着物・和・京都に関する情報ならきものと

ミモザの帯の季節がやってきた! 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.14

ミモザの帯の季節がやってきた! 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.14

記事を共有する

春直前、どうしようもなくワクワクする気持ちを、季節を先取る染め帯に託して。型絵染め・岩井香楠子先生の帯との運命的な再会を果たした古谷さん。再び「香南染工房」を訪ねます。

2023.01.28

よみもの

どうする羽裏?秘めたこだわりは自ずと伝わる!「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.13

かれこれ20年経っても消えなかったキラキラの記憶

型絵染め・岩井香楠子(かなこ)先生のミモザの帯を最初に見たのは、たぶん18年前のこと。

黄色いミモザが春の陽の光線とシンクロするようにキラキラと眩しく輝く作品でした。

ミモザの帯

親しい友人の家にミモザの木があって、花が咲くころに立ち寄ると大きな黄色い花束を持たせてくれた優しい記憶と相まって、春の染め帯にはミモザを選ぼう!と思ったことを覚えています。

その時はご縁に至らずだったのですが、去年ふたたび出会ってしまったの!

ミモザの帯に。

ああ、もうこれは私のために生まれたに違いない。運命だ!

新感覚の江戸小紋と合わせたい!

去年は薄い銀鼠色の石下結城とコーディネート。今年は新しく手に入れた新感覚の江戸小紋と合わせたい!

岩井香楠子さんの香南染工房へ

岩井香楠子先生

出版社の編集者時代からたびたびお世話になっている岩井先生の工房は、横浜の丘の上にあり、さまざまな植物が植えられた広い庭のあるご自宅とも目と鼻の先。

芸術家のご両親の元で育まれた感性で東京藝術大学に入学するも、当時の教授 平山郁夫氏に、「デッサンは最低、君たちは色感で合格した」と言われた新入生のひとりだったそう。

カラーチップ

色味別にビンに入れられた、染めた布の端切れのカラーチップ

『デッサンは上達の道があるが、色彩感覚は練習で培われるものではない、親に感謝しなさい』とよく言われたの。だからいま弟子たちにも、スケッチしなさい、デッサンは大事、と伝えてます」

そんな岩井先生だけあって制作の発想はなんと「色から」で、まず色のイメージが湧いてきてその色に合うモチーフを決めてデザインするのだそう。

大切なツール

カラーチップは岩井さんの頭の中にある色を伝えるための大切なツール

同じ型を使っても同じようなものにならないのはそういうことか。18年前に見たミモザの帯はもっと黄色なイメージだったかも…

スケッチすることで見えてくるカタチ

暇さえあれば庭でスケッチするという先生のスケッチ帳を見せていただくと、あっ私の帯のミモザ!スケッチの段階からかわいい~

ミモザの帯のスケッチ

「ミモザって普通、稲穂みたいでこんなふうに丸くないでしょ?これはね、上からみたミモザ。育ててないと分からないアングルよね。それと、蝶でなく蜂を飛ばして、平凡じゃなくしたかった」

蜂がいるの、わかりますか?

小さな蜂がいるの、わかりますか?

色とモチーフが決まるとデザイン画を描いて、必要な型を彫ります。その型紙を使って型糊で型付けし、糊のない部分には刷毛で色を挿していきます。最後に糊を洗い落すと糊の部分が白く残るわけです。

根気のいる作業。

根気のいる作業

刷毛のような筆

小さな刷毛のような筆を用いて

私のミモザ帯には3枚の型紙が使われていて、すべて工房内で彫られたもの。

3枚の型紙

型紙を使って絵を描いていくような感じは、かえって複雑なのかも?と思ってしまいます。地に絞りを入れる場合は、型で染める前に絞りの工程が入ります。

ミモザの帯

作品と型を合わせてみると、当たり前だけどぴったり

旅先にインスピレーションあり

岩井先生の創作の糧は旅行。

岩井先生の創作の糧は旅行

伝統工芸展で入選された『アンダルシアのうた』『イスタンブールの庭』『さがり花香る』といった作品は、旅先で得たインスピレーションによるもの。

私の帯も、第66回伝統工芸展で日本工芸会奨励賞を受賞した『春のはじまり』というミモザのきものと同じシリーズなのです(ちょっと自慢)。

工房では、ちょうど西表島の海とさがり花のシリーズを制作中でした。西表島好きの私、またもや次の目標ができてしまいました。

西表島のさがり花と沖縄の海を帯に

初夏の一ヵ月ほどしか見られない西表島のさがり花と、エメラルド色の沖縄の海を帯に

香南染工房の若き担い手たち

香南染工房

大きな水槽もあり、蒸しもできる充実した設備の香南染工房から巣立った作家さんは多く、現在は本間千香子さんと山﨑純子さんが在籍。

春に後輩も入るそうです。

大きな水槽もあります。

工房の教えは「自然からデザインを学ぶ」こと

生きている植物、風が吹く風景、潮のかおり――

肌で感じることで生き生きとしたデザインが生まれる、と岩井先生は言います。

型絵染に絞り染めを取り入れた岩井先生独特の技法は本間さんと山﨑さんにも受け継がれつつ、それぞれがそれぞれの世界観をもった制作を続けています。

本間千香子さん

本間千香子さん

本間さんはヨーロッパ調の可憐な作風で、型絵染の洋服も人気。

ヨーロッパ調の可憐な作風
山崎純子さん

山崎純子さん

山﨑純子さんは動物や植物柄で、エスニックな感覚も魅力。

動物や植物柄でエスニックな感覚

実は2月15日~21日まで、丸善日本橋3階にて、田澤実枝子さんと大西海さんを加えた4人の作品展『あさひが丘の春の風vol.2 ~ 香南染工房展』が開催されます。

ぜひご覧くださいね。

ありがとうございました!

追い込み制作中にお邪魔してすみません、ありがとうございました!

撮影/五十川満

案内
案内

丸善 日本橋店 3階特設会場

「あさひが丘の春の風vol.2 〜香南染工房展
2023年2月15日(水)〜21日(火)
営業時間 9:30~20:30(最終日は15時閉場)

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS注目のキーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する