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幽玄なる『薪能』をナビゲート 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」番外編

幽玄なる『薪能』をナビゲート 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」番外編

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茂山千五郎家の面々の正式な肩書は「能楽師大蔵流狂言方」。ゆえに、各専門的役割を職能とする京都在住の各流の能楽師が会員となっている京都能楽会に所属しています。そんな彼らにとって、能の舞台に立つことも立派なお役目。今回は毎年6月1~2日に平安神宮で開催される「京都薪能」についてご案内します。

2025.05.27

まなぶ

千五郎家所蔵の狂言装束、大解剖! 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」vol.10

もっと能楽を身近に!薪能限定の「ナビ狂言」

今年で75回目を迎える「京都薪能」は、6月の京の風物詩。能楽師が集まって手づくりで運営している会で、茂山千五郎家の皆様も、それぞれ制作・広報・設営といった裏方に身を置いています。

茂山茂しげやましげるさんが企画制作のお手伝いを始めた頃、

「吉阪一郎さん※から、能楽の会は小難しいものというイメージも強いさかい、狂言方が面白おかしく、分かりやすいように説明してくれへんか、と頼まれて。
無茶振りしはるなぁと思いつつ(苦笑)、能とその世界に馴染みのない人たちとの橋渡しができるような何かがあれば……と考えて、レクチャー形式の『ナビ狂言』を発案しました。毎年上演される演目が変わるため、台本もその都度書き下ろすので大変です(苦笑)」

※吉阪一郎さん……1965年生まれ、小鼓方大倉流。社中の会「若葉会」主宰。重要無形文化財保持者(総合認定)

宗彦さん&逸平さんのTシャツ

2025年の「第74回京都薪能」の会場で、パンフレット売場で売り子を務めた宗彦さん(写真左)と逸平さん。揃いのTシャツは、お誂えとのこと

宗彦さん&逸平さんのTシャツ/背中

背中には英語で同様の呼びかけが!

撮影は、茂さんが島田洋海さんとナビゲートした2日目(2025年)にお邪魔しました。

オープニングのナビ狂言で幕が明けた後、金剛流『嵐山』が披露され、6時45分から火入式が行われました。ちなみに、この火入式はヘルシンキオリンピックからインスピレーションを得てスタートした京薪能発祥の儀式とのこと。こういった豆知識も、ナビ狂言が教えてくれます。

会場

2025年は大極殿が改修中のため応天門を背に舞台が設置され、例年と違ったレアな趣きに

薪の燃える匂いが辺りに広がり、刻々と薄闇が濃くなっていくなか、理事長挨拶を挟んで、観世流の『夕顔』、大蔵流『太刀奪たちうばい』、観世流『雷電』と続き、附祝言で幕を閉じる……予定でしたが、思わぬ雨にて『夕顔』がやや速足で演じられ、異例のショートバージョンでまとめられた『太刀奪』で中止と相成りました。

狂言師の大切なしごと「間狂言」

茂山千五郎家にとって柱的存在ともいえる「茂山狂言会」を軸に、多彩な定期公演を開催しながら、いくつもの公演依頼を請け、学校からの依頼にも足を運び、各神社への奉納狂言や京都市主催の市民狂言会(年4回)にも出演し続けている千五郎家の狂言師たち。

そんな彼らにとって大切な仕事のひとつに、「間狂言あいきょうげん」があります。

「間狂言あいきょうげん」とは、狂言師が能の中で登場人物のひとつを演じる場面、またはその役のこと。略して「アイ」ともいわれます。室町時代から能と狂言はワンセット。狂言だけの公演会が頻繁に行われるようになったのは、最近のことなのです。

「ユーモラスな狂言とは違い、シリアスな能の中でのアイには、狂言と真逆の技術が必要です。特に語りの技術の多くはアイで培われます。それを狂言の方の語りに活かすこともありますので、私たち狂言師にとってアイはとても重要です」

と、茂さん。

2023.12.04

まなぶ

気になるお能

諺「泥棒を捕らえて縄を綯う」から生まれた曲

この日上演された『太刀奪』のあらすじと見どころをご紹介。

『太刀奪』場面カット

写真右から、主人役の茂山逸平さん、太郎冠者役の茂山宗彦さん、道通りの男を演じる井口竜也さん

北野天満宮(天神さん)へ参詣に出かけた主人と太郎冠者。道中、ふたりは良い太刀を持った男を見つけ、その太刀を奪おうと計画します。

市の店を見ている男の太刀に手をかけた太郎冠者は、「なで斬りにしてやろうか!」と逆に脅され、主人から預かった刀を奪われてしまう始末。

『太刀奪』場面カット

主人と太郎冠者は大事な刀を取り戻すために男を待ち伏せし、通りかかったところを主人が背後から捕まえることに成功!

「縄をもって男を縛れ」と命じられた太郎冠者は、悠々と縄を綯い始めます。やっと綯え終わって男に縄をかけようとしますが……。

『太刀奪』場面カット

この日は「生まれて初めて、縄を綯わずに男を捕まえようとしました(苦笑)」という宗彦もとひこさんの言葉どおり、ある意味貴重な短縮版となりましたが、本来なら、見ていてイライラするほどゆっくり縄をなう太郎冠者、「助けてくれ!」ともがく男、羽交い絞めにする主人の三人三様のコミカルな動きが笑いを誘う小名しょうみょう狂言(太郎冠者がシテの曲)です。

太郎冠者を演じた宗彦さん曰く、

「太郎冠者のボケっぷりが流れを生み出すテンポの良い作品だからこそ、役者の間と呼吸が合わないと舞台は無茶苦茶になってしまいます。その日の会場の空気感やお客さんの雰囲気で変化するため、幕が上がるまでどうなるか分からない、怖い作品でもあります(笑)」

「狂言ナビ」の立役者

茂山茂

茂山茂しげやましげる

1975年9月9日生まれ。五世千作の次男。
1979年、小舞『柳の下』にて初舞台。その後、『千歳』『三番三』『釣狐』『花子』を披く。
自身を「千五郎家の保険」と評し、蔵番や千五郎家公式サイトの運営など一切の裏方を引き受ける。「茂山家の玉三郎」と呼ばれ、細身の体格を活かした女性役に定評がある。好きな言葉は「遊び心」。

茂山千五郎家家系図

「6月といえば、梅雨。ぼくにとっては、何よりも蔵が臭くなる月です(苦笑)。気温はそこまで高くないけれど湿気が多く、汗も乾きにくい。装束を陰干ししていると、24時間除湿器をフル稼働させても追いつきません!

一歩外へ出ると、修学旅行生の多い時期ですね。修学旅行先である京都で狂言を観てもらう機会をつくろう!と事業をスタートさせたのが約30年前。いまでは年間40~50の学校の生徒さんたちに笑いを届けています。こういった取り組みは、今後も大切にしていきたいと思っています」

公演告知

第75回京都薪能

2026年6月1日(月)・2日(火) 平安神宮(雨天時はロームシアター京都メインホール)

例年6月1日・2日に平安神宮内の特設舞台で行われる「京都薪能」は、篝火が焚かれ、社殿がライトアップされる幻想的な空間で流儀を超えた能と狂言を鑑賞することができる。昭和25年から変わらず親しまれてきた京都の初夏の風物詩。全国各地で開催されている「薪能」だが、篝火を灯す火入式を最初に行ったのが、「京都薪能」だ。幽玄の世界が立ち上がる舞台をぜひライブで体感してほしい。

入場料:プレミアム席15000円(公式パンフレット・オリジナルノベルティ特典付)
SS席10000円
S席8000円
A席7000円
一般自由席4000円
U-23自由席3000円
※当日券あり、未就学児入場不可

前売券:4月1日(水)から発売
※当日券は各日15:30~開場前で販売

公式サイト:http://www.kyoto-nohgaku.or.jp/

第7回 千五郎の会 東京公演/京都公演

2026年6月21日(日) 十四世喜多六平太記念能楽堂(東京)
2026年7月4日(土) 京都観世会館(京都)

2017年に小泉八雲著『怪談』より「ちんちん小袴」を狂言化して上演したことをきっかけに、八雲の曾孫にあたる小泉凡氏と交流を深めてきた千五郎さん。

今回の東京公演は「小泉八雲と狂言の出会い」と題して、思い出深い「ちんちん小袴」と、昨年京都で上演した新作「常識」に、古典狂言「梟」の3曲を披露。
京都公演「狂言百鬼夜行」では、「常識」の再演に加えて、「松風」「狐狗狸噺」を上演。両公演とも、凡氏との対談あり。

公式サイト:https://kyotokyogen.com/schedule/20260621sengoro/

撮影/スタジオヒサフジ

2022.06.06

まなぶ

雨を楽しむ水無月 「月々の文様ばなし」vol.3

2023.04.02

よみもの

平安神宮の見どころランキング。文豪たちにも愛される名所の由縁

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