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「感性」を汲み取って具現化する。 アーティスト SHOWKOさん(後編)「川原マリア×令和の若手職人」vol.8

「感性」を汲み取って具現化する。 アーティスト SHOWKOさん(後編)「川原マリア×令和の若手職人」vol.8

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330年続く茶陶の窯元「真葛焼」に生まれ、現在はブランドデザイナー、陶板画作家として活躍されるアーティスト SHOWKOさん。著書『感性がある人が習慣にしていること』についてや今後の展望、またVRを用いた新たな取り組みについても伺いました。

店頭にて

令和を力強く生きる若手職人に「自ら道を切り拓くこと」についてインタビュー。「デザイナー」「アーティスト」「職人」の使い分けとは?330年続く茶陶の窯元「真葛焼」に生まれ、現在はブランドデザイナー、陶板画作家として活躍されるアーティスト SHOWKOさんにお話を伺いました。

川原マリアが訪ねる令和の職人

©️Tomokazu Mukai
©️Tomokazu Mukai

令和を生きる職人とは。

着物の図案家として職人を経験し、「Forbes Japan セルフメイドウーマン100」に選出された川原マリアさんが訪ねる伝統工芸の「今」と「未来」とは。

“自力で道を切り拓くこと”について、活躍されている若い世代の職人とともに考えます。

前編に引き続き、330年続く茶陶の窯元「真葛焼」に生まれ、現在は『SIONE(シオネ)-読む器-』ブランドデザイナー、陶板画作家として活躍されるアーティスト、SHOWKOさんにお話を伺います。

SHOWKO

『感性がある人が習慣にしていること』

マリア
マリア

まずは、出版おめでとうございます!重版を重ね、海外でも出版が決まったとか。

本を手にもつSHOWKOさん
SHOWKOさん
SHOWKOさん

ありがとう!おかげさまで、出版数ヶ月で2万部までいきました(2022年6月現在)。アーティストが本を出すとなると、作品集やブランドヒストリーとかになりがちで、実は何について書くか非常に試行錯誤したのですが。今までいただいた学びを咀嚼して咀嚼して、この本になったという感じです。

マリア
マリア

内容はぜひみなさまにお手にとってお読みいただきたいところですが、出版されてからの反響や、そこから何か広がるようなことはあったのでしょうか。

本を手にもつSHOWKOさん
SHOWKOさん
SHOWKOさん

それこそこの本の主題に繋がってくるんだけど、この中に書いてあることを、ワークショップにしていったり、コミュニティ作りというのも考えています。今までずっと焼き物をやっていも、数ヶ月で数万人以上に想いを届けられるということはなかったので、みなさまの反応から、こういう伝え方もあるんだなと思っています。

マリア
マリア

書籍でも、前編でお伺いした「売れるものを作る」を体現されていますね。売れるということは求められているということ。すばらしいと思います。コミュニティも楽しみですね!

話を伺うマリアさん

「10000代目」と自覚してみる

マリア
マリア

そういえば、同じ女性としても気になるのですが、名家にお生まれになって、男性優位の社会制度に触れることも多かったと思いますが、これまで何か思うところはおありでしたか?

SHOWKOさん
SHOWKOさん

少しずつ手放したけど、正直なところ、ここ数年前まではずっと葛藤してたかなと思います。

女性の生きづらさについて語る
SHOWKOさん
SHOWKOさん

3年くらい前に<Beの肩書きとDoの肩書き>を考えるワークショップに登壇させていただく機会があって。<Be>は自分自身としてのあり方、<Do>はデザイナーとかプロデューサーとか、そういう肩書きのことなんですが。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

打ち合わせで、私のブランド『SIONE(シオネ)』はSF的な未来の惑星創世記で話が進んでいくので「SF作家」はどうか?とご提案いただいたのですが、少し違和感があって。最終的に自分の中で辿り着いたのが「10000代目」という言葉だったんです。

マリア
マリア

「10000代目」とは?

SHOWKOさん
SHOWKOさん

京都は特に「何代目」とか、歴史を繋ぐ名詞や肩書きがよくあるけど、私は「SIONEの1代目」だということに気負いやプライドもあったんです。だけど本当は、親や祖先や友達や生きていく中で触れてきたものすべてから吸収して繋いできたとすれば…今の私はきっと「10000代目」くらい。そう考えた時から気が楽になったんですね。ぐっと広げて地球規模で考えるといいかなと。

談笑する2人
マリア
マリア

壮大な考え方ですね!

SHOWKOさん
SHOWKOさん

職人の世界だけじゃなくて、きっと女性は会社員でも生きにくい部分はあると思う。子供を産むのか産まないのかとか、人生のどのフェーズでも女性は一生懸命にならざるを得ないから大変だと、身をもって実感しています。でも逆に得してる部分もあるかな。「女社長」とかね。男性ならつかないのに(笑)。

SIONE作品

「WHY」がどこにあるか、毎月自分を棚卸し

マリア
マリア

お話しをお伺いして、多角的な能力や視点・総合力が、令和に活躍される職人やアーティストには必要とされるのかなと感じましたが、もしSHOWKOさんから、令和の職人へのアドバイスなどあればお聞かせ願えますか。

優しい笑顔のSHOWKOさん
SHOWKOさん
SHOWKOさん

アドバイスできるような立場でもないのだけど、メタ目線がどれだけあるか、は大事なのかなと日々思っています。それぞれの社会の立ち位置もあるけど、例えば私なら日本で培ってきたことを海外にも伝えたい。ただ、その望む範囲は人それぞれ。技術を継ぐのなら半径1m程度。家を継ぐなら10mくらい。どれだけの範囲にしたいかを決めることかな。どちらがいいとかではなくて、その人次第。

マリア
マリア

人によってできることややりたいこと、また望む範囲も全く違いますものね。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

大事なのはやっぱり「WHY」かな。本当はマリアちゃんも私も、人前に出たりSNSにUPしたりするのは恥ずかしいでしょ?

マリア
マリア

実はそうですね(笑)。

談笑する二人
SHOWKOさん
SHOWKOさん

でもなぜやるのか?それぞれに目的や意識があるからやってるのよね。テクニカルな部分は真似したらできるけど、そこが目的じゃないことをそれぞれ自覚しないといけない。

マリア
マリア

テクニックだけなら、情報は飽和状態のような気もしますね。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

そう。だから私は毎月「何が必要で何が要らないのか」書き出してるよ。毎月自分を棚卸しして、そういうことをやった後にしか「本当の自分」は出てこないんじゃないかな。

新しいことはまず趣味で

マリア
マリア

最近はVRアートなども挑戦されていますよね!

showkoさんのVR作品
Instagram ©️showko_vr
SHOWKOさん
SHOWKOさん

なんでもまずは趣味の範囲から始めるのがモットーですね。SF好きだから、未来的なことにも抵抗がない。もし海外でも生きていこうと思ったら、フィジカルなこの現場・この世界をVRで表現したり残したりもできるし。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

あと、空間を越えるから世界中どこでも体験できる。器ってリアルだから、VRとかけ離れているように思われるかもしれないけれど、土器でタイムスリップしたりしてるから個人的には似てると思っていて。例えば、器の物語の中に入れるような世界観に拡張することもできるし、可能性は無限かなと。

世界をテーマにしたSIONEの陶器
世界をテーマにしたSIONEの陶器
マリア
マリア

石とか陶器などが、実は一番長く残る可能性のある有機物かもしれないですしね。これからの時代はリアルと仮想現実が両立していくんでしょうね。そしてあらためてSHOWKOさんは、感性を汲み取って具現化できる方だなと実感しました。

着物はハレの日に

マリア
マリア

「きものと」は主に着物に関するメディアなのですが、やはりハレの日にお召しになることが多いですか?

SHOWKOさん
SHOWKOさん

そうですね。茶道を学ぶ中で着付けを学んだり母から譲り受けたり、娘達の七五三に着たり。私はどうしてもパリッとしてしまって、なかなかカジュアルにならないのが悩みかなぁ。

マリア
マリア

ハレの日に着るのも日常に着るのも、その人らしければどちらもステキに感じます。『SIONE』でも、友禅に関するプロダクトを発表されていて、かわいくて魅力的だなと拝見しています。

娘さんたちとの七五三
Instagram ©️ showko_

SIONEをイメージした令和装コーデ

今回『SIONE』にお伺いすると決まってイメージしたのは、ブランドカラーの「青」と陶器の「白」。そして、SHOWKOさんのイメージは「自由」で「柔軟」「優しい」「芯のある女性」。

店内でお話しする様子

そのイメージから、お店の雰囲気に溶け込むような、私の中での「SIONE像」を体現したコーディネートにしてみました。

マリアさんの着物姿

帯はせず、胸元はゴムベルトでおさえて。レースの巻きスカートを胸下に巻いて軽やかに。

伝統を大切にしながらも、時代に沿って自分の思う「かわいい」に正直に。

コーディネート全体

靴やバッグはシルバーで揃え、芯のある強さも少しだけプラス。
靴下と襟元・袖もレース素材で統一感を出し、着ていて楽な、そしてワクワクするコーディネートです。

コーディネート後
コーディネート足元

アクセサリーには「手仕事」にかけた「手」のモチーフと、1日も早い世界平和を願っての「鳩」モチーフ。レース素材の付け袖を少し裄が短めの着物に合わせれば、手首を覆う実用的で可愛いアクセントになります。

コーディネートアクセサリー

柔軟に、着物を楽しみ、伝統を継いでいく。
これからも、SHOWKOさんのように軽やかに優しく、令和の時代に求められるスタイルを探していきたいと思います。

シオネの前にて

撮影/弥武江利子

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