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『佐々木酒造』 聚楽第の記憶を残す蔵「着物で一献、ふわり上機嫌」vol.6

『佐々木酒造』 聚楽第の記憶を残す蔵「着物で一献、ふわり上機嫌」vol.6

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着物を纏い、日本の伝統と文化に触れながら酒蔵を訪ねるシリーズ第六弾。今回は、京都・西陣に佇む酒蔵『佐々木酒造』へ。聚楽第の記憶が残る蔵で、日本文化と日本酒を愛するやおよろずJAPAN代表・よろずが“日本酒物語”を綴ります。

2026.05.27

カルチャー

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佐々木酒造「聚楽第の記憶が残る場所」

「着物で一献、ふわり上機嫌」vol.6

浴衣で京の町を歩くのも粋ですね♪
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着物で京都を歩く理由は、人それぞれ。

美しい町並みを眺めたいから、神社仏閣を巡りたいから、季節の移ろいを感じたいから……

私の場合それは、京都という街に残る物語に会いたくて。

佐々木酒造より

提供/佐々木酒造

今回向かったのは、京都・上京区にある『佐々木酒造』です。

観光客で賑わう二条城周辺を抜け、住宅が並ぶ通りを進むと、ふいに酒蔵が現れます。京都でも珍しい、街中に佇む都心型酒蔵なのです。

聚楽第跡地と説明

佐々木酒造の蔵の中に「聚楽第跡地」があり感動しました!

蔵に入って最初に案内されたのは、一つの井戸でした。

「この辺りは豊臣秀吉が築いた聚楽第跡地なんです」

こう語るのは、ご多忙な合間を縫ってご案内くださった佐々木社長。

佐々木酒造の代表銘柄聚楽第

佐々木酒造の代表銘柄の1つにもなっている「聚楽第シリーズ」

皆さんは『聚楽第じゅらくだい』を知っていますか?

『聚楽第じゅらくだい』とは、豊臣秀吉が京都に築いた壮大な邸宅兼政庁。天皇を招くほどの格式を誇り、政治と文化の中心として栄えていたそう。佐々木酒造が建つこの場所も、かつて聚楽第の一角だったと伝えられています。

秀吉がこの地を選んだ理由の一つは「京都の水」だったと言われており、千利休を招いてこの地で茶を楽しんだという逸話も残っているそうです。

酒造りで使用されている樽

酒造りがされている樽の底は深い!

「私たちは、その水を使って酒を造っているんですよ」(佐々木社長)

土地の記憶はここに流れる水にも確かに残っていて、今も変わらず湧き出るこの水に、歴史を紡ぎ守り続けることの尊さを感じて身の引き締まる思いがしました。

「酒を造るのは微生物」見えざる蔵人たち

佐々木酒造の日本酒の数々

入り口には佐々木酒造さんの日本酒がたくさんあります♪

蔵の中へ進むと、蒸米設備や仕込みタンクが並びます。

「実際に酒を造っているのは微生物なんです」

酒蔵を訪ねるたびに耳にするのがこのフレーズ。同じ言葉でも、語る方によって聞こえ方はまったく違います。

連なるタンクの前で談笑

連なるタンクから全国の販売店へ

佐々木酒造では、1つのタンクで約1.5トンの米を仕込みます。伏見の大手酒蔵では、その何倍もの規模で仕込むことも珍しくありません。

「タンクが大きくなるほど温度差が出るんですよ」

そう言いながら設備を案内してくれた佐々木社長の姿からは、日本酒への愛情が自然と伝わってきます。

効率だけを考えれば、もっと大きな設備を導入する道もあったはず。それでも小さな仕込みを続けるのは、一つひとつの酒と丁寧に向き合うため。目に見えない微生物たちの小さな変化に耳を澄ませながら、酒はゆっくりと育っていきます。

蔵の神棚

蔵人と酒造りを見守る神棚

最後の工程は、酒を搾るための圧搾機。ここで、発酵を終えた「もろみ」から酒を取り出すのです。

「最初は自然に酒が流れ出るんです。それを“あらばしり”と呼びます」(佐々木社長)

日本酒好きにはおなじみの言葉ですが、実際の設備を前に聞くと印象が変わります。

蔵の奥には、遠心分離機もありました。高速回転によって酒と酒粕を分ける設備です。

佐々木社長のお話

酒蔵の設備のご説明をしていただきました♪とっても朗らかに分かりやい説明をありがとうございます!

「導入前には『獺祭』さんにも相談したんですよ」そう笑いながら話す佐々木社長。

酒蔵同士が情報を共有しながら技術を高め合う姿にも、日本酒文化の奥深さを感じます。

普段何気なく口にしている一杯の日本酒。

その裏側には、微生物の働きと蔵人たちの知恵、そして長い時間が積み重なっています。蔵を歩きながら、その一滴が生まれるまでの物語に触れたような気がしました。

そっとタンクに手を添えて

タンクの中にある日本酒の息吹を感じます

兄・佐々木蔵之介さんから預かって30余年

今回の取材で、最も印象に残った言葉があります。

「私は継いだ人ではないんです」

最初はピンときませんでした。お話を伺うと、なんと佐々木社長は三人男兄弟の三男。もともと酒蔵を継ぐ予定だったのは次男であるお兄様、佐々木蔵之介さんだったそうです。

しかし、お兄様は俳優の道へ進み、代わりに酒蔵を預かることになったといいます。

佐々木社長のインタビュー

継ぐというより「預かっている」という気持ちで毎日精進している、と佐々木社長

「私は酒蔵を継いだというより、預かっている感覚なんです。次の世代へ渡すまでの“つなぎ役”。それが自分の役割だと思っています」

社長が大切にしている言葉「無道人之短無説己之長」

佐々木酒造が大切にしてる「無道人之短無説己之長」これは「人の短所をいうことなかれ、己の長所を説くことなかれ」と言う意味で、空海が書き残したものだそう

そしてこの考え方は、佐々木社長のお父様から受け継がれたものだそうです。

「父もまた、自分のためではなく、次へつなぐために酒蔵を守っていた人でした」

継ぐのではなく預かる。守るのではなく渡す。その考え方は、どこか着物の世界にも通ずる気がしました。

佐々木酒造より

提供/佐々木酒造 京都の街中にある佐々木酒造

蔵自体も、京都の中心地という立地を考えれば「移転」という選択肢もあったはずです。土地活用だけを考えれば、もっと効率的な方法もあるでしょう。それでも佐々木酒造は、この場所で酒を醸し続けています。

「父は、この場所で続けることが使命だと思っていました」

効率ではなく意味、利益ではなく継承。聚楽第の時代から続く水の記憶やこの土地に積み重なった時間。

佐々木酒造が残しているのは形としての酒蔵というだけでなく、京都という文化そのものなのかも……そんなことを感じました。

着物ファンにおすすめ!この日本酒

おすすめの一本の夏限定酒夏方

オススメの一本は『夏方(ナツザマ)』

このシリーズの恒例となっている「オススメの一本」♪

今回も浴衣に似合う一本をお聞きしました。佐々木社長からオススメ頂いたのは、夏限定酒『夏方ナツザマ』です。

佐々木酒造より

提供/佐々木酒造 夏らしくすっきり飲める一本

鮮やかな青のボトルは、まるで夏の京都の空のよう。

口に含むと爽やかで軽やか。味わいの奥にはしっかりと米の旨味が広がります。純米吟醸原酒らしい飲み応えを持ちながら、暑い季節にピッタリな味わいなんだそう。

例えば、夕暮れの鴨川沿いを歩いた帰り道。風鈴の音を聞きながらゆっくり味わいたくなる一本かも♪

蔵の外の看板と夏方で撮影

ブルーボトルがとっても美しい

とはいえ、「日本酒の楽しみ方って何?」と思う人も多いはず。

日本酒に詳しくなくても大丈夫です。「まずは季節を楽しむように、一杯を手に取ってみる」そんな気持ちで楽しんでみてください♪

旅の余白 ― 「“つなぐ”ということ」

玄関先にある大きな杉玉

杉玉を見ると日本酒を連想しますね♪

取材を終え、蔵を出ると玄関先の「杉玉」が静かに揺れていました。

杉玉は新酒ができたことを知らせる酒蔵の目印。けれど、その役目を終えた後も物語は続くのだそうです。

「毎年替えるんですが、欲しいと言ってくださる飲食店さんが多いので差し上げているんです」

そう話す佐々木社長。酒蔵で役目を終えた杉玉は、京都の街へ渡り、また新しい時を刻んでいきます。

応接室でのインタビュー

「私はつなぎ役なんです」

酒をつなぐ。
場所をつなぐ。
文化をつなぐ。
人をつなぐ。

今回出会ったのは日本酒だけではありませんでした。京都という街が大切に守ってきた「つなぐ心」だったのかもしれません。

金魚模様の浴衣

浴衣の中を優雅に泳ぐ金魚。余白との絶妙なバランス

着物で酒蔵を訪れる度に思うことがあります。

着物や浴衣の世界に惹かれる人はきっと、「効率」よりも「余白」を大切にしているのではないでしょうか。そしてそれは、日本酒の世界も同じだなと。

「香りや余韻を楽しみながら、ゆっくりと季節を味わう」

だから着物や浴衣と日本酒は、不思議とよく似合うのだと一丁前に思うのです。

京都きもの市場レンタルの着物

ひと足早く浴衣を身に纏いました♪
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京都を訪れる時は観光スポットだけではなく、ぜひ酒蔵にも足を運んでみてください。

きっとそこには、お酒の向こう側にある物語が待っています。

佐々木社長と聚楽第の看板の前で

風情のある蔵の前で。佐々木社長との話は尽きません

さてさて、次はどんな物語に出会えるのでしょうか。着物をまとい、日本文化を訪ねる旅はこれからも続きます。

次回も、どうぞお楽しみに♪

撮影/スタジオヒサフジ
着付け/着つけヒラリ

2026.05.27

カルチャー

着物で一献、ふわり上機嫌

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