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三者三様の信念がぶつかり合う圧巻の時代劇『十一人の賊軍』 「きもの de シネマ」vol.55

三者三様の信念がぶつかり合う圧巻の時代劇『十一人の賊軍』 「きもの de シネマ」vol.55

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。この秋注目の大作2本目は、山田孝之さんと仲野太賀さんがW主演を務める話題の時代劇『十一人の賊軍』です。

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2024.10.25

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“虚”と“実”が織り成す没入感『八犬伝』 「きもの de シネマ」vol.54

疾走感あふれるド迫力アクションシーンが満載

孝之か、太賀か。それが問題だ……

さて、みなさんはどちらがお好みですか?

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

クズい役どころなら山田派(例えば『唄う六人の女』)、好青年役であれば仲野さんに軍配を上げたい(前作の朝ドラは最高にかわいかった!)椿屋です。

ごきげんよう。

2023.10.27

よみもの

森に棲む女たちの魅惑 『唄う六人の女』 「きもの de シネマ」vol.35

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

戊辰戦争が勃発し、新政府派・官軍と旧幕府軍が日本を二分するなか、図らずも戦の鍵を握る新発田しばた藩が戦火を免れるために案じた策は「砦の護衛作戦」でした。

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

阿部サダヲさん演じる家老・溝口内匠の命で集められたのは、殺人・賭博・火附け・密航・姦通といった理由で収監されていた11人の罪人たち。

砦を守り切れば無罪放免という約束を信じ、圧倒的に不利な過酷ミッションに命懸けで挑みます。

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

山田孝之さんが演じるのは、妻を新発田藩士に襲われ、復讐のため罪人となった駕籠屋の政。故郷の妻に再び逢うため、どんなことをしても生きて帰ろうとする男です。

対する、仲野太賀さんが扮するのは旧幕府派の同盟軍として新政府軍と戦おうとしない新発田藩に不満を抱いている直心影流の使い手・鷲尾兵士郎で、砦を護衛する決死隊のリーダー的存在。

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

俄か仲間にさせられた決死隊には、前回取り上げた『八犬伝』にも出演中の尾上右近さんや、以前ご紹介した『仕掛人・藤枝梅安』で存在感のある役を務めた一ノ瀬颯さんの姿も。

2024.10.25

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2023.04.07

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さらには、実際にも僧侶である千原せいじさんが生臭坊主役で登場したり、東映剣会に所属している本山力さんが長州出身の剣術家として見事な殺陣を披露していたり。

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

ほかにもまだまだ魅力的な俳優陣が名を連ねる本作。決死隊や両軍のイケてるメンズが大暴れするエネルギッシュなアクションシーンは、見応え抜群です

職人たちの技術がつくり出す迫真性ある映像

『仁義なき戦い』を代表作とする名脚本家・笠原和夫氏が史実に着想を得た幻の物語は、脚本そのものが制作過程で破り捨てられ、遺されたのはプロットのみだったといいます。

それを甦らせたのは、『碁盤斬り』が記憶に新しい白石和彌監督。60年の時を経て、東映らしい集団抗争時代劇がスクリーンに帰ってきました。

2024.05.17

よみもの

白石和彌監督が手掛けた高純度な時代劇『碁盤斬り』 「きもの de シネマ」vol48

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

前作の『碁盤斬り』が“静”なら、本作は“動”。

まだ2作目とは思えない地に足のついたリアリティある時代劇を生み出す白石監督の手腕に、始終唸りっ放しでございました。

史実とフィクションを巧みに融合させたストーリー展開はもちろんのこと、本物さながらのオープンセットが担保する画の力、衣裳・メイク床山・特殊メイク・小道具チームの各部署が連携協力してつくり上げた造形(キャラクター)の説得力……

何もかもが、新たなる時代劇の可能性をひしひしと感じさせてくれます

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

なかでも衣裳は、

賊軍は「汗と埃」
新発田藩は「江戸時代」
官軍は「新しい文化」

という3つのテーマを設け、各人物のバックグラウンドが分かる装いが一からつくられました。

「ぶっ飛んだ衣裳、汚れても格好いい衣裳をつくってほしい」

という白石監督のオファーを色濃く表現している賊軍の衣裳は、個性的なのに違和感がないのがお見事です。

なかでも政(山田孝之)の衣裳は、

「重い、クサい、痒いの三拍子が揃っていて、こんなに愛着のわかない衣裳は初めてかもしれない(笑)」

と、山田さんに言わしめたほど。

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

衣裳だけでなく、政の背中に入っている龍が菩薩を守っている刺青のデザインについては、荒くれ者だった彼がさだ(長井恵里)と出会って改心し、真面目に働くようになったことを機に、夫婦の歩みを刺青というカタチで背中に刻んだという隠れた設定も!

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

物語が進むにつれて、ボロボロになっていく賊軍の衣裳。

加えて、体は傷だらけで血まみれとなるため、その傷口の再現も妥協なくつくり込まれています。
どんな刀で斬られたのか、もしくは刺されたのか。

切り傷、火傷、爆破の破片によってできた擦過傷など、負傷の原因や状況を考慮しながら生物学的に沿った傷口が表現されているのです。

ちなみに、髪形も11人の個性がかぶらず、各々が際立つよう工夫がなされています

また、スプリンクラーなどの機材に頼らず、人の手によって雨に表情を出す日本映画特有の雨降らしの場面の臨場感や、自然の風を読みながら生み出されるさまざまなスモークがもたらす緊迫感といった操演部の技あってこそのシーンも、見どころのひとつと言えるでしょう。

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

©2024「十一人の賊軍」製作委員会

信念を胸に自由を勝ち取ろうとする戦いの結末を、どうぞ劇場で見届けてくださいませ。

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