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霜月、主役ありきで華を演出 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.3

霜月、主役ありきで華を演出 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.3

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「笹岡流盛花」を基本とする未生流笹岡の当代家元・笹岡隆甫さんに、“華やぎあるくらし”のヒントを学ぶ第3回。今回は、ランコムをイメージした作品と「新師範代ご挨拶」行事から、花も人もサポートあればこそという姿勢について考えます。

2024.10.17

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枝ぶりで魅せる、配置の妙

11月分としてピックアップされたのは、2017年にパークハイアット東京にて開催されたヴァンサンカンのイベントでいけ上げられた「ランコム」をイメージした作品

11月の作品

花器は扇。シンプルな背景にマッチし、ツルバラが引き立つ印象的な器で、ツルバラがまるで扇子の柄のようにいけられている

「ランコムさんといえば、ブランドロゴにもなっているランコムローズがブランドの象徴でもあります。

ただ、フランスで育てられているランコムローズは海外に持ち出せない貴重な花で、使うことができません。それならば、と選んだのが華やかな大輪のツルバラでした」

通常、バラは輸送時の箱に納まりがいいように真っ直ぐに栽培されます。が、それでは面白味に欠けると考えた隆甫さんは、ひねくれた枝ぶりのツルバラを主役にしようと決めたのです。

「自然のままに伸びた(ひねくれた)枝ぶりは、華道家にとってはとても大事なもの。ただ、ツルバラは花が小さいものが多いので、今回はできるだけ大輪のものをとお願いしました。

白バックに艶やかなバラが咲き誇ることで、落ち着いた中にある華やかさを表現しています」

合わせたのは、ウメモドキの実。

「春秋に見頃を迎えるバラは、秋だと実も愉しめます。ですが、実際の実はまばらにつくため作品としては弱い。ですから、ウメモドキの実をバラの実に見立てました」

広がりのため、差し伸べる手

未生流笹岡には、毎年11月3日の文化の日に行われる行事があります。

それは、新しく師範代となる方々が家元に挨拶をし、門標(看板)と免状をいただく大切な儀式。今年、新たに師範代となるのは40~60代の7名。

バラと家元

「この日を境に、彼らはこれまで学んできた基本をベースに、自分自身の花を見つけていくことになります。

教えることで教わることもたくさんありますので、稽古場を持たなくても、家や職場でも広がりのある時間を持ってほしいと思います。

そのために、教え方を指南することはもちろんですが、花や人との出会いの場となるいけばな展のような機会をできるだけ多くつくることも、家元の役割だと考えています」

サポートも、家元にとっては大切な仕事だと隆甫さんは言います。それはまさに、主役であるツルバラに寄り添って、ツルバラの魅力を支えていたウメモドキの実のよう。

花も人も主役ばかりでは成り立たないからこそ、バランスを大切にしたいものです。

今月のお家元 ―霜月の華やぐ思い出

家元正面カット

先日訪れたのは、西陣にある「天若」さん。オープン当初からよく話題にのぼっていたお店にようやく伺えました。

幼い頃からお祖父さまの後を継ぐことを決めてらしたというご店主は、30代前半という若さでの挑戦です。

受け継がれた檜の一枚板カウンターをはじめ、名栗の扉や網代の天井など、木の存在感を身近に感じられる和食店です。

メインは、松茸のすき焼きです。

「天若」写真

撮影:笹岡隆甫

天若さんに伺った日、たまたま稽古場で、

「昔は裏山で松茸が取れたので、すき焼きを……という話はよく聞くけれど、いまではそんな贅沢はなかなかできないよね」

なんて話をしていたところだったので、うれしい驚きでした。

笹岡隆甫

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