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京藍染師 松﨑陸さん【YouTube連動・インタビュー編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.11

京藍染師 松﨑陸さん【YouTube連動・インタビュー編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.11

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京都西山の大原野地区に、自身の工房を建設している京藍染師の松﨑陸さん。20代前半に出会い、一気に引き込まれていったという京藍の魅力に迫ります。藍のきものを抜群の配色センスで着こなした紗月さんのオフショットもお届け。

京藍の魅力を発信する若き職人【Youtubeリンク】

松﨑陸さんが手がけた京藍のタペストリーと紗月さん

794年から約1000年に渡り、日本の都として栄えた京都。その間に育まれた独自の文化や伝統は、今も耐えることなく街の中に息づいています。そこには、いつの時代も“伝統文化の担い手”として切磋琢磨してきた人々の姿がありました。

2015年から2021年まで祇園甲部の人気芸妓として活躍した紗月さんがMCを務め、代々家業を受け継ぎ、また次の世代に引き継ぐべく奮闘されている方々に“老舗を守りつなぐお話”を伺います。

京都・大原野にあるシェアスタジオ「OHARANO STUDIO」

京都・大原野にあるシェアスタジオ『OHARANO STUDIO』

今回、紗月さんが訪れたのは、のどかな田園風景が広がる京都西山の大原野(おおはらの)地区。そこには、国内外のアーティストが集うシェアスタジオ『OHARANO STUDIO』があります。

現在、その一角に染色工房を建設すべく奮闘しているのが、京藍染師の松﨑陸さんです。

京藍染師・松﨑陸さん

京藍染師・松﨑陸さん

1990年に、ここ大原野で生まれた松﨑さん。

藍の一大産地は徳島(阿波)ですが、なぜ松﨑さんは京藍の染師を目指したのか。また、なぜ地元を拠点にその魅力を発信しているのか。

松﨑さんの同世代にあたる紗月さんが、さまざまな疑問を投げかけます。

紗月さんのスタイリング

その前にまずは紗月さんのお召し物をご紹介。今回は藍染師である松﨑さんにお会いするため、藍のきものからスタイリングを組み立てました。

ペイズリー更紗の意匠をほどこした異国情緒あふれる一枚。裾からチラリとのぞく八掛けの紅が、元芸妓さんらしい艶やかさをちらりと感じさせます。

裾から八掛けの紅がのぞく
お洒落心くすぐる簪の模様にも芸舞妓の世界と通ずるものが

ここにあえて、鮮やかな黄色の帯を重ねるところにも紗月さんの配色センスがきらり。八掛けの色に合わせた深紅の帯締めをしめれば、青・赤・黄の三原色をうまく取り入れたスタイリングが完成です。

NYで藍染に出会い、帰国後に弟子入り志願

古民家ギャラリーの縁側

さまざまな分野の作家たちが日々の制作にあたるアートスタジオと、芸術作品を展示する古民家ギャラリーを併設した『OHARANO STUDIO』。自然豊かな山や田畑に囲まれたこの場所に藍染工房を建設すべく、松﨑さんは昨年クラウドファンディングに挑戦しました。

プロジェクトは無事に成功し、現在は工房の建設を進めています。

なぜ、大原野を拠点に活動することを決めたのでしょうか。

大原野に自身の工房を建設する理由について語る松﨑さん

「昔から、京藍が育てられてきたのが、京洛外の”洛東(らくとう)・洛西(らくさい)・洛南(らくなん)・洛北(らくほく)”だったこと。

またその中の”洛西”にあたる大原野が僕の地元でもあるため、ここから京藍の魅力を発信しています」

松﨑さんが染めた京藍のタペストリー

22歳の時に渡米した先で藍染に出会ったという松﨑さん。NYのアパレルショップで「この服はジャパンブルーだよ」と言われたことがきっかけとなりました。

”ジャパンブルー”は日本の染色文化の象徴である藍染のこと。帰国後、たまたまテレビで見た藍染特集で松﨑さんはその意味を知ったのです。

「NYで青に染められた服を見たときは特に何も思わなかったんですが、テレビで染めている行程を見たり、天然の植物でこんな色に染めることができるんだと思ったら感動しました」

そこから一気に、松﨑さんは藍染の魅力に引き込まれていきます。

縁側でインタビューする紗月さん

実際に藍染職人になるまでには、紆余曲折ありました。

まず「やるんだったら日本一のところで学びたい」と京都で約200年続く老舗染色工房『染司よしおか』の展覧会に足を運んだ松﨑さん。

そこで植物を染料に、青だけではなく赤や黄色、緑など、様々な色で染められた作品を目の当たりにして衝撃を覚えたそう。勢いのままに弟子入りを申し出ましたが、返ってきた返事は「弟子は取っていない」というもの。

それでも松﨑さんは諦めきれず、工房に通い続けました。

松﨑さんの話に耳を傾ける紗月さん

そんなある日、松﨑さんはついに「2年間、愛媛県で勉強してきたら考える」とチャンスをもらいます。

「ここで躊躇したら、次はないだろう」

そう確信した松﨑さんは愛媛県に渡りましたが、そのままストレートで藍染の技術を学べたわけではありません。

まずは蚕を育て、繭を作って糸を紡ぎ、その糸を植物で染め、染めた糸を機にかけて手織りし、和裁で単衣の着物を縫うという作業を2年間、愛媛県にある『野村シルク博物館』でみっちり学びました。

“京藍”を復活させたい理由とは

無事に修行期間を終えた松﨑さんは当初の予定通り、『染司よしおか』の五代目当主である故・吉岡幸雄さんのもとに弟子入りを果たします。

しかし、念願の藍には一切触らせてもらえない日々――。それは、なぜだったのでしょうか。

インタビュー中の紗月さんと松﨑さん

他の原材料に関しては火にかけ煮出したら染液が作れますが、藍の場合は”発酵”というステップを経る必要があります。もし経験の少ない人間が手を出し、貴重な藍の発酵に支障をきたしたら…

それほどまでに扱いに気を遣われていたのが藍だったのです。

そのため、松﨑さんは仕事が終わってから、ほぼ独学で染液作りから藍染を始めました。最初はもちろん上手く染めることはできませんでしたが、松﨑さんはそれによってもっともっと藍染にのめり込んでいったそう。

「目に見えないけれど生き物みたいで、自分ではコントロールできない感じが楽しかったんですよね。ただ、お金の面でもかなり振り回されました(笑)」

藍の染液で染まった松﨑さんの手

そうして少しずつ、地道に染めの技術を会得してきた松﨑さん。そんな松﨑さんの手は、まさに職人の手。指や爪は染液で青く染まっています。

実際に松﨑さんの作品も見せていただきました。

松﨑さんが染めたエコバック

紗月さんが手に持っているのは、全体を京藍で染めたエコバック。

こちらを見てもわかるように、染める回数にもよりますが、京藍は非常に淡く上品な色味が特徴的。松﨑さん自身もそこを魅力に感じているそう。

藍の産地としては徳島が有名ですが、修行時代に色んな文献を読み、実は京都から藍の栽培が始まったことを知った松﨑さん。

のちにその栽培や製造技術は大阪、兵庫、淡路へと伝わり、最終的には徳島で盛んに。しかし、なんと徳島から京都へ最先端の藍の栽培方法を伝えた人物が利権をめぐり、斬首刑に処されたのでした。

自身の作品を紹介する松﨑さん
松﨑さんの作ったエコバックを見る紗月さん

その事実に衝撃を受け、胸が熱くなった松﨑さんの中では「京藍を復活させたい」という思いが芽生えます。

そして、松﨑さんは2022年3月に独立。この大原野で自ら藍を栽培しながら、京藍の魅力を発信するための活動に奔走しています。

後編では…

「京藍を伝えて残していきたい」という思いのもと工房で実施されている藍染体験に、紗月さんがいち早くチャレンジします!どうぞお楽しみに。

藍染体験にチャレンジする紗月さん

紗月さんファン必見!オフショット

紗月さん、撮影入り!まずは装いの撮影です

紗月さん、撮影入り!まずは装いの撮影です

藍のきものがとってもお似合い

藍のきものがとってもお似合い

こちらの黄色の帯を気に入ってくださったので、出産祝いとして弊社から紗月さんにプレゼントさせていただきました♪

こちらの帯をとっても気に入ってくださった紗月さん♪出産祝いとして「きものと」編集部からプレゼントさせていただきました

こちらはとあるイベントで子供たちが自由に落書きした窓ガラス

こちらはとあるイベントで子供たちが自由に落書きした窓ガラス

今回が出産前最後の撮影となりました。真剣な表情で打ち合わせ中の紗月さん

今回が出産前最後の撮影となりました。真剣な表情で打ち合わせ中の紗月さん

古民家ギャラリーには松崎さんの作品が並びます

古民家ギャラリーには松崎さんの作品が並びます

庭にはこんな不思議なオブジェも!

庭にはこんな不思議なオブジェも!

そして、縁側でのインタビューがスタートです

そして、縁側でのインタビューがスタートです

縁側に座るだけで絵になる紗月さん

縁側に座るだけで絵になる紗月さん

日本の伝統文化に携わる若者同士、話が盛り上がります

日本の伝統文化に携わる若者同士、話が盛り上がります

藍染のマスコットが気に入った紗月さん

藍染のマスコットが気に入った紗月さん

次回は藍染体験。この布が果たして上手く染まるでしょうか?乞うご期待

次回は藍染体験。この布が果たして上手く染まるでしょうか?乞うご期待

文章/苫とり子
撮影/弥武江利子

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