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茜さす 秋の美山に 君訪ね 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.10

茜さす 秋の美山に 君訪ね 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.10

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かくも豊かなる草木の染め色の魅力。強くやさしく、ときに気まぐれに… 飽くなき探求心に導かれて今回古谷尚子さんが行く先は、京都・美山。太陽の色「茜」にまつわる人々のストーリーです。

2022.08.16

よみもの

光る糸の秘密を探る!ショートトリップin京都 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.9

どんな赤を思い浮かべますか?

茜色と聞いて、どんな赤を思い浮かべますか?

「黄味がかった赤」と言っても、思い浮かべる色は人によってだいぶ違うかもしれませんね。

そうです、色の幅が広いのは草木の自然の色だからこそ。

今回は古代染料のひとつとされる茜をめぐる、京都・美山のプロジェクトのお話です。

どんな赤を思い浮かべますか?

高貴な万葉の色、あかねいろ

聖徳太子が定めたとされる冠位十二階における衣冠の色は、位の高い順に、紫・青・赤・黄・白・黒とあり、染料となる草木が貴重なものから上位に制定されたのではと言われています。

紫=紫草、青=藍、赤=茜、黄=黄膚、白は無染色、黒はドングリなどの木の実(諸説あり)。茜は紫と青に次ぐ高貴な色として古来から日本茜で染められてきました。

あかねさす 紫野(むらさきの)行き 標野(しめの)行き
野守(のもり)は見ずや 君が袖振る

という万葉集の額田王の歌には、あかねと紫が両方でてきて興味深いですよね。

茜染めの糸

「あかねさす」は赤い色がさして光り輝いている様で、「紫」や「日」「光」「君」などの枕詞として使われます。

いま私たちが茜色の空と言ったら夕陽のイメージですが、当時は朝陽の光のイメージだったようで、日の丸(国旗)の赤も茜染めが最初なんですって。

茜の根っこは、ほんとうに赤かった!

京絞り寺田 寺田社長

京絞り寺田 四代目 寺田豊さん

京絞り寺田の四代目親方であり、この10年ほど草木染に魅せられてさまざまな植物と格闘…いえ、対話しているという寺田豊氏から「日本茜復活プロジェクト」の話を聞いた私が、畑作業を手伝うという寺田さんにくっついて、長靴片手に美山へ向かったのは2020年の秋のこと。

京都駅からクルマで約90分、京都府の真ん中あたりにある美山は、まるで桃源郷のように静かで美しい里山。

2020年秋の茜畑

2020年秋の茜畑

美山の自然と人に魅せられ三十数年前に移住、「美し山の草木舎」として自然の恵みを生かした地域活性活動を行い、日本茜プロジェクト主宰者でもある渡部康子さんに、日本茜の畑に案内してもらいました。

2020年の茜畑

2022年の茜畑

畑作業

掘り出した日本茜の根

「根を太くするには3年かかっていたのですが、栽培方法を工夫して今は2年で収獲しています。来年はハウス設備を使い、単年度収穫を目指したいと思ってます」と渡部さん。

日本茜楽校

月1回、日本茜楽校という勉強会を開催し、技術を交流。

昨年の茜楽校の参加者が、勤務先の農業高校で茜栽培をはじめたり、輪が広がっているそうです。

茜の花

3mmほどの可憐な茜の花

茜の葉

4つ輪になっている葉がかわいい

「一見雑草のようで強く見えますが寒さ暑さに弱く、種ではうまく育ちません。さまざまな栽培方法を試しているところです」

挿し目で増やします

種でうまくいかず挿し目で増やすことに

その名の通り根が染料になるので慎重に根ごと掘り出すと、まさに”赤根”!

茜の根

根が赤い!

これが幻の染料と言われる日本茜かー!!

根いろいろ

土をつけたまま乾燥させたもの(手前)と、粉砕したもの(右奥)、冷凍保存後に解凍したもの(左奥)

日本茜伝承プロジェクトへ発展

渡部さんと茜との出会いは偶然の賜物。

茶の木の間から生えている日本茜をたまたまみつけ、希少で高価な植物である日本茜の栽培に成功すれば農業と伝統工芸を繋げることで地域に貢献できるかもしれないと考えます。

渡部さん

「美し山の草木舎」渡部康子さん

何度も失敗し試行錯誤の末、5年目にようやく栽培が軌道にのる兆しが見えると、次は日本茜の素晴らしさを染色作品として見てもらうことが大切と、作り手との交流を深めていきます。

日本茜

2019年には、友禅作家で古代染色に詳しい山本晃さんはじめ、日本刺繍の木村千鶴さん、昇苑くみひもさんらと日本茜を使った作品の展示会を開いて「日本茜伝承プロジェクト」をスタート。

毎年3月に京都の知恩院和順会館で展示会を開催しています。

「日本茜伝承プロジェクト」
知恩院和順会館で展示会が開催

渡部さんの考えに共感した寺田さんは、この展示会に2020年から参加。
仲間の染色家に日本茜を広め、自身も茜染めの帯やきものなどを意欲的に制作しています。

2021.03.30

まなぶ

梅染友禅・梅染師 山本晃さん 【YouTube連動・インタビュー編】 「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.1-1

お陽さま色でパワフルに

おひさま色のパワー

日本茜は古来から、染料としてだけでなく薬草としても珍重されてきた貴重な植物。

色々な素材と手法で日本茜の草木染めに挑戦した寺田さん曰く、「茜ちゃんはわがままなお姫様のようだ」と。

茜の色糸

ピンクになったかと思えばオレンジに、はたまたイエロー、エンジ色とさまざまな表情を見せるそう。それはまさに太陽の色。

うっすら黄色い日の出の光から真っ赤な夕焼け色までを思わせ、とてもパワーを感じます。

草木染だから何とも言えない上品な奥行きがあるのです。

自然の色を味方にした着こなしもきものならではの楽しさですね。

茜染めの帯

この取材をきっかけに、寺田さんの茜ちゃんへの想いを語っていただき、帯揚げに帽子絞りを入れるワークショップを企画中。

茜ちゃんと寺田さん

寺田さんと”茜ちゃん”

もちろん私も助手として参加します。開催が決まりましたら、是非みなさんお越しください!

ワークショップのお知らせ

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