ホーム
コラム
知れば納得、セールの事情「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.55

知れば納得、セールの事情「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.55

2022.07.01 （2025.07.05 更新）

記事を共有する

先日あるお店から、夏のセールの案内状を作ってほしいと依頼がありました。そういえば、どうして夏になるとなぜあちこちでセールが行われるのかしら、と思っていたのですが、事情を知れば納得です。

先日子どもの学校で保護者会がありまして、来年の修学旅行について説明がありました。日程表を見ると、

「大阪伊丹空港から15時の便に乗って仙台空港へ向かい、そこからバスに乗って学校到着は20時」

と書いてあります。わたしがよく使う大阪伊丹～山形便はその飛行機よりも遅い16：20発。山形空港へは17：35に到着します。なぜ山形便があるのに、わざわざ山形上空を通り越して仙台まで行かなくてはいけないのか、不思議でなりませんでした。

そこで旅行会社の人に聞いたら、そこにはきちんとした「大人の事情」が存在していたのです。旅行会社は各航空会社へ乗りたい便と人数を第4希望まで伝え、その回答を得られたものについてのみ表示しているとのこと。飛行機を貸し切りにするには利用人数などの条件があることも教えていただきました。知れば納得です。

先日あるお店から、夏のセールの案内状を作ってほしいと依頼がありました。そういえば、どうして夏になるとなぜあちこちでセールが行われるのかしら、と思っていたのですが、こちらも事情を知れば納得です。

お店の在庫は資産ではありますが、在庫過多になるよりは安く売ってでも現金化して、次の秋冬の新作を仕入れたほうがいい。なるほど。とはいえ、90％オフ、なんていう表示を見ると、元値はいくらなの？なんか怪しい……と思ってしまいますけどね。これに関しては、客寄せパンダ的な商品もあります。それこそ早い者勝ちですが。

コロナ禍ということもあり、バーゲン会場に朝早くから行列、とか、セール品のワゴンに向かって突進、という時代ではなくなったものの、ネットの世界では熾烈な「夏のセール、早い者勝ち」が繰り広げられています。気になるものは早めにチェックしておくのが、現代の正しいセールの歩き方なのかもしれませんね。

ところでわたしの友人は、きものを一枚増やすときは、持っているものの中から一枚減らす、と決めて「在庫管理」していたのですが、決めたつもりがそううまくはいかなかったようで、今回とうとう夏のセールで「きもの用箪笥」を狙っていると教えてくれました。

箪笥って重いから送料がけっこう高くつきそうなのよね、いっそ車で取りに行こうかな、なんて言っています。昨今のガソリン代を考えると、それもどうかなと思いつつ、ついでに温泉に一泊して美味しいものを食べるのもアリだよね、と飛躍しまくる友人に、

「それのほうがよっぽど高くつくよ！」

とツッコミを入れておきました。

ちなみにわたしは、絽の帯揚げと麻の半衿、麻足袋のまとめ買いを目論んでおります。

エッセイスト・イラストレーターきくちいまさん

ほぼ一年中を着物で過ごし、着物ライフの楽しさをイラストとエッセイでつづる。執筆の他、着物や帯などのプロデュースも手がけ「着物は人生に寄り添うもの。おしゃれで楽しくて、お守りのような存在の布になれたらと願い、ものづくりをしています」と語る。著書に「大人かわいい着物読本」(主婦と生活社)、「おとなのときめきふだん着物」(河出書房新社)、「買ってはいけない着物と着物まわり」(実業之日本社)などがあり、最新刊は「東京着物さんぽ」(GB)。山形県在住で、子3人犬1匹の母でもある。