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是枝監督が現代に甦らせた名作 Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』〈前編〉

是枝監督が現代に甦らせた名作 Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』〈前編〉「きもの de シネマ」番外編

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いまなお早すぎたその死を悼む声が絶えない脚本家・向田邦子さんの名作『阿修羅のごとく』が、『舞妓さんちのまかないさん』を手掛けた是枝裕和監督の手によって新しく生まれ変わりました。令和だからこそ、Netflixだからこそ、実現した豪華キャスティングな四姉妹に注目です。

よみもの

きもの de シネマ

超豪華女優らによる新生『阿修羅のごとく』

これまで数々の女優たちが競演してきた、脚本家・向田邦子さんの名作『阿修羅のごとく』のNetflix版リメイクドラマが完成しました。

新たな命を吹き込んだのは、『舞妓さんちのまかないさん』に続きメガホンを取った是枝裕和監督。

是枝監督

よみもの

舞妓さんちのまかないさん

性格の異なる個性的な四姉妹を演じるのは、宮沢りえさん・尾野真千子さん・蒼井優さん・広瀬すずさんという、日本映画界になくてはならない演技派女優の4人。

逸早く解禁となったティザービジュアルを見るだけでも、その画力えぢからの強さに慄く面子です。

ティザービジュアル

向田邦子作品の代表格と名高い『阿修羅のごとく』は、1979(昭和54)年と1980(昭和55)年にNHK総合テレビ土曜ドラマ枠で放送された作品。

2003(平成15)年には、森田芳光監督が映画化し、テレビドラマで次女を演じた八千草薫さんが母親役で、同じく長女を演じた加藤治子さんがナレーションで出演したことでも話題を呼びました。

第27回日本アカデミー賞で最優秀監督賞・最優秀脚本賞・最優秀助演女優賞を受賞した同作で四姉妹を務めたのは、大竹しのぶさん・黒木瞳さん、深津絵里さん、深田恭子さんです。

その後、幾度も舞台化され、記憶に新しい2022(令和5)年版では、四姉妹を小泉今日子さん・小林聡美さん・安藤玉恵さん・夏帆さんが演じました。

それぞれの“阿修羅”があぶり出される物語

物語は、四姉妹の父親に愛人と子どもがいると判明するところから始まります。

母親を気遣いながら対処方法を話し合う四姉妹は、周囲の人たちを巻き込み、各々の秘め事や葛と向き合うことになっていきます。

場面カット

昭和を代表する家族劇の傑作が令和の時代にあっても色褪せないのは、いつの世でも変わらぬ軋轢と摩擦、衝突を包み込む愛情といった普遍的な家族の問題が横たわっているから。

幸せそうな四姉妹が突然直面する家族の不穏により、ときに激しく争い、ときに笑い合いながら、彼女たちはその身の内に“阿修羅”を抱えながら生きてゆく――人間の本質を突く上質なホームドラマです。

場面カット

四姉妹の父に國村隼さん、母に松坂慶子さん。次女の夫を本木雅弘さんが演じ、四女の交際相手には藤原季節さんが扮します。

そのほか、松田龍平さん、内野聖陽さん、夏川結衣さん、戸田菜穂さん、高畑淳子さん……といったキャストが名を連ね、四姉妹を支えます。

年老いた父親の愛人問題をきっかけに穏やかに見えていた日常が揺らいでいく様を、リアルな描写と美しい映像で描く令和版ホームドラマ。ぜひ、ご堪能あれ。

説得力ある世界観をつくり上げるアイテム

物語の舞台は、1979(昭和54)年の東京。インテリアや食事といった家の中の様子から街の風景まで、昭和後期の時代を感じさせるアイテムが数多く登場します。

場面カット

台所にある家電や調理器具、部屋に飾られた写真に、鏡台に並んでいる化粧品の一つひとつに、世界観が滲み出るのはご存じのとおり。ディテールまでつくり込まれたセットは、キャラクターたちが「そこで暮らしている」ことを物語る大事な要素です。

撮影セット

中でも、当時を知る人には懐かしく、現代の若者たちが新しく感じるような時代性もまた、本作の見どころのひとつ。

ティザービジュアルでは揃って着物姿を披露している四姉妹ですが、実は、劇中で着物を不断着として着用しているのは長女(宮沢りえ)のみ。四女(広瀬すず)に至っては、一度も着物に袖を通していません。

場面カット

言葉遣いや所作はもちろん、オシャレ(服装・ヘアメイク)は彼女たちの人となりを映し出す最たるツールです。

続く後編では、衣裳デザインの伊藤佐智子さんが教えてくださった四姉妹の衣裳についてお届けします。衣食住の「衣」に注目して、Netflix版『阿修羅のごとく』の魅力を掘り下げたいと思います。

伊藤佐智子さん

伊藤佐智子 Ito Sachiko

1972年、アトリエ伊藤佐智子を設立。オーダーメイド・システムによるファッションデザイン活動を通し、衣装デザインだけでなく商品開発から空間デザインに至るまで、ジャンルレスなコンセプチュアルワークを手掛ける。数々の映画制作に携わり、是枝裕和監督作品では『空気人形』(2009年)、『海街diary』(2015年)に参加。

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