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四姉妹で振袖を着せあいっこして 若村麻由美さんインタビュー(前編)

四姉妹で振袖を着せあいっこして 俳優 若村麻由美さん(前編)

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3歳から日本舞踊坂東流を習い始め、15歳で最年少名取りとなり、現在は師範の資格も持つ若村麻由美さん。高校卒業後は、仲代達夫さん主宰の俳優養成所「無名塾」へ入塾します。NHK連続テレビ小説『はっさい先生』でヒロインに抜擢され、俳優デビュー。その後、映画、ドラマ、舞台と数々の話題作に出演されてきました。劇中で着物を着る機会も多く、また普段から着物を愛好する若村さんに、その魅力をうかがいます。

2024.04.09

インタビュー

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大人のおしゃれ着を目指して

今年5月、KITTEで行われた京都きもの市場催事でのトークショーに登壇してくださった若村麻由美さん。

登壇するにあたり選ばれたのは、アイボリーから淡い銀鼠へとグラデーションが美しい牛首紬の訪問着に、シックなチャコール色の帯地にモダンキュートな草花模様が織り出された袋帯でした。

若村麻由美さん1

「プライベートの着物はちりめんなどの柔らかものが多いんです。でも、これからは少しずつ織のものも増やして行きたいと思い、こちらの牛首紬を選びました

やはり、紬を着こなすのは大人というイメージがありまして……もう十分大人ですが(笑)。いわゆる「おしゃれ着」というものを着こなせるようになりたいんです。20代のときに初めて紬の訪問着を購入しまして、それも牛首紬でした。ずっと憧れがあるんですね」

今回、時期的に袷はもう終わりというタイミングでしたので、爽やかに見える色目のものにしてみました。帯はスペインのタイルみたいなデザインがかわいくて選びました

――帯締め、帯揚げ、草履は和小物さくらさんで揃えていますね。帯揚げの合わせ方も絶妙です。

金平糖のような、淡いキャンディーカラーからかわいくて。子どもっぽくなりそうなので結び目は作らずに入れ込みにして。多色染めの帯揚げは、どの部分を出すかで色合いや雰囲気が変わるのでおもしろいですよね。

帯もそうですけれど、着物姿においての小物類は『一番見せたいポイント』を『見せたいところ』へ考えて出す楽しみがありますね

小物関連は和小物さくらさんのものを

託児代わりに日本舞踊教室へ

――着物を着るようになったきっかけは日本舞踊でしょうか。

「そうですね。両親とも共働きで忙しかったですし、母が日本舞踊が好きだったのもあり、3歳から保育園の帰りにお稽古場に預けられていたんです。自分のお稽古は15分くらいで終わってしまうのですが、すべてのお稽古が終わるまでいさせてもらって遊んでいました。

週に3回ほどずっとお稽古場にいたものですから、長唄ですとか清元などの三味線音楽、邦楽に自然と親しむことができたのは得がたい経験だったと思います

若村麻由美さん2

「それに日本舞踊は子ども心にある”変身願望”を叶えてくれたので、自分も好きで通えました。いつもは神社で仮面ライダーになりきって遊んでいるけれども、踊りではお姫さまに変身したつもりでお稽古をしてね。とくに踊りのおさらい会ではお客さまの前、舞台できちんと踊るとなると本衣裳にカツラつけてもらい、顔もするんですね。

5歳のときの記憶ですけれど、鬢付け油のいい香りが忘れられないんです。その香りにうっとりして。白粉をパンパンパンとはたかれて、自分でも見たことのない顔になって、縫いの刺繍の振袖で裾引きの着物を着せてもらい、普段、保育園に通っている自分からしたら大変身。演目は『菊づくし』でした。

みんなが観に来てくれて、『きれい』とか『かわいい』と褒めてもらえて。本当にお姫さま気分を味わいました。小さいころに人に褒められると楽しさが倍増してお稽古事が続くというの、ありますよね(笑)」

まなぶ

正派西川流・西川喜優先生 お稽古場での装い 「日本舞踊の愉しみ」

そうこうして気がついたときには、稽古着は自分でちゃんと着られるようになっていましたし、お祭りも大好きで、仮面ライダーごっこをしていた神社で盆踊りや縁日があれば、必ず浴衣を自分で着て、一番太鼓が鳴るときにはもう櫓の下に一番乗りでいる、というのが私の楽しみでした。

太鼓のお兄さんと私しかいない時間でしたけれど(笑)。そこから最後の総踊りが終わるまでずっと踊っていたので、よっぽど好きだったんですね。

夏は浴衣ですが、年末もお正月も必ず着物を着ていたような気がします。子どものときのほうがより着物を着ていたかもしれません。お稽古もありましたし、結婚式で踊って下さいということもありました。人づてで、『うちでも踊って下さい』と呼ばれて、意外と引っ張りだこだったんです。

じょじょに変身する楽しさから人に喜んでもらえることが楽しいんだ、と変化していったのを小学生ながらに感じましたね

振袖を楽しんだ20代

子供の頃から20代までは、着るとなったら振袖でした。成人式に着るような”ザ・振袖”が華やかで好きでしたが、印象が強いので、だんだんとシンプルなドレス感覚で着られるものも用意するようになりました。

帯や小物で印象の変わる無地系のものが重宝しました。控えめな柄や、刺繍、螺鈿がちょっと付いているとか、シボの大きなちりめんに地紋の入っている振袖も出番が多かったです。大振袖を中振りにしてみたりして……。 20代は振袖を存分に楽しみました」

2025.07.06

よみもの

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――振袖を着ていくパーティーですと結婚式が定番ですが。

「そうですね、結婚式以外でもお祝いのパーティーにお招きいただいた時や、あとクラシックのコンサートもいいですよ。振袖を着ていると、みなさんとても喜んでくださいます。話のきっかけにもなりますし、それにとても親切にしてくださる(笑)。人に喜んでいただけるところが着物の素晴らしさでもありますね

――振袖のとき、帯を結んでくださる方が近くにいらしたんですか。

母も結べましたが、私は姉妹がおりまして、着せ合いっこをするんです。四姉妹なのですが、全員日本舞踊を習っていたので着物が好きで、袋帯の変わり結びを『ああしよう、こうしてみたら』などと工夫するのも楽しみでした。

子供の頃からお正月や節目の時は四姉妹で着物で出かけます。ハレの日は『ちょっとした細雪ね』と母が嬉しそうでした。今は、姉妹の子供たちが振袖を着る年頃になったので、『なにかの時には着せてあげるから』と背中を押して、着物でのお出かけをすすめています(笑)

2025.07.07

よみもの

振袖選びが母と娘の絆を深める 「親子できもの日和」vol.3

先達の想いつなぐ着物

――着せ合う相手がいると楽しさも倍になりそうです。

「友人同士、仲良しだったら貸し借りもいいじゃないですか。『その着物ならこの帯が合うと思う』と貸し借りっこすることで、自分の好みとは違うものを合わせてみるチャンスができたり。

あとどうしても、使わないものも出てきてしまうので、似合いそうな方に「お気に召したら」とお譲りすることもあります。」

――「着物好き」だと知れると、譲っていただく機会も増えませんか。

「この仕事を始めてまず、『無名塾』の恩師、仲代達矢さんの奥さまで演出家の宮崎恭子さんから『麻由美は着物が好きだから』と何枚かお着物をいただきました。尊敬する大好きな恩師のお気持ちがとっても嬉しかったです。宮崎さんは普段から着物をよく着てらっしゃいましたが、私より小柄な方でした。『寸法を直して稽古着にでもしてね』とおっしゃられて。

寸法が違っても直して着ることができる着物。本当に尊敬する恩師の、着物への思いを引き継ぐことがこんなにもうれしいものかと、感激しました。『これでお稽古したら、私もうまくなれるかもしれない』と(笑)。そういう意味でもうれしかったです。

また、先輩の女優さんたちから『あなたに似合うからこれ着てちょうだい』といただく機会もあります。大切にされていたものを私に、と思っていただいたことがものすごくありがたくて、大切にしています。私もいつか『着物が好き』という後輩の方にお譲りする日がくることを心待ちにしています。

後編では時代劇での着こなし、和事の所作についてうかがいます。

現在、『若村麻由美公式Mgardenメンバーズ』会員登録受付中。

【今後の出演予定】
◎ドラマ
「緊急取調室」テレビ朝日系
10/16(木)21:00〜初回拡大スペシャル
10/23(木)21:00〜第2話
※TVerにて無料配信&1週間見逃し配信有り

◎舞台
飛び立つ前に
11/23〜12/21東京芸術劇場シアターイースト
12/26〜2026/2/1全国ツアー

『若村麻由美の劇世界』
2026/10/10熊野本宮大社(ユネスコ世界遺産)
この劇世界は古典作品から、曽根崎心中、平家物語、源氏物語、古事記などを能舞台を中心に公演するライフワーク。

ヘアメイク/長縄真弓
取材・構成/渋谷チカ
撮影/五十川満

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