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琉球絣・琉球壁上布 丸正織物 大城幸司さん(沖縄県島尻郡南風原町)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.11

琉球絣・琉球壁上布 丸正織物 大城幸司さん(沖縄県島尻郡南風原町)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.11

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沖縄への仕入れ旅、野瀬がつぎに向かったのは、那覇市の東南に位置する南風原町。エネルギッシュで前向き、常に産地の将来を考えている若きリーダー的存在、丸正織物の3代目・大城幸司さんを訪ねました。

2024.05.03

まなぶ

知念紅型研究所 知念冬馬さん (沖縄県那覇市・琉球紅型)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.10

絣の魅力に迫る

沖縄への仕入れ旅、つぎに野瀬が向かったのは、那覇市の東南に位置する南風原町

シーサーの置物

エネルギッシュで前向き、常に産地の将来を考えている若きリーダー的存在、丸正織物の3代目・大城幸司さんを訪ねました。

大城幸司さん

丸正織物3代目 大城幸司さん

お会いするのは2回目なのにもかかわらず、野瀬と大城さんはすでに旧知の仲のように意気投合!

絣の魅力に迫ります。

絣のふるさと、南風原の織物

南風原……はえばる。

「南風が吹く豊かな土地」という意味のごとく、なんだかとてものんびりとした空気が流れています。

猫と大城さん

工房のまわりでは猫もおさんぽ

沖縄県で唯一海に接していない町であり、琉球絣と南風原花織の産地

インドから東南アジアを経由して琉球王府の大交易時代(14~15世紀頃)に伝わったとされる絣は、琉球の風土に溶け込んで、やがて薩摩絣、久留米絣、米沢琉球絣、伊予絣など日本の絣のルーツになったと言われています。

絣の魅力に迫る

バイヤー野瀬:幸司さんにお会いするのは去年の春に研修で伺って以来ですが、あのとき感じた熱意はとても印象に残っています。幸司さんは伝統工芸士の資格をふたつお持ちですよね?

大城さん:はい。南風原の伝統工芸士には「括り」「染め」「織り」の部門があり、僕は括り(意匠部門)と染め(染色部門)に認定されています。母が織り(製織部門)の伝統工芸士です。

琉球絣伝統工芸士3部門コンプリート

親子で3部門コンプリート

バイヤー野瀬:親子で琉球絣伝統工芸士3部門コンプリートですね!丸正織物工房では琉球絣、紬、花織などたくさんつくっていらっしゃいますが、幸司さん自身はやはり絣が好きなんですか?

大城さん:そうですね。絣を極めていきたいなというのはあります。

一度東京に出たことで地元の素晴らしさに気づかされたというのもあって、伝統を大事に、なおかつ、いま自分にできる新しいものづくりがやりたいなと。

バイヤー野瀬:絣って、分かってくるとたまらなく魅力的に見えてきます。この絣足の表現とか、愛おしくなってきますよ。

絣

じわっとにじむような絣足の魅力

大城さん:そうでしょう! たとえばトゥイグワー(鳥)の大きさや配置、デザインを変えるだけで現代に映えるきものができたりするんですよ。

きものや帯に限らず、ジンダマー(銭玉)模様のストールはちょっとイタリアものに見えてきたりね。

絣の魅力について語る

絣の魅力について語るふたり

2023.04.28

まなぶ

作家・宮城麻里江さん(沖縄県島尻郡南風原町・南風原花織、琉球絣)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.5

琉球絣の夏物「壁上布」とは? その魅力と現状

南風原の琉球絣の夏物のなかで、壁糸と呼ばれる特殊な諸糸もろいと(諸撚り糸=2本の単糸を撚り合わせて1本にした糸)を緯糸に用いた手織りの織物「壁上布」をご存じでしょうか。

涼しげな透け感とシャリシャリとした独特の風合いが特徴です。

壁上布

かつては南風原の代表的織物として数多く生産されていた壁上布ですが、現在は産地全体でも年間250反ほどに減少。丸正織物がその7割を担うという現状に話が及びます。

バイヤー野瀬:琉球絣はだいぶ減反している中で、幸司さんのところは逆に増やしていると伺いました。やはり一回離れてしまうと戻ってこないですよね。

大城さん:そうですね。とくに夏物(壁上布)は織り続けていないと安定した織りができないので。

バイヤー野瀬:壁上布は、それこそ10年前くらい前はいくらでもあって、次でいいかって感じでしたけど、いま本当に貴重になってしまいましたね。年間数で言ったら黄八丈くらいの感覚ですものね。職人さんがいたとしても壁上布は織りたがらない?

大城さん

大城さん:糸の扱いが難しくて、難が出やすいんです。その割には値段が安かったので割に合わなくてどんどん織り手がいなくなってしまいました。

バイヤー野瀬:手機りなのになんでこの値段なんだというくらい、安すぎましたよね。

工房

大城さん:僕が入ったときはそれがスタンダードだったので高いのか安いのか分からなかったんですが、今考えると底値でした。

そのころ、問屋さんから「壁上布だったら取引したい」と言われたので、じゃあ壁上布で一番になろうと。それで徐々に信頼を得て、ロートンとか花織とかも扱っていただくようになりましたね。

壁上布

バイヤー野瀬:壁上布は今後もっと減ってしまいますかね?

大城さん:減りますね。

絣の括り職人もいなくなっていますし、括りだけでなくタテ巻きなども影響して絣の技術全体が衰退してしまっているので。絣は経験値が必要、積み重ねでしかないのです。

花織

バイヤー野瀬:組合が機織りの育成事業もされていますが……

大城さん:花織が伝統産業指定を受けているので、そちらに流れてしまっている背景もありますね。うちは一年おきに採用していて現在出機も含めて全部で25人です。

バイヤー野瀬:幸司さんが一手に率いている。頼もしいです。壁上布の透け感と絣模様は何とも言えない粋な色気がありますから、もっと知ってもらわないといけないですね。

2023.01.17

まなぶ

工房 真南風(沖縄県中頭郡読谷村・首里織)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.2

新作へのチャレンジ

花織

大城さん:日本も温暖化の影響で夏物や単衣ものの需要は伸びていますね。それを受けて、糸を変えたり、透かしを入れたり、いまいろいろと挑戦していているところです。

バイヤー野瀬:新しいものづくりも! お、これかっこいいなあ。

大城さん:これは僕の最初の頃のデザインで、運良く売れて自信が付いたというもので(笑)。今回復刻してみたらいい感じでした。

初期の作品を今回復刻

バイヤー野瀬:逆に新鮮できれいです!

ロートン織

大城さん:こっちは王子様が着たであろうという着物、現物はもっと派手なのですが、その“王子柄”を両面織りしたものです。

バイヤー野瀬:品があっていいですね。以前雑誌掲載になった絣もとても人気でしたので、あの感じでまたお願いしたいです。

大城さん:ありがとうございます。着物だと古い感じの古典柄でも、帯にしたら意外とおもしろいのではと思ったりしているので、アイデアはいろいろと!

バイヤー野瀬:出来上がったらぜひ一番に見せてください!

撮影/田里弐裸衣 @niraiphotostudio
取材・文/SOLIS&Co.

◆読者プレゼント◆

読者プレゼント

さて、ここでうれしいお知らせです。今回、丸正織物さんのショップ『丸正商店』で販売されている琉球絣柄の手ぬぐいを「きものと」読者2名様へプレゼント!(色柄はおまかせとなります。)

丸正商店
丸正商店

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※応募期間:2024年6月2日(日)まで

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