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睦月、新年を寿ぐ花の役割 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.5

睦月、新年を寿ぐ花の役割 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.5

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1919(大正8)年に創流した未生流笹岡。3歳からいけばなを始めた生粋の華道家である三代目家元笹岡隆甫さんに“華やぎあるくらし”について学ぶ連載5回目です。新春にふさわしい花で新たな年を迎えるためのヒントをお届けします。

2024.12.11

まなぶ

師走、花から学ぶ柔軟な対応力 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.4

おめでたい花で新たな春を迎える

新たな年を迎えたばかりの今回、ご紹介するのは正月の風情がただよう作品です。

床の間に日の出の軸を掛け、祖父・勲甫氏が集めた花器の中から金属っぽく見える焼き物の変形花器を選び、いけ上げられた新年を寿ぐ花。

作品カット

「新春にふさわしい椿を大きく花器から飛び出すようにいけ、右下には難を転じる南天、枝の足元にはおめでたい花の代表格でもある蘭を忍ばせました」

こちらの作品は、2015年のもの。10年前の自身の作品を見て、どんなふうに感じるのか訊いてみると――

「またいけてみたいと思わせる作品です。いけばなは、花との出合い。同じ枝は二度と手に入りません。主材の椿は、枝や葉を落として本来もっている枝ぶりを強調しています。この椿とは、すごく嬉しい出会いでした」

ふだんはあまり花を飾る習慣がない家でも、正月だけは玄関や床の間などに花をいける人も少なくないのでは?

「昔は、1月1日に松、2日に竹、3日に梅をいけるのが良いといわれていて、いけ変えていました。いまはそこまでしませんが……

松竹梅はもちろん、お正月らしい花を何かひとつ飾るだけでも、新春らしい清々しい空気が生まれると思います

いけばなの美の基準は「1:√2」

花をいける家元

せっかくなので、スタンダードないけ方について教えてもらいましょう。

まずは花器を選びます

決めた器に対して、1.5~2倍の枝花をメインに据えます(その際、トップを分かりやすくするため余計な枝は払うのがおすすめです)。

そのメインの7割の長さで次の枝花そこからさらに7割

この白銀比「1:√2」が、いけばなでも美しさの基準となります。

一本目を中心に真っ直ぐ。二本目は左手前もしくは右手前に約30〜40度で傾けて、立体的な三角形をつくります。二本の枝先と水で三角形の空間をつくる手法は、いけばなの基本の一つです。

大切なのは、余白。

「フラワーアレンジメントが最高の瞬間=盛りを表現するのに対して、いけばなは『変わっていく時間経過を表すこと』を大事にします。

蕾が少しずつ綻んでいく、その移り変わりからいろんなことを知る……そこに、花との対話が生まれます」

作品カット

家元が常に意識しているのは、花の”顔”。

「何よりも、花の”顔”をどう見せるかを考えています。少し角度を変えるだけで異なった風情が生まれます。

例えば、奥行きのある立体的なカタチにするためワイヤーを入れて茎を曲げるといったテクニックも、実は江戸時代からある技術。意外と花が長持ちするんですよ。

いかに花が美しく在るようにするか――古くから、そのために技術を磨いてきたことが分かりますね」

家元からのちょっとしたアドバイス。

「頭が大きいと不安定になりますから、足元をどっしりと。器に近いところに大きな花を配置するとバランスが良くなります。その際、水に浸かる葉は落としてください。思い切って枝を裁つのも大事です」

今月のお家元―睦月の華やぐ思い出

家元イメージカット

子どもの頃から、ベビーカステーラは前田。甘い香りに引き寄せられます。

前田のベビーカステーラの創業は1958年、店舗はなく露店のみで販売されています。八坂神社のをけら詣り、平安神宮への初詣、北野天満宮の初天神など、1月はいただく機会が多いのが嬉しい。

ベビーカステーラ
ベビーカステーラ
撮影:笹岡隆甫

週末は伏見稲荷大社や八坂神社に出店されていますし、毎月21日は東寺の弘法市、25日は北野天満宮の天神市でも買うことができます。

各神社の参道や市などで見かけたら、ぜひ一度食べてみてください。

笹岡隆甫

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