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京を象徴するかのような女店主の着姿『本を綴る』 「きもの de シネマ」vol.53

京を象徴するかのような女店主の着姿『本を綴る』 「きもの de シネマ」vol.53

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。読書の秋に相応しい『本を綴る』は、“本の居場所”となるまちの書店や図書館へのエールが詰まった作品です。

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実在の本屋をめぐるロードムービー

ごきげんよう。
秋に限らず年中読書中毒な椿屋です。

今回ご紹介する篠原哲雄監督最新作『本を綴る』は、本好き・旅好きにはたまらない本屋めぐりのロードムービーです。

本作には元になるYouTubeドラマが存在します。その名も、『本を贈る』。

各話約10分のショートストーリーで、全9話。まずはこちらをご覧になってみてください。

ドラマは東京の“まちの本屋さん”にクローズアップしていますが、続編となる本作には那須塩原・京都・香川の書店や図書館が登場します。

©ストラーユ

©ストラーユ

とくに、京都のメインとなるのが「恵文社一条寺店」。京都に限らず、全国に多くのファンをもつ有名書店です。

©ストラーユ

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ただのロケ地としてではなく、恵文社は恵文社として物語の一要素を担います。

店主・小笠原功二に扮するのは長谷川朝晴さん。主人公の大学時代の友人でライバルという役どころです。

©ストラーユ

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矢柴俊博さん演じる主人公・一ノ関哲弘は、物語が書けなくなってしまった小説家。全国の本屋をめぐりながら本の書評や本屋のコラムを書いて生活しています。

那須塩原の図書館で出会った司書と小さな森の本屋を訪れ、そこから何かに導かれるかのように京都、香川と旅するなかで、彼は自らが書けなくなった原因と向き合っていくのです。

©ストラーユ

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京都パートでは、先述の「恵文社一条寺店」に加えて、西陣の古民家をリノベーションした古書店「開風社 待賢ブックセンター」や西陣織の老舗「渡文」、錦市場、蹴上インクライン、寺町商店街などが出てきます。

京さんぽがお好きな方は、どこのシーンに使われているか探しながらご覧になるのも愉しいと思います。

和でも洋でも“その人らしい”衣裳を

京都といえば――、おばんざい。

というわけで、一ノ関が小笠原と共に訪れるのが、「京の台所」たる錦市場に店を構えるおばんざい屋「花」です。

店を切り盛りするのは、朝比奈花を演じる遠藤久美子さん。

©ストラーユ

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彼女がお召しになっている着物コーデについて、着物担当であり本作の脚本・プロデュース・キャスティングも手掛けた千勝一凛さんにお話をお伺いしました。

――花の衣裳について、セレクト理由を教えてください。

「遠藤久美子さん演じる朝比奈花は、婚約者を事故で亡くした過去があり、祖母の後を継いで、おばんざい屋さんでお客さんを笑顔にする素敵な女性です。

柔らかな中にも凛とした印象を与えたくて、お店の雰囲気と遠藤さんのお顔立ちに合わせて、数点ある中から淡い色合いの麻の葉柄の着物と渋みのある赤い帯を選びました」

――コーディネートのポイントをお聞かせください。

「華やかさと大人の可愛らしさ、でしょうか。帯の色合いで締めて、帯揚げと帯締めは渋くなりすぎないように。小物は、私の自前です」

©ストラーユ

©ストラーユ

ゆったりとした話し方、耳に心地よい声。花の佇まいは、まさに“はんなり”な京仕様です。

そんな彼女の雰囲気は洋服でも変わらず、白のトップスにロングスカートを合わせた装いでも着物同様に赤が差し色になっていたり、「花」という名前にリンクする花柄だったり。和と洋の相違点を見つけながら観るのも面白いのでは?

――着付けを担当される際に心掛けていることはありますか?

「初めてやふだん着物を着慣れてない方に着付けをするときは、とくに着物=苦しいにならないように腰紐を良きポジションで、ほどよく結びます。

着崩れせず、安心して過ごせるように、一人ひとりの体型に合わせて補正し、帯の位置や衿抜き、衿合わせのバランスを考えます。着付け中は肌の近くに触れるので、信頼の構築やリラックスできる環境づくりが大切です。

撮影における着付けは長時間になることもあるため、苦しくならないようにゆったりめを意識します。衿合わせとおはしょりはピシッと。後ろ姿の撮影もあるときは、映る角度に合わせて帯の垂れなどを本番前に整えます。何よりも現場に居ることで安心感と信頼感をもっていただけるように心掛けています」

©ストラーユ

©ストラーユ

ちなみに、香川パートではYouTubeドラマの主要人物である女優・岩佐美玖(米野真織)が浴衣姿で登場します。彼女の着こなしもどうぞお見逃しなく。

椿屋撮影

最後に……わたくしごとですが、本作を拝見する少し前にたまたま、作中に登場する香川県観音寺市にある「豊稔池堰堤」というヨーロッパの古城を思わせる風格あるダムを見てきたところでした。

自身が訪れた場所が大スクリーンに現れると妙にテンションが上がります。

やっぱり、旅は良きものです。

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