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濃地フォーマルを”私らしい”母コーデに 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」 vol.8

濃地フォーマルを”私らしい”母コーデに 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」 vol.8

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着物スタイリストのコバヤシクミさんが、きものと読者をパーソナルスタイリング!個性的でおしゃれな三児の母・Mさんの、「ご自身らしい」母コーデを提案します。

前回のスタイリングはこちら!

2022.11.13

まなぶ

お母様の付け下げをモダンに! 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」vol.7

着物スタイリスト コバヤシクミさんがご提案!

着物スタイリスト・コバヤシクミさんが読者の着物姿を丸ごとプロデュースする企画「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」。

コバヤシさん

これまで手がけた個人スタイリングは5000人以上。

顔のパーツの直線・曲線の組み合わせ等を測定分析し得意なテイスト・柄・色合い・素材を診断する「顔タイプ着物診断」や、その方の内面性をふまえた論理的なアドバイス、さらには思わずハッと目をみはるような色使いや小物合わせといったコバヤシさんの天性のセンスが加わり、みたことのない新鮮なコーディネートが次々と繰り広げられます。

さて今回はどんなコーディネートを提案してくださるのでしょうか?

三児の母、Mさんをお迎え

今回のゲストは、きものを初めて約2年というMさん。

淡いピンクと薄紫のぼかしの地に、枝垂れ桜が控えめに描かれた訪問着でお越しくださいました。

Mさんビフォー正面
Mさんビフォー後ろ姿

帯は桜、杜若、菊、竹など四季の花がびっしりと刺繍された袋帯。

かわいらしい明るいピンクの帯締めに、ふんわりとした白に近いピンクの帯揚げできものとなじませました。

Mさんビフォー後ろ姿

「きものを始めたきっかけは、娘の家族写真を撮った時に着物を着たこと。貸衣装でしたが、とても心が踊りました」

ですが、お母さんならではのお悩みもあるそうで…?

「子どもの七五三や入卒園式など、なにかときものを着る機会はありますが、子どもが主役のイベントのお母さんのきものといえば、パステルカラーの優しい雰囲気のコーディネートが主流ですよね。

もちろんそれも素敵ですが、普段の洋服も濃い色や個性的なものが好きな私にとっては、なんだか照れくさくて!」

確かに、お母さんの個性だって十人十色。いろいろなスタイルがあってもいいはずですね。

コバヤシさん、教えてください!

2020.04.08

まなぶ

着物で広がる彩りの世界・桜色編 「色の印象・コーディネートを学ぶ」

濃い地のフォーマルきもの

コーディネートを選ぶ

コバヤシさんは今回、おしゃれなMさんのための全身コーディネートを4つ組んでくださいました。

京都きもの市場の約3000点の着物、約3000点の帯の中からセレクトした組み合わせに、ベストな帯締めと帯揚げをセレクト。無限大の組み合わせの中から生まれた、Mさんのための唯一無二のコーディネートです。

4つのコーディネート

「フォーマルといえば淡い色合いのものが定番ですが、もちろん、濃い地のものもあります。作家ものの創作訪問着もたくさんあるんですよ。

ですが濃い地の作品は、趣味性が出てくだけた印象になりやすいので注意が必要。フォーマルに着こなすポイントをおさえながら、ひとつひとつのコーディネートを見ていきましょう」

装いの印象を決める3つの要素とは?

1つ目のコーディネートは、意匠化された松竹梅が描かれた松井青々作の京友禅訪問着。

やわらかなクリーム色地に毘沙門亀甲と双鳥が織り出された袋帯がセレクトされています。

1つ目のコーディネート

【松井青々】京友禅訪問着「雲取歳寒三友図」 + 【川島織物】西陣織本袋帯「毘沙門亀甲双鳥文」

「大胆、かつかわいらしくデフォルメされた松竹梅が着映えする着物です。大胆で個性的。とても華やかなのでご自身が主役の席にぴったりです。帯も、毘沙門亀甲と双鳥という正統派の古典柄のモチーフながら、それらが伸びやかにデザインされた芯のある作品で、着物にひけを取りません」

とコバヤシさん。

Mさんは、「松のデザインがかわいい!毘沙門亀甲の柄も幾何学模様みたいで素敵。とても好みです」と楽しげです。

1つ目のコーディネートを試す

帯締めは、ぼかしの深緑に赤茶色と金の模様が施された平組みのもの。帯揚げには、着物より明るいトーンのオレンジがかった明るい茶色のものをあわせて。

これらもまた個性的ですが、それゆえ帯や着物とのバランスがとれています。

「着物のコーディネートは『色・格・素材』。この3つの要素の組み合わせで、印象に変化をつけます。

フォーマルなコーディネートにする時のポイントは3つ。

・格の高い柄を選ぶ
・金色を使う
・帯締め、帯揚げも格の高いものを選ぶ

です」

とコバヤシ先生。思わずメモをとりたくなるレクチャーです!

素材で格上げする方法

2つ目のコーディネートは、抽象的な模様が印象的な作家ものの友禅訪問着に、これぞ正統派!な松文が織り出された綴れの帯の組み合わせ。

青みがかったグリーンをベースに、銀彩加工がしっとりとしたムードです。

創作友禅訪問着「銀霞」 + 綴れ織袋帯「松彩」

「この着物の柄は、さまざまな解釈ができるのがその魅力。海のようにも、山のようにも、はたまた雲のようにも見えますね。そこにどんな帯を合わせるかは、その人のセンス次第。今回は海に見立てて松の柄の帯を選びました。

着物の柄は吉祥文様や有職文様ではありませんが、帯に松というおめでたいモチーフを選んだこと、帯締めや帯揚げは格の高いものを選ぶことでフォーマルな印象に。趣味性が高いので、祝賀会やパーティーにも向いています」

とコバヤシさん。さらに、

「綴れの帯は名古屋帯と同じように一重太鼓で結びますが、格は袋帯と同等。先ほど挙げた3つの要素の中の『素材』で格上げする方法にあたります」

2つ目のコーディネートを試す

Mさんは、

「ぼかし染がとても綺麗!上半身は無地なのが、すっきりして上品ですね。帯の松もシンプルですが力強くて素敵です」

と目を輝かせます。

”着る人が主役”な訪問着

3つ目、4つ目のコーディネートでは、江戸小紋の訪問着に、2パターンの帯を合わせました。

「江戸小紋は江戸時代の武士の裃(かみしも)に起源を持ちます。なかでも三役と呼ばれる、「鮫(さめ)」「行儀(ぎょうぎ)」「角通し(かくとおし)」は格の高い柄。

今回の作品は行儀に熨斗(のし)文様が染められた、珍しい江戸小紋の訪問着ですが、上半身は無地であっさり。これは見方によっては”着る人が主役”という解釈もできます」

とコバヤシさん。背筋が伸びるようなお話です。

江戸小紋ヨリ

この着物に合わせた1本目の帯は、紫ねずや黄緑、クリーム色の横段のぼかしに金糸で菱が織り出された西陣織の袋帯。

帯締めは帯と同じく紫と緑・金色のもの、帯揚げは白練色の綸子です。

【人間国宝 故・六谷梅軒】江戸小紋訪問着 + 【紫紘】西陣織両面袋帯「〆切舞楽菱」

Mさんは、

「帯揚げに白が入ることで、ぐっとフォーマル感が出てびっくり!」

と驚いたご様子。

「ちなみにこの帯なら、今着ていらっしゃるご自身のお着物にもピッタリですよ」とコバヤシさん。

これはうれしいですね!

1本目の帯とご自身の着物を合わせる

帯を変えて”かっこいい”コーデに

江戸小紋柄の訪問着には、2本目の帯をあてて印象を変えてみます。

【人間国宝 故・六谷梅軒】江戸小紋訪問着 + 【紋屋井関】西陣織袋帯「瑞祥連珠鳳凰文」

金銀糸で渋くも豪華に織りなされた連珠鳳凰文の西陣織袋帯。

帯締めにも金銀リバーシブルの格調高いものをあわせ、帯揚げは紺と灰色のぼかしのものをセレクト。コーディネートがきりっと引き締まった印象です。

2本目の帯を合わせる

「こちらは重厚な雰囲気で格式高い帯。パーティーにもぴったりです」と、コバヤシさん。

Mさんも、「かっこいいだけじゃなくて、きちんとフォーマル感がありますね!」と納得のご様子。

さて、4つのコーデを比較し終えたMさん。

「どれも素敵だけど…これにします!」

そう言って指差したのは、2つ目のコーディネート。

「絶対に自分では選ばないコーディネートだけど、松の帯に惹かれました。総柄が好きなので1つ目と迷いましたが、こちらを着てみたい気持ちが勝ちました!」

創作友禅訪問着「銀霞」 + 綴れ織袋帯「松彩」

さて、どんなふうに変身されるのでしょうか?

ヘアメイクで着物とのバランスを

今回も着付けとヘアメイクを担当するのは、きものとのコラム「きもの、着てみませんか?」を連載中の薬真寺香さん。

メイクをする薬真寺さん

「Mさんに実際にお会いして、短めの前髪がかわいい!と思いました。これを活かしつつ、ツーブロックの個性的なヘアを、エレガントな着物に合う”耳隠し風アレンジ”にしてみました

と薬真寺さん。メイクのポイントも尋ねると…

「着物の印象的なグリーンを引き立たせ、スタイリッシュな雰囲気も出せる、ピンクがかったパープルのアイシャドウを使ったのがポイントです。”フォーマルな着物を自分らしく着るための工夫”を散りばめたスタイルです」

着付けをする薬真寺さん

着付けはきっちり、正統派で。

着付け中もおしゃべりに花が咲き、笑顔がこぼれます。

さて、メイクと着付けを終えたMさんが…こちら!

ヘアメイクと着付けを終えたNさん

海に見立てた着物の柄と力強い松の帯の組み合わせが、1枚の絵のようなストーリーを感じさせる通な装いです。

濃い紫の帯締めがキリリとコーディネートを引き締め、ちらりとのぞく金のあしらいがアクセントに。帯揚げの白でフォーマル感がプラスされ、お顔を白く引き立てています。

着物のグリーンと、アイシャドウやリップ・チークのピンクが引き立て合って、明るくフレッシュな雰囲気があります。

ビフォーアフター拝見

あらためて、今回のビフォーアフターを拝見してみましょう。

ビフォー

Mさんビフォー正面

アフター

Mさんアフター全身

ビフォーとアフターで、全く違うタイプの2つのコーディネート。

優しい雰囲気のピンクの着物もお似合いですが、アフターではおしゃれで個性的な、よりMさんらしい装いとなりました。

趣味性の高い濃い地の着物でも、きちんとポイントを押さえたフォーマル感で、お子さまが主役のイベントにふさわしい、凛とした佇まいです。

入卒のお式でこんなお母さまが隣に立っていたら… 目を奪われてしまいそう!

「まさかこんなふうに仕上がるとは思っていなくて、とてもうれしいです。

撮影でも、髪型や着付け、ポージングを”ミリ単位”で調節していただいて感激でした!もう…ドキドキが止まりません!今後の買い物の参考にしたいです」

微笑むお二人

娘さんの成長とともに、たくさんのイベントが待つMさんの未来。そんな特別な日を、ご自身らしい装いで迎えられたら…

いつかアルバムを見返したときに、いっそうの喜びと思い出が蘇ってくるに違いありません。

撮影/湯澤藍
文章/都留詩織

薬真寺 香さん(本記事 着付け・ヘアメイク)のコラムもどうぞ!

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「きもの、着てみませんか?」

都留詩織さん(本記事 ライティング)のコラムもどうぞ!

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「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」

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