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首里織 山口工房 山口良子さん(沖縄県浦添市) 「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」 vol.15

首里織 山口工房 山口良子さん(沖縄県浦添市) 「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」 vol.15

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バイヤー野瀬の沖縄仕入れ旅密着!まだまだ続きます。 いよいよ今回は、首里織の重鎮、山口良子さんを訪ねて。

2024.06.10

まなぶ

首里織 首里織工房紗紗 宮国文愛さん(沖縄県那覇市) 「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.12

首里織の重鎮、山口良子さんを訪ねて

まだまだ続く、バイヤー野瀬の沖縄仕入れ旅密着!

バイヤー野瀬

いよいよ首里織の重鎮、山口良子さんを訪ねます。

山口良子さん

山口さんの作品には気品と風格がただよい、若手作家が「先生」と慕うお人柄がうかがえます。

取材陣も少し呼吸を整え、姿勢を正して、いざ工房へ。

山口先生の工房

工房の入り口。白壁に花々の彩りが冴えて

「首里織」とは

本題に入る前に、首里織についてざっと復習しておきましょう。

首里織

「首里織」とは、首里に伝わるさまざまな紋織物や絣織物の総称。昭和58年に通産省伝統産業法指定申請の際に命名されました。

工芸の宝庫といわれる沖縄、なかでも琉球王国の王府の城下町として栄えた首里では、”王府の布”として、王家や貴族専用の格調高い織物が生み出されてきました。

首里織

「首里花倉織」は、王女が着た夏の衣。花織と絽織を市松や菱形など交互に織ります。

「首里織」は男物の官衣として使用された平織で、両面使用できるのが特徴。

このふたつは、首里でのみ織られてきた特別な織物という歴史があります。

2023.01.17

まなぶ

首里織 工房真南風(沖縄県中頭郡読谷村)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.2

首里織 山口工房 山口良子さん

自然が好きで、毎晩星を見て寝るという山口さん。

自然が好きで、毎晩星を見て寝るという山口さん

山口良子さん:わたし本当はやちむんが好きだったの(笑)。だけど、やきものの世界はまだ女性の仕事ではないという時代でした。

そんなとき、親友が会社を辞めて花を習いにフランスへ渡ってしまい、それが刺激になりましたね。自分も何かやらなくちゃと思うようになって。

宮平初子さんを訪ねたら「明日から来なさい」と。最初の3年は親のすねをかじりました。

※宮平初子さん……重要無形文化財指定技術「首里の織物」保持者。沖縄県内女性初の人間国宝。2022年3月7日没

バイヤー野瀬:宮平先生の一番弟子と伺っています。

山口良子さん:先生の工房にいたのは3年だけなんですよ。

宮平先生が立ち上げた組合(那覇伝統織物事業協同組合)の人手が足りないからと、組合に勤めることになって。先生との関係はずっと続いていましたけど、自分の工房を構えました。

まだまだ続くバイヤー野瀬の沖縄仕入れ旅

バイヤー野瀬:組合では長年貢献され、理事長になられてからも後進の指導にあたられてきたそうですね。いま、工房にはお弟子さんが3人ですか?

山口良子さん:そうです。ここでチカラをつけて、どんどん独立してもらいたいと思っています。

バイヤー野瀬:山口さんの作品を拝見して常々思っていたのですが、この品格はどこからくるのか……やはり糸でしょうか?

山口良子さん:生糸は群馬から送ってもらっています。

バイヤー野瀬:たいへん希少な国産生糸ですね。そして、色がとてもふくよかで上品です。やはり草木染めですか?

よろけ花織

よろけの花織 シルバーグレーはミロバランの鉄媒染

山口良子さん:基本は草木染めです。草木染では出せない色や堅牢度の問題があるときなどは、化学染料も使います。糸は一反分ずつしか染めないので、そこはこだわりかもしれませんね。

織物の仕事は大変だし面倒な工程もありますが、それが楽しい。

楽しみながらゆっくりとね、だからたくさんできなくて、お待たせしてしまうの。

あくなき制作意欲

バイヤー野瀬:作品から丁寧なものづくりの姿勢が伝わってきます。

山口さん:宮平先生も亡くなって……私も自分の手足が動く間は少しずつでもと思っていますが、やってもやっても終わりがないので、どこまでできるか。次どうなるんだろ、次どうなるんだろ、というのがありますね。

いろいろな繋がり

バイヤー野瀬:いま拝見できる作品はありますか?

山口さん:ありますよ。

建っている藍を分けて、薄めて、ハイドロ抽出するときれいな水色が出るの。市松の花倉、デザインは「投網」です。参考資料として残すための作品なのですが、お見せしましょうか。

カワセミ

バイヤー野瀬:わぁーきれい!!(取材陣一同感嘆の声) なんとも言えない美しいブルー!!まさに水の色ですね。

山口さん:いい色が出たのでカワセミと名付けました。しかも堅牢度が高いの。

バイヤー野瀬:薄いブルーの草木染めは堅牢度が低いイメージがありました。染めもこちらで?

山口さん:そうです。染料がたくさんストックしてあります。

染料1

山口さん:神社の桜の木に、こっちはイチイの木。

展覧会で出会った仏師に「仏像を削った削りかすはどうされるの?」と聞いたら「捨ててしまう」というので、泡盛と交換してもらったの(笑)。媒染によってオレンジ色がでます。

染料3

山口さん:それと、やちむんの方が送ってくれるウメ、茶色のニッキ、モッコク、工房の弟子のご縁で青森からいただいているリンゴ……

染料2
染料4

バイヤー野瀬:おおー、沖縄だけでなく各地から!いろいろなご縁で繋がっているんですね!

いろいろな染料をみせていただく

これからの作品作り

バイヤー野瀬:これからどのような作品を考えていらっしゃるのですか?

工房でのひと時

山口良子さん:「よろけ」と「投網」の表現はもっとやっていきたいですね。

「よろけ」はね、浦添公園の近くにチガヤ(千萱、イネ科の植物)が群生しているところがあって、それが一斉に白い穂をつけて風に揺れているのを見て、ああ、こんなふうに爽やかな動きを織で表現してみたいなと思って。

バイヤー野瀬:ぜひ、つくっていただけますか?

山口良子さん:はい、でも来年になってしまうかしら。

バイヤー野瀬:来年でも再来年でも、お願いします!!

グリーンも美しい

自然が好きで、毎晩星を見て寝るという山口さん。

緻密で繊細、麗しいばかりの花織や花倉織を前に、抱いて帰りたい気持ちを抑えきれない様子のバイヤー野瀬でした。

2024.08.10

まなぶ

琉球絣・琉球壁上布・南風原花織 マル信工房 具志堅悦子さん・金城広子さん(沖縄県島尻郡南風原町) 「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.14

撮影/田里弐裸衣 @niraiphotostudio
取材・文/SOLIS&Co. @wabijin_na_jikan

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