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きものすなおさんと”織の原点”へ (ラオス・ヴィエンチャン) 「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」番外編

きものすなおさんと”織の原点”へ (ラオス・ヴィエンチャン) 「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」番外編

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京都きもの市場の名物バイヤー・野瀬の産地巡り。着物インフルエンサーのきものすなおさんとコラボレーションした番外編の第2弾はラオスのヴィエンチャンへ。民族衣装に用いられてきた織の技術を生かし、着物の帯を作る織物工房を訪れます。

きものすなおさんと巡るラオスの織物工場

トゥクトゥクに乗った野瀬とすなおさん

京都きもの市場の名物バイヤー・野瀬が、着物インフルエンサーのきものすなおさんと行く「きもの産地巡り」番外編。

2024.04.28

まなぶ

きものすなおさんと訪れる着物海外縫製工場(ベトナム・ホーチミン)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」番外編

第2弾は、タイやベトナムなど5つの国に囲まれた東南アジア唯一の内陸国ラオスです!

実はラオスは”日本の織の原点”と呼ばれており、機械は使わず全て手織り。その技術はユネスコ無形文化遺産にも指定されています。今回はそんなラオスの織物工場をいくつか巡ってきました。

その模様をお届けする前に、まずはラオスの風景をお楽しみください!

ワットタイ国際空港に建てられた記念碑

ワットタイ国際空港に建てられた記念碑

縫製工場の見学に訪れたベトナムから飛行機で約1時間。首都ヴィエンチャンにあるワットタイ国際空港に到着しました。

その出入り口に建っているのは、日本とラオスの国旗が並んだ記念碑。

2015年から2018年にかけてワットタイ国際空港では大規模な拡張工事が行われ、その際に日本の政府開発援助(ODA)が活用されたことを示しています。外交関係を結んだ約70年前から日本は継続的にラオスを支援しており、ラオスはとっても親日国なんです!

現地ではトゥクトゥクで移動!

現地ではトゥクトゥクにも乗車!

そんなラオスでの移動に欠かせないのが、三輪タクシー・トゥクトゥク。野瀬とすなおさんもトゥクトゥクに乗り込み、工場へと向かいます。着物姿のすなおさん、爽やかです!

ドアも窓もない開放感あふれる車内から、ラオスの町並みを眺めるしばしのドライブ……

首都ヴィエンチャンは交通量が多く、道沿いにもたくさんの車が止まっています

首都ヴィエンチャンは交通量が多く、道沿いにもたくさんの車が止まっています

トゥクトゥクで移動するラオスの子供

トゥクトゥクで移動するラオスの子供

日本食レストランの看板も発見!

日本食レストランの看板も発見!

ラオスは2月でも基本的に30度超え!ほとんどの人が半袖です

ラオスは2月でも基本的に30度超え!ほとんどの人が半袖です

動画で見たい!という方にはぜひ、『すなおの着物チャンネル』のこちらをどうぞ。

実は野瀬も『着物バイヤー野瀬チャンネル』をスタート!ラオス編はこちらです。

ラオスの伝統的な織物技術を生かした帯

さて、最初に訪れたのはラノイさんの工房です。

工場長のラノイさんと記念撮影

まずはラノイさんの工房へ

ラオスの民族衣装である「シン」を履いたラノイさんがお迎えくださいました!

「シン」とは一枚の織物生地を筒状に縫い合わせた巻きスカートで、腰に巻きつけて着用します。日本の女性がスーツを着る感覚で着用されるそうで、ラオスの女性はだいたい何枚もお持ちで日常的に着ていらっしゃるそう。

他にも「パービアン」という肩から斜めにかけるシルクの手織り布もあり、古くから織物が盛んなラオス。

2020.07.18

よみもの

織の原点・ラオスで作った帯のお話 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.8

そんなラオスの織物に惚れ込んだ野瀬は5年ほど前から取引を開始。これまでラオスで培われてきた手織りの技術を生かし、着物の帯を作り始めました。ラノイさんの工房も信頼における協力パートナーのひとつです。

ラノイさんの工場

ラノイさんの工場にて

驚くべきは、その熟練の技。

こちらは葛の茎の繊維で作った葛糸を緯糸よこいと、絹を経糸たていとに用いて布を織っているのですが、普通はこんな綺麗に織れないそうです。しかも機には、おもて面を確認する鏡もついていません。

ラノイさんの工場

それなのに完成した布を確認してみると、こんなにも精密な仕上がり!すなおさんも慣れた手つきで機を織る職人の技に驚きっぱなしでした。

生成糸でナーガのモチーフが織り込まれた帯

生成糸でナーガのモチーフが織り込まれた帯

そしてラオスの織物に欠かせないのが「ナーガ」のモチーフです。

「ナーガ」とは、ラオスで水の神の象徴として崇められている蛇(龍)のこと。そのナーガを抽象化した文様があらゆる民族衣装や帯にも織り込まれており、2023年にはユネスコ無形文化遺産に指定されました。

ラノイさんの工場にも、あらゆるところにナーガの置物が飾られています。

ナーガの石像

ナーガの石像

ナーガの置物

ナーガの置物

そしてラノイさんの工房にはショップも併設されており、「シン」や「パービアン」だけではなく、バッグやクッションカバーなど、豊富なラインナップが並んでいます。

幅広い商品ラインナップ

撮影クルーもその洗練されたムードに大興奮!思わず撮影も忘れ、夢中になって物色してしまいました。

色も柄もバリエーション豊か。ラオスではバナナの葉とマリーゴールドの花で作られた「パークワン」という飾りが冠婚葬祭の定番アイテムで、これを模した柄もいわば吉祥文様なのだとか。

色柄のバリエーションが豊かなラオスの織物

野瀬は着物の帯をオーダーする際、日本好みの配色を意識しているそう。模様が複雑に織り込まれたラオスの織物も素敵ですが、日本文化が持つ引き算の美学も大切に着物に合う帯を作っています。

この日、すなおさんもラオスの帯を着用。そのまま飛行機にも乗りましたが、全くシワにならなかったそう。

すなおさんの帯姿

優しい色目の同系色コーディネート

見た目はビシッと。けれど伸縮性があり、体が楽な着心地に感動したというすなおさん。

「ラオスの帯が大好きになりました!」の一言に、ラノイさんもとてもうれしそうな表情を浮かべていらっしゃいました。

伝統と新しさが融合する織物工房へ

2軒目は、ウサバディさん(ウサさん)の工房へ。

実はウサさんは……日本留学中になんと『京都きもの市場』でスタッフとして働いていたのです!

『京都きもの市場』で働いていたウサさんの工場

野瀬はウサさんが織物の仕事をしていたとは知らず、偶然にも見学に訪れたこの工場で再会したというから驚きです!

まずはそんなウサさんの衣装をご紹介。

肩からかけているのはラオスで流行しているオーガンサーのパービアンで、2頭のナーガを意匠化した工場のロゴが織り込まれています。ウサさんはおしゃれに敏感で、縦ラインの模様が入ったシンも目を引きました。

次はショップを拝見。

ウサさんの工場で作られる織物は現代風なデザインが特徴

鮮やかな彩りが魅力的

扉を開けると、目にも鮮やかな商品が飛び込んできます。ウサさんの工房では伝統を大事にしつつ、現代風なデザインを心がけているそう。

どれも非常に緻密に柄が織り込まれていて、とても手織りとは思えません!

蝶々の装飾が施されたマフラー

この細やかな織り!

どことなくジャポニズムを感じる柄もあり、帯にして、着物にも合いそうです。

臨時オーダー会の模様

早速オーダーの相談も

ウサさんが手にしているパービアンはリバーシブル仕様になっていて、ゴージャスな柄は現地では結婚式にも適したもの。裏返せばシンプルなデザインになっているので、日常使いにも使われるそう。

これをどうやって帯にするか、を考えるのも楽しい時間。

撮影中も野瀬は、

「前は無地で、横に柄を持ってきて……」
「小紋に合わせた時に金だと強すぎるかな」

と、常にバイヤー目線。ウサさんも『京都きもの市場』で働いていたことから着物や帯の知識が豊富で、野瀬も助かっているそうです。

ショップを回っていると、ウサさんのお母様が登場!

ラオスで人間国宝に認定されたウサさんのお母様

アジアの人間国宝に認定されたウサさんのお母様

お母様も同じく織り手で、なんとアジアの人間国宝に選ばれた方だそう!素敵な笑顔とともに撮影クルーを歓迎してくれました。

続いては……広大な敷地にある織り工場も見学。

こちらの女性はなんと17歳。物心ついた頃から家の手伝いで手織りを始めたそうで、目にも止まらぬ速さでシンを織っていきます。機械と変わらないほどのスピードに驚きました。

織手として活躍する17歳の女性

シルクはお手入れが難しいイメージがあるかもしれませんが、現地の「シン」や「パービアン」は自宅でも洗濯可能だそう。ウサさんは桶の水に浸けてシャンプーで洗い、布が乾かないうちから、しっかりとアイロンをかけているそう。

1回目の洗濯で多少は縮むものの、2回目以降は縮まなくなるとウサさんが教えてくれました。

パービアンは冠婚葬祭で着用する正装用のショール

超絶技巧を凝らしたスクイ織の布地がきっかけに

最後はラニーさんの工房へ。

経緯どちらもバナナの糸

ここでは蚕糸だけではなく、バナナ繊維の糸を用いた商品も作っています。動画で見ていただけると、バナナの糸でできた布はキラキラしていてとっても綺麗なんです!

野瀬がラニーさんの工場にオーダーを始めるきっかけとなったのが、こちら。

野瀬が一目惚れしたすくい織りの生地

オーガンサーの生地にすくい織りでモダンな柄を織り出したもので、もともと工場の壁にかかっていたのを見た野瀬が一目惚れ。

繊細なのに高級感があり、ぜひ帯にしたい!とオーダーし始めたそうです。

太陽の光に透ける平織りのショール

太陽の光に透けるショール

平織りの生地にピックのような道具で波形を作った珍しいショールも。涼やかでチリよけとしても活躍しそうです。

ラニーさんの工場見学の模様

織りの技術や柄の精巧さだけではなく、ラオスの人たちの一切手を抜かない真面目さも取引の決め手となったという野瀬。

今回の工房巡りでも、その人柄にたっぷりと触れることができました。

これからも『京都きもの市場』では、全2回の番外編で紹介したベトナムやラオスのパートナーとともに素敵な商品をみなさまに届けていきます!

ティファニーブルーの桜柄の小紋をお召しになったすなおさん。ラオスでも注目の的でした!

ティファニーブルーの小紋をお召しになったすなおさん。ラオスでも注目の的でした!

ワットタイ国際空港の記念碑の前でツーショット

ワットタイ国際空港の記念碑の前でツーショット

旅の詳細はすなおさんのYouTubeチャンネルで公開された動画でご覧ください。また野瀬チャンネルでは、今回の旅で巡ったラオスの工房で作られた織りの帯も紹介しています。そちらも合わせて、チェックをお願いします!

構成・文/苫とり子

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