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どうする羽裏?秘めたこだわりは自ずと伝わる!「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.13

どうする羽裏?秘めたこだわりは自ずと伝わる!「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.13

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最高にお気に入りの生地で羽織をつくるなら、羽裏にもとびきりこだわりたい!裏地選びに気持ちを込める、古谷さん流セレクトをご紹介。編集長時代からおなじみの工芸キモノ野口を訪ねます。

2022.12.04

よみもの

モンゴルに行って、ヤギに会って、カシミヤストールできました 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.12

きっかけは、羽織美人になりたくて

どうする羽裏?古谷さんの羽裏

きもの初心者が初心者でなくなる、初心者に見えなくなるのはいつ?と考えたとき、ひとつのキーアイテムが羽織なのかなと思ったりします。

羽織までのトータルコーディネートがカンペキ!に整ったら”初心者卒業”という感じがしませんか?

個人的には“羽織似合わない派”という自覚があり(羽織似合う派がウラヤマシイ)、お気に入りの羽織に到達するまで遠い道のりでした。

ようやく、欲しい~!と思った京絞りの羽尺、いざ仕立ての相談になったときに<どうする羽裏?>となったのです。

気に入った羽裏がない…

こだわらなければ、価格面からも仕上がり面からも同系色の暈しで仕立ててもらうのが一般的でしょう。私の場合はやっと出合った羽尺、数少ない羽織ワードローブになるわけで、暈しじゃオモシロクナイ。

気に入った羽裏が見つかるまで仕立てを保留することにして、羽裏探し奔走を決意。

そもそもそんなに流通していないシロモノ。

ここへ行くしかない!と京都の老舗染め匠、工芸キモノ野口を訪ねました。

さすがの工芸キモノ野口の品揃え

野口外観

工芸キモノ野口は、創業享保18(1733)年、染めひと筋の京友禅の老舗です。

きもの編集者を5年もやれば見ただけで野口のきものとわかるくらい、“野口らしさ”が漂うものづくりはさすが京都の老舗です。

糸目友禅、染め匹田、絞り、刺繍、とくに型友禅には定評があります。

ここに来れば見つかると確信していた私の勘はどんぴしゃり。あんなに探していたものが迷うほどあるではないの!

羽裏集合

和菓子や花模様がかわいいな。

羽裏01

和菓子の図柄

羽裏02

花丸に宝尽くし

あ、これは七福神?!きゃー更紗の裂をちりばめたデザインもいい~

羽裏03

かわいらしい七福神

羽裏04

更紗の裂をちりばめた”野口らしい”もの

キッチュなのもいいけど、誰が袖や鳳凰も素敵!

うわーこっちはもったいないくらいの豪華さ!

誰が袖の羽裏

王朝ムードのある誰が袖(たがそで)意匠

醍醐の花見01

『醍醐の花見』は実に細かい!

「これはね、『醍醐の花見』って題なんです。じっくり見るといろんな人がいて楽しいですよ」

と、現八代目・野口社長。

「どれもこれも和の遊び心に富んでますが、デザインはどこから?」

「“故きを温ねて新しきを知る”が野口スタイル。羽裏の多くは代々伝わる図案帳に収められているさまざまな模様からピックアップして製作しています。

江戸時代後期、奢侈禁止令に反抗して”裏勝り(うらまさり)”という”外見は地味で質素に見えて実は裏に凝る”という流行があり、うちでもとくに明治の頃は羽裏をどっさり染めていたようですね。

いまはプリントも半分くらいはありますが『醍醐の花見』は型友禅で、ここまで緻密なものはもうそれこそ裏地の値段ではなくなりますね」

なるほどーー!

お菓子の切り口模様の長襦袢地

長襦袢地を羽裏にしても。お菓子の切り口模様『切っても切っても』

タロットカードの長襦袢地

タロットカード(長襦袢地)

羽裏にもおすすめという襦袢地も拝見し、うーーーん、あと5年したらお目にかかれないかもしれない…

「脱いだらもっとすごいんです」って言ってみたいし!この際、裏地も贅沢することに決定して、『鳳凰』と『誰が袖』をゲットです(表地一枚に対してひとつ多い!)。

鳳凰
誰が袖

玉三郎さまのお言葉を胸に

少し前のNHK美の壺スペシャル「着物」で、坂東玉三郎さんが、龍や松や桜を誂えで描いてもらっている羽裏の話のなかで、

「表に出ない気持ちの問題だけれども、気持ちというものはおのずと伝わるもの」

という意味のことをおっしゃっていました。

そう、自分の気持ちを込める余地があることこそ、きもののすばらしさ。たとえ羽織を脱ぐ機会がなくても、自慢の羽裏がついた羽織は特別に愛着のある一枚になるはず。

私の場合はひと粒ひと粒手間をかけて絞った職人さんへのリスペクトを、裏地選びで応えることができたかなと、ひとり充実の出来事なのでありました。

職人さんへのリスペクトを

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