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主演・豊川悦司さん&河毛俊作監督インタビュー! 『仕掛人・藤枝梅安』『仕掛人・藤枝梅安2』 「きもの de シネマ」番外編

主演・豊川悦司さん&河毛俊作監督インタビュー! 『仕掛人・藤枝梅安』『仕掛人・藤枝梅安2』 「きもの de シネマ」番外編

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、『仕掛人・藤枝梅安』公開2日目に京都で行われた舞台挨拶と、その後のインタビュー内容をお届けする豪華・番外編です!

撮影のまち「京都」がもつポテンシャルとは

ごきげんよう、椿屋です。
古くから「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」と申しますが、気がつけば天神さん(北野天満宮)の梅花祭も終わり、桃の香が漂う季節となってまいりました。

前回、うっとり眺めたい色男代表として豊川悦司さんと片岡愛之助さんに注目し、新時代劇『仕掛人・藤枝梅安』をご紹介したご縁にて、わたくし、舞台挨拶を拝見する機会を頂戴したのです。

2023.02.03

よみもの

清濁併せ呑む人間の業を知る『仕掛人・藤枝梅安』 「きもの de シネマ」vol.25

『仕掛人・藤枝梅安』舞台挨拶

しかも、挨拶後に「きものと」独占インタビューとして、主演である豊川悦司さんと監督の河毛俊作さんに直接お話をお聞きすることが叶いました!

舞台挨拶の様子をお届けする前に、ざっと本作についての情報をおさらいしておきましょう。

現在公開中の『仕掛人・藤枝梅安』と4月7日に公開となる第二作『仕掛人・藤枝梅安2』は、時代小説の大家・池波正太郎生誕100年企画として製作された“新しい時代劇”

配給宣伝:イオンエンターテイメント

配給:イオンエンターテイメント

鍼医者でありながら仕掛人というウラの顔を持つ藤枝梅安役を豊川悦司さんが務め、楊枝職人である一方で同じ仕掛人でもある相棒・彦次郎役を片岡愛之助さんが演じるほか、菅野美穂さん、高畑淳子さん、小林薫さんといった安定のレギュラー陣に加えて、第一作では早乙女太一さん、柳葉敏郎さん、天海祐希さん、続く第二作では一ノ瀬颯さん、椎名桔平さん、佐藤浩市さんといった豪華ゲストが華を添えます。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

高畑敦子さん

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

2月4日、MOVIX京都で行われた舞台挨拶に登壇されたのは、河毛監督と豊川さん、そして天海祐希さん扮する料理屋「万七」の内儀おみのの夫・善四郎役の田山涼成さん

ちょうど昨年の今頃、本作は3ヵ月かけて京都にて撮影されました。

「京都で時代劇をつくるということの贅沢さを感じました。この作品のもうひとりの大きな登場人物が、京都という町ではなかったかなと思っています」

と、当時を振り返る豊川さん。

主演である豊川悦司さん

着物での撮影について、豊川さん曰く、

「所作については、先生だけでなく撮影所の一人ひとりが高いスキルを持っていらっしゃるので、どなたに問いかけても必ず答えが返ってくる環境でした。それは、京都の素晴らしさだと思います」

続いて監督の、

「京都の時代劇は、世界に誇れる日本の文化です。もっともっとつくられるべきですし、世界に通用するコンテンツとしてますます成長させていけます。『仕掛人・藤枝梅安』がその先駆けとなる作品になれたらと切に願っています」

というお言葉をもって、舞台挨拶はつつがなく幕を閉じました。

“豊川梅安”だからこそ描き出されたリアル

本作の撮影にあたって豊川さんと河毛監督が共通して意識されたのは、「原作に立ち返る」という姿勢

これまでの数々の実写作品が描いてきた梅安からヒントやインスピレーションを受けつつも、池波先生が創作された原作のなかに“新たな答え”を探されたといいます。

主演である豊川悦司さんと監督の河毛俊作

時代劇は美しくあるべき、と監督は断言されます。

「(梅安は)身体が大きいというのが絶対条件でした。鍼で人を殺すということで、相手が眠っていたり気絶しているのであれば話は別ですが、通常は格闘になりますよね。とても間合いの近い接近戦にならざるを得ない。そういうとき、身体が大きくないと相手を組み伏せたり、動きを封じたりすることが難しいであろうという考えから、池波先生の原作でも体格のいいキャラクターになったのでしょう。

さらに梅安は“海坊主のような大男”とも書かれているくらい、どこかちょっとモンスターっぽいところがある。それでいて、ただのモンスターではなく、男女共に好かれる色気もあって。それらが、具体化されるわけですから、動きの美しさも必要です。鍼を持つ大きな手もそうです。

僕は、時代劇は絶対に美しくないといけないと思うんです。それは、雅やかな源氏物語や格調高い武家物が良いということではなく、庶民(町民)の話だからこそ美しくなければいけない。そう考えたときに、この役が務まる人は豊川さんしかいないな、と」

というのが、豊川さんへのオファー理由。

舞台挨拶で、仕掛けのため標的の寝室へと忍び込む豊川さんの様子を「黒豹が這っていくような美しさ」と表現された監督の言葉が、“豊川梅安”への手応えが確かなものだと物語っていました。

主演である豊川悦司さん

とくに『仕掛人・藤枝梅安』冒頭の仕掛けシーンは、原作から飛び出してきたような梅安の姿が見られる名場面。褌(ふんどし)一丁の後ろ姿で、来し方を語る圧倒的な美しさがありました。最初から最後まで、そこに梅安が生きていると思わせる説得力に満ちているのです。至極自然な存在感による画の力強さこそ、本作の最大の見どころかもしれません。

「クランクインの2週間ほど前から着物で過ごすようにしていました。所作はなかなかすぐに身につくものではないですが、着物の場合も着ている/着ていないが一発でバレてしまう。だから、せめて着ていれば……という思いから、時代劇をやるときは必ず家でも着るようにしています」

その言葉に、役づくりの前段階の心構えや準備があの“こなれ感”を生み出しているのかと、納得しきり。衣装の宮本まさ江さんが、池波先生が描かれた梅安の姿をイメージして選ばれた黄八丈のバリエーションも、大変お似合いでした。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

温故知新でつくり上げる“NEW”時代劇

池波作品の魅力といえば、食事の場面も忘れてはいけません。

食べることが大好きな河毛監督は、「若い頃に読んだ池波作品が“舌のベース”になっている」とおっしゃいます。

「池波先生はいわゆるグルメではないんです。谷崎(潤一郎)先生のような美食家ではなく、江戸の名残りある戦前の料理に愛着をお持ちになっていた。だから、作中でも凝った料理ではなくごく一般的な料理を再現したいと思っていました」

梅安がかきこむ卵かけごはん、梅安の身の周りの世話をするおせき(高畑淳子)が拵える日々のお惣菜、彦次郎(片岡愛之助)の男料理——

シンプルだからこそ旨み際立つ食事の数々に、スタッフの心意気を見た豊川さん。

「芝居に登場する料理ですから箸をつけないこともあるわけですし、極端に言えば、椀の蓋を開けないものもあります。それでも中身はきちんとつくられていて、匂いは立ち昇る。そこに、料理監修の方や、スタッフの方たちの矜持と映画への愛を感じました」

豊川悦司さん&河毛俊作監督

映画づくりを支えるスタッフの方々へのリスペクトにあふれるおふたりに、「新たな時代劇とは何か?」と問うてみたところ……

「“新しい”時代劇は、型無しではいけない。真にアバンギャルドなものしかクラシックにはならないからこそ、先輩たちが積み上げてきたものを固定化せず、その上に何を乗せられるか、ですよね。誤解を招く言い方かもしれませんが、古典芸能にしすぎないことが大事かなと。

僕は普通の時代劇がやりかったんです。それには、武家物じゃない梅安は好都合な題材。武家物には曲げられないしきたりもありますし、いまの人には理解し難い忠義の概念もある。しかし、(梅安は)町人ものですから。しかも、町人ものでアクション物というのはなかなかない。加えて、梅安は権力側の人間ではなく、アンチヒーローですよね。だからこそ、自由な発想を盛り込みやすい素材でした」

と、河毛監督。

監督の河毛俊作

対して、

“新しい”時代劇に求められるのは、つくり手がまず自分の持っている時代劇のイメージをリセットすることではないでしょうか。“時代劇”という呼び方自体がもはや古臭いものなのかもしれません……。ここ100年ほどでつくられてきた時代劇の雛型みたいなものに囚われずにつくることが大事だと思います」

という豊川さんのお答え。

おふたりから「きものと」読者へメッセージ

河毛監督:着物で歌舞伎や演劇に行くことはあると思いますが、着物で映画を観るのもいいですね。

豊川さん:(着物を着ていくと)割引になるというのが、あるといいですよね(笑)。

豊川悦司さん

河毛監督:現代は生活の諸々が洋服のサイズでつくられていて、そういった意味では着物の難しさはあると思いますが、祖母の時代を振り返れば、あの頃の人たちはなんでも着物でやっていたんですよね。ハレの着物だけではなく、ジージャンとジーパンで行くみたいなかんじで、カジュアルな装いを愉しんでいる女性を見ると、素敵だなと思いますね。

豊川悦司さん&河毛俊作監督

豊川さん:子どもが小さいので、意外と着物にふれる機会が多いです。鎌倉という土地柄もあるのか、七五三や卒園式や入学式などでお着物を着ていらっしゃるママさんたちをよくお見かけします。

豊川さん:僕自身は、映画『丹下左膳 百万両の壺』(2004年)の撮影時にプレゼントしていただいた着物を大事にしていて、何かあるときには着るようにしています。

いまは手頃なレンタルもありますし、ふれるという意味では昔より簡単になったと思うので、機会を見つけてお召しになるのもいいと思います。

インタビューカット

舞台挨拶、インタビュー撮影/スタジオヒサフジ

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