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ラストシーンで活躍する辻が花は必見! 「きもの de シネマ」vol.58

ラストシーンで活躍する辻が花は必見! 「きもの de シネマ」vol.58

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。2025年最初にお届けする映画は、大泉洋主演の時代劇『室町無頼』です。

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寒中お見舞い申し上げます
ごきげんよう、椿屋です。

2025年の「きもの de シネマ」始めは、1月17日公開の『室町無頼』でございます。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

時は室町時代――応仁の乱、前夜。

京の都で無頼たちが仕掛けた天下を揺るがす大勝負にスポットを当てた『室町無頼』は、大泉洋さん演じる蓮田兵衛はすだひょうえの生き様を見どころとするアクションエンタテインメントです。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

歴史書にただ一度だけ名を留めた蓮田兵衛は、武士階級として初めて一揆を起こした人物。

己の腕と才覚だけで混沌の世を渡り歩く自由人であり、無用と思えば関所に火をかけ、役人も躊躇いなく斬り殺す無頼漢でもあります。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

周囲をひきつけ、どこか憎めない男の元にはクセの強いアウトローたちが続々と集結。

彼らは、勝率ゼロに等しい無謀な戦いへ挑むこととなるのです。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

彼に相対するのは、堤真一さん扮する骨皮道賢ほねかわどうけん

彼もまた実在の人物で、300人もの荒くれ者を抱え、幕府から京の治安維持と取り締まりを任される警護役の首領です。兵衛とは腐れ縁の悪友でもあり、目指すところは同じはずなのにやり方や立場の違いから対立することになります。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

メガホンを託されたのは、『22年目の告白―私が犯人です―』(2017年/ワーナー・ブラザーズ映画)や『あんのこと』(2024年/キノフィルムズ)でも知られる入江悠監督

WOWOWドラマ『ふたがしら』で時代劇に初挑戦した入江監督が、本作で時代劇映画の世界にも足を踏み入れました。

「室町時代というのは、これまでほとんど映像作品では描かれたことがありません。目指したのは、室町時代を描いた金字塔となるような映画。

武器の種類や戦い方、人数の規模など、これ以上のアクションはできない、狂気の沙汰だと思うほどふんだんに入れ込んでいます」

という入江監督の言葉通り、まるで”盛大なお祭り”のような映画に仕上がっています。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

着物スタイリスト・秋月洋子さんに聞く!衣裳の魅力

「きものと」読者に何よりも観ていただきたいのは、兵衛の恋人である高級遊女・芳王子ほおうじ(松本若菜)の衣裳です。

本作にて、メインとなる4名のキャラクターデザインを担った着物スタイリスト・秋月洋子さんに衣裳制作の裏話をお聞きしました。秋月さんは、「きものと」でも連載を執筆されています。

秋月洋子さんのコラムはこちら!

まなぶ

徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー

「彼女の衣裳は、日本古来の美を最も表現するものとされている、白・黒・赤というシンプルを極めた色遣いでまとめています。

白無地を重ねていくため、人工的で硬い真っ白ではなくわずかに黄みがかったナチュラルな絹の色を意識し、強い光沢ではなく柔らかい風合いの縮緬を用いるなど、生地の素材感や差し色の赤のニュアンスにもこだわりました」

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

「お風呂で道賢と対峙するシーンでは、胡座をかくなど、なかなか豪快な立ち回りでしたので(設定としては、裸に白麻を巻き付けただけということになっていたこともあり)ちょっとハラハラしました。芳王子のキャラであれば、そんなこと気にしなさそうですけど(笑)」

とくにラストシーンで彼女が着ている印象的な辻が花は、実は京都きもの市場から手配されたもの。

2022.11.19

まなぶ

辻が花とは?幻と称される染め物の由来や特徴を解説

「辻が花文様は、絞りで柄を表した上に墨で柄が描かれたもの。友禅染めのくっきりとした柄の雰囲気に比べて柄の輪郭が緩くほっこりとした立体感があるため、全体の着姿も柔らかく素朴な印象になります。

試写を拝見して、ラストの晴れやかな芳王子の笑顔にその素朴さのある穏やかな雰囲気がぴったりだったので嬉しかったです」

『室町無頼』の衣裳といえば、先日、MOVIX京都にて期間限定の展示が行われておりました。

『室町無頼』の衣裳

撮影:椿屋 ※現在展示期間は終了しています

至近距離でまじまじと拝見し、どちらの衣裳も見事にキャラクターを見事に表現していることにしみじみと感じ入った次第です。

とくに兵衛の飄々とした風来坊さを具現化した短めの着物&股引という身軽なスタイルは、秋月さんが「不穏な世情の大きなうねりの中心にいる男、という意味を込めた」という、絞りで表された大胆な渦のような柄と無地の片身変わりの着物が印象的でした。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

「首に巻いた布は、風をはらむ動きが、兵衛の常識にとらわれず自由でフレキシブルな精神を象徴するイメージ。

きっと立ち寄った村で、どこかのおかみさんが縫い合わせてくれたんじゃないかな?という感じで適当に組み合わせた雑な形状で縫ってあったり、外で寝るときは身体に巻きつけて暖を取ったりするだろうからかなり大きめなものをラフに巻いていたり。兵衛らしさが感じられるアイテムになったのではないかと思います」

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

本作における衣裳の役割についてお聞きすると――

「監督が明確な映像の世界観を持っていらっしゃったので、その中で“違和感なく鮮やかに”その人が立っていること。それが大切だなと。自然にすっと視線が吸い寄せられるような……でも悪目立ちするのではなく、ほのかな光を宿してそこに存在しているような、そんなイメージです。

劇中には具体的なエピソードとして出てこないけれど、そのキャラクターを形作る上で大切な性格や過去の経験などを織り込み、それを説明的にならずに物語るのが衣裳だと思うので、久々にデザイン画(と言えるほどのクオリティではないけれど)も大量に描いたりして楽しかったです」

とのこと。

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

© 2016 垣根涼介/新潮社 ©2025「室町無頼」製作委員会

最後に、時代劇の衣裳を担当される際に心掛けていることを教えていただきました。

「その時代や登場人物の立場に沿った、なるべく史実(と、現時点でされていること)に忠実に。掛け離れ過ぎないように気をつけながら、でもそのキャラクターの性格なども考え合わせて、意外とこんな人もいたのでは……となんとなく“腑に落ちる”というか、あってもおかしくないんじゃないかと自然と思える世界観を作れたら良いなと思っています。

この“あってもおかしくない”の感覚には、素材感はとても大事だと思うので、多少のファンタジーを入れ込むにしても、ポリエステルなど時代的な質感を出せないものは使わない、といった具合に、そこだけは外さないように気をつけています」

秋月さんが手掛けたメインとなる4名のキャラクターデザインに注目して、『室町無頼』を愉しんでください。

秋月洋子さんのコラムはこちら!

まなぶ

徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー

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