ホーム
コラム
防寒グッズはお早目に！「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.63

防寒グッズはお早目に！「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.63

2022.11.01 （2022.11.05 更新）

記事を共有する

冬タイヤや除雪の機械や道具など、家のものとして必要なものはたくさんありますが、わたしは今年どうしても買わなければならないものがあったのです。それは防寒コート。

カメムシが多いと雪が多いとか、カマキリが卵を産み付けた場所まで雪が降るから今年は多いとか、本当なのかどうか実際はよくわからなくとも、雪国の人たちはこの季節になると、今シーズンの雪の話でもちきりです。

もう何年も着たモコモコの防寒コートが、いよいよみすぼらしい感じになってきていました。
ポケットと思ったらちょうどポケットの横がほつれていて、その穴から鍵を落としてしまったことも。穴は縫ってふさいでも、隠しきれない全体のやつれた感じ……モコモコとボロボロの間という風体になって久しく、実は数年前からそのコートに代わるものを探していたのです。

でも、探すとなるとなかなか見つからないもので、今年になってようやく、あっこれだ！というコートに出会いました。

めったに洋服を着ないわたしですが、それでも洋服にも和服にも着られるデザインで、色は、最近くすみがちな肌の色を少しでも明るく見せる、明るいベージュです。

「久しぶりに良い買い物をした！」と声に出して、そういえば夏にも同じことを言って絽の付下げを買ったなと思い出して苦笑い。若い頃は衝動的に飛びついて買い物をしていましたが、今は吟味を重ねて選ぶようになったので、無駄な買い物は減りました。

一生もの、という言葉もありますが、着るものも電子機器も基本的には消耗品の部類です。使って心地よく、そばに置いてうれしいものでなくては。

今はくたびれたコートだって、当時はひとめぼれでした。どこのブランドなのかひっくり返して確認し、試着して着心地と丈を確認し、お太鼓をしたときのシルエットの美しさに納得しての買い物でした。ずいぶん長い間一緒にいてくれてありがとう、という気持ちです。

きもの用のコートはこのほかにもたくさんあって、袷に仕立てた道中着にショールという組み合わせもしますが、雪の降る日はそれだけだと心もとない感じがしてしまうんですよね。

気温の低い日は、アームウオーマー、レッグウオーマー、スヌード、ニットキャップ、あったかい素材のペチコート、足袋型になったハイソックスなど、使えるものは総動員します。積雪が多い日にはモンペみたいな雨具も使いますよ。

先日、「もう一度暑くなるかもしれない」なんて思いながら仕舞えずにいた夏のものをきっちりと片付け、防寒グッズの点検をしました。

今年は髪を編み込んでアップにしていることが多いので、そうなるとすっぽり被らなければならないスヌードの出番は少なくなりそうです。髪型は崩したくないけれど、去年気に入って買ったスヌードの肌触りと暖かさは捨てがたい。

手袋はもう必要、ダウンはまだ要らない、箱から出したり仕舞ったりを繰り返して、ゆっくり冬になっていく我が家です。

ほぼ一年中を着物で過ごし、着物ライフの楽しさをイラストとエッセイでつづる。執筆の他、着物や帯などのプロデュースも手がけ「着物は人生に寄り添うもの。おしゃれで楽しくて、お守りのような存在の布になれたらと願い、ものづくりをしています」と語る。著書に「大人かわいい着物読本」(主婦と生活社)、「おとなのときめきふだん着物」(河出書房新社)、「買ってはいけない着物と着物まわり」(実業之日本社)などがあり、最新刊は「東京着物さんぽ」(GB)。山形県在住で、子3人犬1匹の母でもある。