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ダイナミックな平安ファッション 「のんびり楽しむイラスト服飾史」vol.3

ダイナミックな平安ファッション 「のんびり楽しむイラスト服飾史」vol.3

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一生のうちの多くを、室内から切り取られた庭を眺めて過ごしていたであろう平安の高貴な女人たち。それゆえに季節の移ろいや花や葉の微妙な色味にも気づき、身につける衣服に取り入れていったのかもしれません。

のんびり楽しむイラスト服飾史

冠婚葬祭などで最低限のTPOを守りさえすれば、他者と自己、それぞれを主軸にした美意識は両立していいはずです。難しい決まりや約束事があるから…と着物離れが進むよりも、洋装と同じように着物の活躍の場が広がってくれたら素敵ですよね。

こんにちは。

『のんびり楽しむイラスト服飾史』と題し、閉鎖的な文化の中で生成され練りに練られて独特な進化を遂げた日本人の美意識を知るシリーズですが、楽しんでいただけていますか?

さて、今回はまた、この文化の原点である平安時代に戻ってみようと思います。

中国風の文化を「唐様(からよう)」と称するのに対し、日本独自の文化を「和様(わよう)」と呼んだりします。

さまざまな側面で発展した「和様」ですが、服飾の部分では、比較すると元が同じ衣服とは思えないほどの変遷を遂げています。

特に女性の女房装束、いわゆる「十二単(じゅうにひとえ)」です。

大陸との気候の大きな違い、“湿度“に対応することを目的としたこの衣服は、長袴に風通しの良い大袖の衣を羽織る形を基本とし、寒さやTPOに応じて重ね着するようになりました。

重ねる衣の色合わせを『襲の色目』と呼ぶ

そして徐々に、重ねる衣の色合わせを「襲の色目(かさねのいろめ)」と呼び、そのセンスを競い楽しむ美意識が出来上がったようです。

このコーディネートにもいくつかのルールがありました。

例えば…

差し色、ワントーンコーデはなんと千年も前から

差し色、ワントーンコーデなど、現代でも見られる色合わせのトレンドは、なんと千年も前から…!!

そして、実はあまり知られていない気がするのですが、袷の生地にはこんな秘密もあるんです。

透け感を楽しむ繊細な感性

1枚の衣を縫うのに使う裏地の色をあえて表地よりも濃い色にして、表地に裏地の色を透けさせてほんのりと浮かび上がるような色合いを作るなんて…すごい工夫だと思いませんか?

主に植物原料で染めるので何色でもできるわけではありませんが、もちろん染め具合で濃淡の調整はできます。

つまり、最初からほんのりとした桜色の生地を染めることもできるけれど、あえて白生地に裏から赤を透けさせる…!この趣深い感性を初めて知った時、衝撃を受けました。

当時の染色技術は、日本人の心のひだの細やかさをあらわす需要に添って発展したようです。でも平安装束には、”現在の着物にみられるような柄”は無いですよね?

「有職文様」と言われる”パターン化した織りであらわす地紋”がほとんどで、一番外側に着る表着(うわぎ)や唐衣(からぎぬ)に別糸を織り込んだ織り柄として見られます。刺繍の技術は奈良時代からあったようですが、仏具や男性の装飾品など一部に施すもので、衣全体に豪奢に入れるような発想はなかったようですね。

そして手描き友禅や絞り染めのような技術ももっと後世になって発展するので、平安時代には”季節の花や自然を柄としてあらわす”ものはありませんでした。

だからなのか、花の名前がついた「襲の色目」には必ずと言って良いほど、花の色だけでなくその葉や、移いゆく色味が入っていることにお気づきでしょうか?

全身で表現する大胆な美意識

例えば、同じテーマで「十二単」ではなく「着物」だったら…?という比較をするとわかりやすいですよね。

柄を表現する技術を持つと直接的にその花や季節のモチーフを取り入れることができます。でも平安時代は、桜や菖蒲、紅葉などを(上図右の通り)衣装全体を使って表現していたようです。

意外、と言ったら失礼かもしれないけれど平安ファッションってダイナミック!

一生のうちの多くを、室内から切り取られた庭を眺めて過ごしていたであろう平安の高貴な女人たち。
それゆえに季節の移ろいや花や葉の微妙な色味にも気づき、身につける衣服に取り入れていったのかもしれません。

そして技術に足りないところがあれば研ぎ澄まされた感性で補う工夫が、その後花開く小袖アートへと繋がっていくのではないか…

そう考えると、様式化され一見個性を殺されたような、物言わぬ平安絵巻の中の女性たちから美意識の強いエネルギーを感じるような気がしたのでした。

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