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『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』 作家・山内マリコさんの着物姿 「きもの、着てみませんか?」番外編

『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』 作家・山内マリコさんの着物姿 「きもの、着てみませんか?」番外編

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作家・山内マリコさんの新刊『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』発表を記念して、スペシャルインタビューが実現いたしました!松任谷由実さんの半生を描いた小説の世界と、山内マリコさんの魅力がオーバーラップ。着物スタイリスト・薬真寺香さんによるスタイリングとともにお楽しみください。

松任谷由実のデビューまでを描く
『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』

2022年は、ユーミンこと松任谷由実さんのデビュー50周年。それを記念して、10月27日に『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』(山内マリコ・著、株式会社マガジンハウス)が発表されました。

17歳で作曲家としてデビュー以来、現在に至るまで日本の音楽シーンを牽引してきたシンガーソングライター松任谷由実さんの少女時代を、作家・山内マリコさんが小説で描き出します。

幼少期から10代でデビューするまで、そしてあの名曲「ひこうき雲」ができるまで。松任谷由実さんへの取材をもとに書き下ろされた初のノンフィクション・ノベルです。

松任谷由実さんのコメント

これはノンフィクションというより、ルポルタージュに近いかもしれない。

山内マリコさんの獰猛な取材力とインタビューに、記憶のボタンが次々とクリックされ、私は幼少期を、青春を、サーフィンしまくった。目眩く楽しかった。

これは多くの人たちが好きなサクセスストーリーの真逆だから、全くシンパシーが得られなかったとしても仕方ない。

正に、"事実は小説よりも奇なり"。

ひとりの特異な少女が、50s、60s、そして70sの、東京カルチャーとカウンターカルチャーに彩られ、特異なまま大人になってゆくお話。

山内さんの大いなる好奇心が、私自身もすっかり忘れていた愛を、思い出させてくれた。

こんな機会を与えていただけて、本当に良かったと思う。

つくづく私は、"ユーミン"以外のものにはなれなかったのだなあと、覚悟とも諦めともつかない幸せな気持ちで、この小説を読み終えた。

作家・山内マリコさんの着物姿

著者である作家・山内マリコさんは、2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞後、2012年『ここは退屈迎えにきて』にてデビュー。

『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『一心同体だった』など、女性の葛藤や複雑な悩みをリアルかつ新しく軽やかな切り口で描く世界観が、幅広い世代の女性に支持されています。

また2016年に『アズミ・ハルコは行方不明』、2018年に『ここは退屈迎えにきて』、2021年に『あのこは貴族』と相次いで作品が映画化。より奥行きのある女性像を、広く世の中に届けています。

山内マリコさん bar千にて

今回、着物スタイリスト・薬真寺 香さんのラブコールもあり、小説の発表を記念して山内さんにインタビューを行いました。

撮影地は浅草。

小説の中でも描かれていた清元やSKD(松竹歌劇団)などの空気感を醸し出せるよう、花流界の隠れ家バーや老舗の人形焼き屋さん、夜の浅草寺などを巡っています。

すでに着物歴は長くていらっしゃる山内さんですが、思わず息をのむほどに、雑誌などで拝見する今までの和姿とはまた別の魅力が醸し出されています。

スペシャルなインタビュー取材は、薬真寺さんの連載「きもの、着てみませんか?」の番外編としてもお楽しみください。

まず今回は、薬真寺 香さんによる山内マリコさんへの着物スタイリングをご紹介。
続く11月公開のインタビュー前後編では、山内マリコさんの着物観や和服の世界について思うこと、また『小説ユーミン』を作り上げる上での松任谷由実さんへの取材の様子や、小説の創作過程についてなどを伺います。

気品と遊び心が同居するスタイリング

山内マリコさんの横顔

「山内マリコさんとは、これまで何度かお仕事をご一緒させていただいたことがあり、着物姿もたくさん拝見していました。

色柄の華やかなアンティークやほっこり系の紬、刺繍モチーフなどがとてもお似合いになる印象が強かったので、今回はまるで違ったタイプの着物スタイルをご提案しています」(薬真寺さん)

作家・山内マリコさんとスタイリスト薬真寺さん 撮影:河村英朗氏

衣裳スタイリングからヘアメイク・着付け、撮影ディレクションまでを総合的に手がける薬真寺 香さん
撮影:河村英朗(都鳥bar千)

「山内さんの小説を読んでいると「こんな引き出しもあったんだ」と驚かされることが多く、多面的な魅力を感じます。そしていつも、鮮やかで新しい。

今回の『小説ユーミン すべてのことはメッセージ』は、きっと山内さんにとっても新鮮かつ大いなる挑戦だったのではないかと感じ、スタイリングでもチャレンジ精神を意識しました」(薬真寺さん)

そんなコンセプトから選ばれた着物は、乳白色の「墨流し染」の付け下げ。

ふたつと同じものは生まれない…一瞬の芸術が、とろん、としたシルク生地に美しく閉じ込められています。

肌や髪の色を美しく見せてくれ、ほのかに発光するような魅惑の絹地。

裾まわりやお袖の柄の上には、さらにそっと、彩色と金彩加工が施されています。

合わせた帯は、人間国宝・故喜多川平朗氏による唐織の逸品袋帯。こちらもまろやかなお色地に、絶妙な彩りにてあらわされています。

「たゆたう流水模様に紅葉が織り出された風雅な趣が印象的で、物語性があります。普段ストーリーを紡ぎだすことを生業としている山内さんにぴったりだなと感じました」(薬真寺さん)

しなやかなオフホワイトを基調にした「墨流し染」の着物。
同じくオフホワイトであわせた紅葉柄の帯とともに、山内マリコさんの、上品でいて遊び心のある大人の女性像を際立たせます。

帯留めアップ

小物:スタイリスト私物

帯留めには三味線のモチーフを。小説に出てくる、ユーミンが清元を習っていたというエピソードに寄せて。

山内マリコさん 鏡を見る

「山内さんが描く人物やシーンからは清潔感や正統派の印象を感じますが、背後に必ず、ロックのスピリットのようなものが潜んでいるように思えるんです。

優等生的お嬢さまかと思わせつつ、ディープな映画や音楽、カルチャーに精通した、ちょっとだけ不良の遊びもしてしまうような女の子。そんな像がいつも思い浮かんで、不思議なことにそれは『小説ユーミン』で描かれた少女時代のユーミンと重なるイメージでもあります。

そんな17歳の少女が大人になったら…という想像と、現実の山内マリコさんの魅力をつなぐようなイメージに想い馳せて、今回のスタイリングをしました」(薬真寺さん)

和の要素に西洋的な魅力が重なりあう

山内マリコさん 笑顔

ヘアスタイルにおいて薬真寺さんが強く意識したのは、”黒髪ボブを活かせるスタイリング”。

「黒髪が映えるように、という視点で着物の色柄を選び、またダウンスタイルで髪飾りなしでもさみしい印象にならないよう、片側だけ耳にかけたヘアアレンジにし、イヤカフで耳もとを飾りました」(薬真寺さん)

山内マリコさん アップ

イヤカフ、リングは日本の伝統技術「手磨り」によって生み出される『ColouR』のもの。

ひとつひとつの石が持つ表情を引き出しながら、職人の指先の感覚を頼りに生み出されています。

山内マリコさん グラスを傾けて

「同じ黒髪ボブでも、しっかりストレートにしてタイトに撫でつけたり、外ハネにしたりなどのアレンジもかわいいですが、今回はバーのほの暗い灯りになじむよう、柔らかくてふんわりとしたシルエットに。

毛先がまあるい大きめのカールにしたかったので、38mmの太めのアイロンを使って巻いています」(薬真寺さん)

手元アップ

クラッチバッグは『Charlotte Olympia(シャーロット・オリンピア)』より。ちょっと尖ったデザインで、コーディネート全体を引き締めるスパイス的役割を果たします。

「高級感はあるけれどマダムっぽくはならず、ユニークさがいい味を出してくれて、実は着物にもとても合う。残念ながら今はもう買えないブランドですが、今回特別にコレクターの方からお借りしてきました」(薬真寺さん)

山内マリコさん レコードを抱えて

「『小説ユーミン』で描かれる1stアルバムのレコードも、小道具として用意しました。着物姿でレコードジャケットを抱えてるというポーズも素敵だろうなと、見てみたくて」(薬真寺さん)

和風ともいえる黒髪ボブに西洋的なジュエリーやクラッチバックを合わせたミックスコーデの魅力は、『小説ユーミン』内で、呉服屋さんや清元などの日本的な要素と西洋の音楽が重ね合わされていく様子とも通じています。

山内マリコさん 全身

「着物を着てバーに行く、というのは、大人になって良かった!って思えるようなすごく素敵で愉しいこと。

気取りのない紬で行くのも素敵ですが、今回の衣裳のような着物といつもの紬で行くのでは、同じバーでも、見える景色やお酒の味も違ってきます。

煌めき華やいだコーディネートで出かけて気分をあげる、という大人の夢を山内さんに体現していただく。そんな点も意識しました」(薬真寺さん)

山内マリコさん 入り口にて

インタビュー編もお楽しみに

山内マリコさん 新刊を手に

次回は11月中旬公開予定。山内さんの柔軟な着物観、新作『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』への想いを伺いました。

※帯揚げ、二分紐、帯留めはスタイリスト私物

構成・文/金井茉利絵
撮影/坂本陽 minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け・ヘアメイク/薬真寺 香 ___mameka_

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