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スクリーンから立ち昇る酒の香に心酔『吟ずる者たち』 「きもの de シネマ」 vol.11

スクリーンから立ち昇る酒の香に心酔『吟ずる者たち』 「きもの de シネマ」 vol.11

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、お酒造りに奮闘する職人たちの生き様に思わず乾杯したくなるシネマです。

©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、とある披露宴会場を舞台としたドタバタコメディ『ウェディング・ハイ』にスポットを当てましょう。

受け継がれる、「百試千改」の精神

ごきげんよう。

待ちに待った、まん延防止等重点措置の解除を迎えました!
“のんべぇライター” の本領が発揮できる春本番。感染防止に努めながら、美酒美食を存分に愉しみたいものでございます。

週末ライブ キモイリ!
KBS京都テレビ「週末ライブ キモイリ!」毎週土曜日10:30〜11:55オンエア中。MCはTKOの木本武宏さん。アシスタントの去来川奈央さんと、週替わりで登場するコメンテーター、中継リポーターらとリアルな週末のお出かけ情報を発信しています。

まん防期間中、コメンテーターとして出演させていただいているKBS京都「週末ライブ キモイリ!」のわたくしのコーナーでは、悲しいかな、酒類禁止。

致し方ないとはいえ……肩書が役立たずという不甲斐ない時期を、やっと脱出することができました。KAMPAI!

というわけで、今回注目した作品は、広島発!発酵ムービーです。

その名も、『吟ずる者たち』。
吟じて醸す――吟醸酒を造る物語でございます。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

舞台は、明治と令和の広島。
吟醸酒の父と呼ばれる三浦仙三郎が、度重なる苦難に負けず、画期的な技術開発を成す吟醸酒発祥のドラマを基軸に、彼が残した家訓「百試千改」の想いを継ぐ主人公・明日香(比嘉愛未)の酒造りへ挑む姿を描きます。

「百試千改」とは、百回試して千改直すというモノづくりへの姿勢。粘り強さ、心の逞しさをあらわす座右の銘です。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

明治初期、新米酒造家の仙三郎(中村俊介)は、醸造中に酒が腐ってしまう「腐造」に何度も見舞われます。さまざまな苦難が襲い掛かるなか、安定した日本酒醸造技術の確立に研鑽を重ね続け、ついに軟水による低温酒造法を生み出しました。

一方、現代。

東京で夢に破れ、恋人とも別れ、故郷である広島へと戻ってきた明日香。目標を見失った彼女は仙三郎の手記を見つけ、彼の熱い想いに強く惹かれていきます。

彼女の実家は、仙三郎の杜氏の末裔が継いだ酒蔵。幼き頃から酒造りに興味を持ってはいたものの、実家を継ぎたいと言い出せずにいました。

そんな折、突然、父が倒れます。蔵を辞めるべきだと主張する兄に対して、明日香は仙三郎の願いや父の新酒への想いに共鳴し、わだかまりを捨てて「モノづくり」の世界に入る決心を固めるのです。

明治からの時を経て醸される新酒『追花心』は、果たして完成するのでしょうか。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

世間の流行りやマーケティングではなく、自分が良しとするモノづくり。「本当にいいものは、磨き上げた跡が判るモノづくり」だと言う仙三郎の言葉が、沁み入ります。

実直に、真摯に。
酒造りだけでなく、「モノづくり」に携わるすべてのひとに見てほしい作品です。

ハレからケまで、時代を映す装い

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

明治時代の酒蔵での暮らしを描く各シーンでは、当然のことながら、さまざまなキモノが登場人物たちを彩ります。

例えば、婚礼の席での紋付。さらには、野辺送りの白装束。当主の床の周りに集う家族の正月らしい正装。ハレの日にはハレの日に相応しい衣装があります。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

かと思えば、家族で食卓を囲む際の普段着や仕事着などもたくさん登場します。

衣装が目を愉しませてくれるポイントは現代のターンでも健在で、とくに比嘉愛未さんが頭に巻く手拭いにご注目あれ。いろいろとバリエーションがあって、そのデザインに思わず見入ってしまうのではないでしょうか。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

加えて、見逃せないのが、病弱な妹が床についているときの寝間着です。

日によって、藍が深かったり、清潔感ある白の一枚だったり。それらは、やさしく初々しい妹のキャラクターをもあらわしていて、「らしく」て好ましい。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

それはほかの兄弟姉妹とて同じこと。それぞれの性格に沿った衣装を自然体で身にまとっています。

仙三郎の妻・ソノを演じる戸田菜穂さんの良妻賢母な女性に似合う清楚さと華やさを併せ持つ装い。母・マチに扮するひろみどりさんのこなれた着こなし。父・忠兵衛役の渋谷天外さんの堂々たる居住まい。

また、新しい杜氏の誕生を祝うときの仙三郎の出で立ちは、濃紺の半襟に渋い緑のキモノ。半襟より明るい青の羽織がよく似合っていて、惚れ惚れします。どれもこれも、物語に厚みをもたらす大切な要素です。

©2021ヴァンブック
©2021ヴァンブック

みなさまご承知のとおり、キモノは男女ともにカタチはほぼ同じ。にもかかわらず、その色柄や合わせ方、着こなしで随分と違って見えるのはとても面白いものです。

髪型や小物の選び方までしっかりと考え抜かれたコーディネートの数々は、見ていて大変勉強になります。

明治という時代、広島という土地柄を映し出す装いの数々を、ぜひ劇場でご覧ください。

©2021ヴァンブック
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