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能楽のいろは ~女流能楽師・田中春奈さんに聞く~ 「気になるお能」vol.1

能楽のいろは ~女流能楽師・田中春奈さんに聞く~ 「気になるお能」vol.1

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無表情な面、聞き取れない言葉、古い価値観——能楽へのハードルは高く感じてしまいがち。室町時代から受け継がれてきた日本を代表する舞台芸術への扉を、一緒に開いてみませんか? まずは入門編。女流能楽師として活躍する田中春奈さんに、能楽を愉しむ「いろは」を教えてもらいましょう。

2023.04.21

よみもの

孤独に寄り添い心静める能の力『ヴィレッジ』 「きもの de シネマ」vol.28

基本中の基本!「能楽」ってなに?

「能」と「狂言」を合わせて「能楽」。

室町時代から途絶えることなく演じられてきた能楽は、豊臣秀吉や徳川家康といった武将たちにも愛されました。2008年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、海外からも高く評価されています。

能舞台

「能」は、舞と台詞や歌パートの謡い(うたい)と、楽器パートの囃子(はやし)に合わせて演じられる歌舞劇。

最も特徴的なのは、多くの曲で演者が能面という仮面をつけていることです。登場人物は人間だけではなく、神、鬼、妖怪、亡霊・精霊など“この世のものではないもの”も登場します。

「お能も現代劇と同じように観て楽しむもの。マナーも基本的な舞台芸術と同じなので、難しく考えなくて大丈夫です」

と教えてくれるのは、金剛流能楽師として活動している田中春奈さん。

春奈流「お能のおもしろさ」って何?

そもそも「能」とは?と問えば……

「日本の伝統芸能。海外で紹介するときは、文楽がパペットでお能はマスク(仮面)劇だと説明しています」

と春奈さん。

なるほど、分かりやすい!海外留学中にふれた能に魅せられ、帰国後、師となる故・宇高通成氏の門戸を叩いた彼女にとって、海外に向けて能楽の魅力を発信する機会も少なくありません。

では、その「能」の面白さとはどこにあるのでしょう。

春奈さん

日本の美しさのすべてが詰まっている、と言えます」

その言葉は力強く、確信に満ちていました。

「お能は、一期一会のセッション性が何よりの魅力。難しい、よく分からないという声も聞きますが、それはお能が見る側の想像力を必要とする演劇だから。

ただぼんやりと眺めるのではなく、自らの経験、これまで見てきた風景、感じた想いなどをフルに使って、能動的に観る。つまり、観る人によっていくつもの答えがあるということ。それだけ自由度が高いのも、お能ならではだと思います。

私たち演者はいつでも、みなさんの想像力を掻き立てるために研鑽を重ねているんです」

チャレンジ!百聞は一見に如かず

「習うより慣れろ」という言葉もあるように、まずはその場に身を置いてなにかしらを感じ取ることが、その世界を知る第一歩になることがあります。

能楽も同じではないでしょうか。あまり難しく考えず、居眠りしたっていいくらいの気持ちで、ひとまず実際に観てみましょう。

その際に、少しだけ心がけておきたいことを春奈さんにお聞きしました。

能舞台の前で春奈さん

➀観る前にあらすじを読んでおく

「使う言葉が古語なので、何を言っているのか分からないと楽しめないですよね。言葉や動きに慣れるためにも、どんなお話なのかはあらかじめ知っておく方が、舞台世界にスムーズに入れます

②ドレスコードを意識する

「ストレートプレイやミュージカルというよりは、オペラを観にいく感じかな? いつもより少しフォーマルな装いがいいかと思います

お出かけにオシャレするとテンション上がりませんか? そんなふうに行く前から愉しんでもらえたら。

もともとは格の高い着物でとも言われておりましたが、今はそこまでではないと感じます。お着物で行くだけで素敵です。でも、浴衣だとちょっと気になる方もいらっしゃるかもしれません。

フレンチのレストランに短パン+ビーチサンダルで行かないのと同じ感覚で考えていただけたら。その場や相手に失礼のないように、という礼儀を尽くす心があればOKです!」

春奈さん

➂音を出すのはNG

「どの劇場でもそうですが、特に能では大きな音で盛り上がるシーンと同じくらい、静かなシーンも多いです。その際、間や無音も表現のひとつですから、些細な音でも演出の妨げになったり、他のお客様の没入感を妨げてしまう原因にもなりかねません。

直に反応することはとても素晴らしいですが、静かに、舞台と一体となる悦びも感じていただければうれしいです」

撮影協力/金剛能楽堂
撮影/スタジオヒサフジ

公演情報

京都薪能 「ポスター画像

第72回 京都薪能 「安寧を願い巡る京都の九寺社」

会場:平安神宮特設能舞台
※雨天の場合はロームシアター京都メインホール

日時:2023年6月1日(木)~ 6月2日(金)
両日18:00開演

若鯱研究発表会 若鯱能ポスター画像

若鯱研究発表会 若鯱能

会場:名古屋能楽堂

日時:2023年6月4日(日)12:30開演(12:00開場)

「若鯱能〜若鯱研究発表会〜」は、東海地区を拠点に修業・活動する各流派の若手楽師による能楽を、無料で観られる絶好の機会。

今回ご登場いただいた田中春奈さんも「羽衣」シテ方として出演されます。

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