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初春を寿ぐ儀式「舞初式」に密着 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」vol.6

初春を寿ぐ儀式「舞初式」に密着 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」vol.6

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室町時代より生き続ける狂言文化をいまに伝える大蔵流狂言師・茂山千五郎家の歴史と魅力を追いかける連載も折り返しです。2025年初となる今回は、1月4日に茂山千五郎家で行われた正月儀式「舞初式」の様子をお届けします。

2024.12.25

まなぶ

新作公演が広げる、狂言への間口 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」vol.5

千五郎家の正月飾りとおもてなし

約束の時間より少し早く到着すると、当主・千五郎さんの指揮のもと、上背のある逸平さんが玄関幕を掛けていました。

玄関幕を掛ける様子

幕には、千五郎家の家紋である「七つ割り隅立て四つ目紋」が入っています

門松ではなく根引きの松が飾られた玄関先へと、三々五々、お社中さんが集まり始めたのが15時過ぎ。

※根引きの松……根が付いたままの松を奉書紙で包み、紅白の水引を結んだもの。「根引き松」「根曳の松」とも。根を張る=安定・繁栄を願う正月飾りのひとつ。

お社中さん

2024.11.02

まなぶ

狂言を習い事に? 茂山千五郎家の社中とは 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」vol.4

式が始まるまでは通された座敷でお茶をいただきながら、お社中さん同士、新年の挨拶が交わされます。

茶菓子

この日用意されていたのは、巳の焼き印が押された「御菓子司 塩芳軒」の薯蕷饅頭

2021.11.30

よみもの

御菓子司 塩芳軒 本店留めの『聚楽』 「京都・和の菓子めぐり」vol.11

お社中さんたちが通される座敷の床の間は、正月にふさわしく整えられていました。

床の間を設える様子

ここでも背丈の高い逸平さん(左)にお呼びがかかり、お弟子の井口さんと共に手際よく支度を進めていきます

完成した床の間がこちら。

先代の千五郎氏(現当主の父)が自らつくったという兜鎧は年中鎮座しているそうです。

床の間を設える様子
床の間飾り

能「三番三」の翁人形。狂言役者が演じる黒式尉(こくしきじょう)の面を掛けています

いつもは稽古場である舞台も、この日は注連飾りが飾られ、上手(舞台から見て左側)には立派な正月御飾りが設置されていました。

正月御飾り
舞台風景

2023.12.15

よみもの

正月支度はしめ飾りから 「#京都ガチ勢、大西さん家の一年」vol.12(最終回)

一門総出で初春を寿ぐ「舞初式」

神聖な舞台が、より厳かな空気をまとっていました。

式次第は、ご覧のとおり。

式次第

当主・千五郎さんの鎧の語を皮切りに、千五郎家オールスターでお目出度い小舞を舞います!

七五三さんの舞

狂言小舞「雪山」を舞う茂山七五三(しげやましめ)さん

舞台には、茂山千五郎家の狂言師が一堂に会し、年功序列で座しています。客席となる座敷には27名のお社中さんたち。

七五三さん

茂山宗彦さん・茂山逸平さんの父である茂山七五三さんは、祖父である三世 茂山千作氏、父の四世 茂山千作氏に続き、2023(令和5)年、直系三代で人間国宝に認定されました

七五三さん

若い頃から兄の補佐役を務め、大学卒業後は銀行員として勤めながら狂言師を続けてきた異色の経歴の持ち主

あきらさん

茂山あきらさんは、七五三さんの従兄弟。茂山千之丞さんの父。狂言だけでなく、オペラの演出を手掛けたり、小劇場「THEATRE E9 KYOTO」の館長を務めるなど、新たなる挑戦と舞台芸術の存続にも熱心に取り組んでいます

御飾りへ二礼二拍手一礼

舞の始めと終わりには、御飾りへ二礼二拍手一礼

三人夫」風景

小舞「三人夫(さんにんぷ)」を舞う茂山茂さん(右)、茂山宗彦さん(中央)、茂山逸平さん(左)

「土車」風景

茂山千之丞さん(中央)は、本家のツインズ(左:茂山竜正さん/右:茂山虎真さん)と共に「土車」を舞いました。「土車」は狂言の基礎である小舞の稽古で最初に習う曲のひとつ

2024.10.02

まなぶ

歴史ある『茂山狂言会』に託す想い 「大蔵流狂言師・茂山千五郎家の365日」vol.3

「土車」風景

同じく「土車」を舞う、茂山慶和さん(中央:逸平さん長男)、茂山鳳仁さん(右:千五郎さん三男)、茂山蓮さん(左:茂さん長男)

朗々と謡い、粛々と舞う一年を

次に、お弟子さんたちが順に手本となり、3人1組でお社中さんが「土車」を舞います。

先に舞う仲間の振りを見ながら手元で動きを確認したり、扇を握り締めたり、深呼吸をしたり。緊張が空間を満たすなか、彼らは順々舞台に上がり、稽古の成果を披露し終えていきました。

お社中さんの「土車」

3名ずつ順に、お社中さん方も全員お舞台へ

その後、一門の皆さんが御神酒を頂き、お社中さんたちにも振る舞われました。

一門ならではのチームワークで準備は敏速。あれこれと指示がなくとも、それぞれが必要なことを弁え、無駄なく動きます。

御神酒
御神酒

最後は和気藹々とした雰囲気で、「舞初式」の幕が閉じました。

そこには、千五郎家ならではの和やかな正月の風景が広がっていたのでした。

儀式前の風景

舞台に飾られている代々の肖像画や写真。いつでも後進たちの稽古を見守っています

今月の狂言師

茂山七五三

茂山七五三しげやま しめ

1947年8月30日、四世千作の次男として生まれる。
1951年、「業平餅」の子方で初舞台。1976年に、兄・従兄弟と共に花形狂言会発足。
1999年に同会を卒業するまで、秘曲の復曲や新作狂言の上演を積極的に行った。
1975年のイラン・スイス・西ドイツ公演への出演を皮切りに海外公演にはほぼ毎年参加し、2000年1月にはパリの俳優術研究所(ARTA)に招かれ、ワークショップの指導を担当。チェコ共和国において「七五三〈ルビ:なごみ〉の会」発足。その後、2001年には米朝一門を巻き込んだ「お米とお豆腐」を立ち上げ、新たな試みにも挑戦した。2020年「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞。2023年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。千五郎家の大事なご意見番。

茂山千五郎家家系図

「元日には平安神宮、3日には八坂神社と150年以上前からお世話になっている滋賀県の多賀大社へ行きますので、家でゆっくりできるのは2日だけですね。その後、節分まではなんやかんや慌ただしく過ごすのが千五郎家の1月です。

個人的には、お正月を迎える度に新たな気持ちで、今年一年頑張るぞ!と思います。体力的には衰えていきますが、後に続く者たちのお手本になれたらいいという気持ちで、過去に演じたものを見つめ直すつもりで役に向き合う日々です」

公演告知

けいはんなお豆腐狂言~笑う門には福来る!~

2025年2月9日(日)
けいはんなプラザ 京都府立けいはんなホール(京都)

「今月の狂言師」に登場した人間国宝・茂山七五三と、宗彦・逸平・慶和(逸平の長男)の3代親子狂言は、「棒縛り」(英語字幕付き)と「佐渡狐」。

「狂言のおはなし」付きで初心者にも分かりやすい公演だ。ちょっぴりおかしな人間模様といつの時代も変わらぬ笑える失敗談を軽やかに演じる。

第十一回 立合狂言会~狂言十番の上演~

2025年2月23日(日・祝)
国立能楽堂(東京)

2015年から続く、年に一度、狂言の流派や家の垣根を超えて時代を担う狂言師が集結する『第十一回 立合狂言会~狂言十番の上演~』。

茂山千五郎家からは、五笑会のメンバーである島田洋海と鈴木実が「鏡男」を上演する。若手狂言師たちの競演を存分に楽しめるお得な狂言会だ。

撮影/スタジオヒサフジ

2025.01.01

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