25日(日)10:00-18:00
(1/2を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで

休館日:祝日・振替休日を除く月曜日、および12/31と1/1
ただし、トークフリーデーの11/24と12/29、会期最終週の1/19は開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

ポスター画像

オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語

国立西洋美術館(東京・上野公園)
https://www.orsay2025.jp

日時:2025年10月25日(土)~2026年2月15日(日)9:30~17:30(金・土曜日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、11月4日(火)、11月25日(火)、12月28日(日)-2026年1月1日(木・祝)、1月13日(火)
(ただし、11月24日(月・休)、1月12日(月・祝)、2月9日(月)は開館)

ポスター

企画展示「野村正治郎とジャポニスムの時代―着物を世界に広げた人物」

国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B(千葉県佐倉市城内町117)
https://www.rekihaku.ac.jp/

日時:2025年10月28日(火)~12月21日(日)前期:10/28~11/24 後期:11/26~12/21、9:30 ~ 16:30(入館は16:00まで)

休館日:月曜日 (月曜日が休日にあたる場合は開館し、翌平日休館)

※開館日・開館時間を変更する場合があります。

◆ 読者プレゼント ◆

ポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『アール・デコとモード』三菱一号館美術館の招待券を2組4名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoto__

◆X
https://x.com/kimonoto___

※応募期間:2025年11月13日(木)まで

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