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父と子の看取り時間は、師と弟子の最後の修行 建仁寺塔頭禅居庵住職・上松正宗 「にちにちの みかた」vol.4

父と子の看取り時間は、師と弟子の最後の修行 建仁寺塔頭禅居庵住職・上松正宗 「にちにちの みかた」vol.4

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臨済宗建仁寺塔頭禅居庵住職の上松正宗さんによる、心地よく過ごすための味方となるような“日日にちにちの見方”をお届けする不定期連載。4回目は、「暁天坐禅會/緑陰講座」のご紹介を兼ねて、上松さんが経験した看取りについてのお話です。

2026.05.07

カルチャー

茶のエキスポ!栄西禅師の降誕を祝う『四頭茶会』を巡る日 建仁寺塔頭禅居庵住職・上松正宗 「にちにちの みかた」vol.3

編集者・澤田康彦先生とのご縁

建仁寺では毎年7月の週末に数日、「暁天坐禅會きょうてんざぜんかい」という一般の方が気軽に参加できる坐禅会を開催しております。

もともと毎月の第2日曜日の早朝から「千光せんこう会」という坐禅会が開かれているのですが、この「暁天坐禅會」では坐禅後に各分野の著名な講師をお招きして講演「緑陰講座」が行われます。

講座風景

2025年の講座風景。同志社大学嘱託講師を務める映画監督のロジェ―・ワルッヒ氏が登壇し、「日本に対するステレオタイプや誤ったイメージが、今の日本観光を作るのか?」について語った

今年は、11日(土)に編集者の澤田康彦先生、12日(日)には臨済宗国泰寺派吉祥寺の山田真隆住職にお話をしていただきます。

澤田康彦さんとは15年ほど前から個人的に親しくさせていただいていて、震災後、京都に生活の拠点を移されようとしたときからのお付き合いです。長く出版の世界で活躍され、マガジンハウスの雑誌『BRUTUS』や『暮しの手帖』の編集長をされていた方です。

書籍表紙

「在宅死」を選んだ母とその息子の別れの記録。大切な人の看取りについて考えさせられる心温まる1冊。著者の妻である俳優・本上まなみさんによる特別寄稿も所収

今年の春に、ご自分のお母様の介護、看取りまでの日々をつづった著書『この家で死にたいと母は言った 親を自宅で看取るということ』を出されたタイミングだったこともあり、今年の講師をお願いできないだろうか?とご紹介させていただきました。

私自身、3年前に介護の末、父を亡くしましたので、共感する部分が多くありました。

師でもある父へ、伝えた言葉

私の父、正明和尚は昭和22(1947)年生まれ。

74歳の誕生日を迎えた直後に、脳腫瘍――中でも最も悪性度の高いガンとされる膠芽腫こうがしゅ※と診断されました。

※膠芽腫……脳に発生する最も悪性度の高い腫瘍のひとつ。非常に速いスピードで増大することが懸念され、週単位など短時間のうちに症状・病状が変化することも少なくない。長らく難治がんとして知られてきたが、近年、5年生存率は16%程度まで延びた。主な症状に、頭痛・吐き気・痙攣発作・神経機能の障害などがある。グリオブラストーマ。

正明和尚

何もしなければ3ヶ月、手術をすれば1年は生きられるかもしれないという、大変厳しい診断でした。

手術をして寺で治療をする道を選びましたが、車椅子での生活となり、住職として今まで通りに役目を果たすことはできなくなりました。術後の治療も決して楽なものではなく、前向きに過ごすことが難しい日々が続きました。

親子ではありますが、住職と副住職、師匠と弟子の関係ですから、そのような師匠に引導を渡すのは私の役目でした。

ツーショット

「いま、和尚さまが戦っておられる病は、何かをしながらに戦えるような、そんな生易しいものではない、とても恐ろしい病です。私は和尚に代わってのその病と戦うことはできませんが、寺の住職として長年背負ってこられたその荷物を代わりに背負う準備はできています」

「辛いことを申しますが、この病と戦っても完治するということはありません。残された時間も長くはありません」

「私や家族、寺にいる者たちは、和尚さまの姿を毎日毎日しっかりと見ています。だからここからの時間は、私たち残される者に『人はこう生きるんだ』という姿を見せていただけませんか? 生きるとは何かを教えていただけませんか?」

と、意を決して伝えました。

笑って泣いて、心通い合った一年

「わかった、あんたの言うとおりや」

そう和尚が答えてからは、一気に色々なことが動き出しました。あっという間に寺の引継ぎをして住職を交代。

継席披露

建仁寺の和尚たちに見守られながら行われた継席披露での様子

それからというもの、お医者さまも驚くような努力でリハビリに取り組み、一時は車椅子から立ち上がり杖だけで歩いて出かけられるまでになりました。

健康な人にとって歩くことは意識もしない当たり前のことですが、一度失った能力を取り戻すのは簡単なことではありません。

リハビリ

リハビリを兼ねた境内での散歩。並んで歩く父と息子

一歩一歩ゆっくり確実に足を運んでうまく歩けるようになったときの、キラキラした笑顔はまさに子どものような……。あの生き生きとしたお顔は忘れることができません。

最後はホスピスのお世話になり、寺で看取ることは叶いませんでしたが、色々なことにチャレンジし、会いたい人にも会って。いま思い返すとあっという間でしたが、父と子、師匠と弟子として、泣いて笑って心通い合う一年となりました。

「看取り」というと辛く悲しいだけのイメージがあるかもしれませんが、私にとっての「看取り」とは、師匠から最後の修行をさせていただいた日々でした。

息子(正明和尚の孫)が描いた似顔絵

息子(正明和尚の孫)が描いた似顔絵

話は戻って――、
建仁寺の暁天坐禅會・緑陰講座、早朝からの行事ですが、ぜひご参加いただければと思います。

無料で体験できる坐禅&講座へ

暁天坐禅会
緑陰講座
無料接待の粥座(しゅくざ)

7月11-12日の2日間で行われる坐禅会。志さえあれば誰でも無料で参加できる。

12日の講座後には粥座(朝粥)の接待も行われる(先着160名)。

澤田康彦氏(『暮らしの手帖』元編集長)による著書『この家で死にたいと母は言った 親を自宅で看取るということ』(集英社インターナショナル刊)に綴られた日々についてのトークは必聴。

令和8年度 暁天坐禅会並びに緑陰講座のご案内

撮影/上松正宗
構成協力/椿屋

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