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「京都染色美術展」で京都最高峰の染色技術を次世代へ

「京都染色美術展」で京都最高峰の染色技術を次世代へ

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3月上旬、第71回目となる「京都染色美術展」が開催されました。京友禅、京鹿の子絞り、京刺繍に携わる職人の高度な技術により生まれた計60点あまりの作品。同展を主催する京都染色美術協会の現会長・市川昌史さんが語る今年の見どころと今後の活動についてお届けいたします。

京都最高峰の技術が集結!
「京都染色美術展」開催

ようやく春らしさが到来した3月上旬、一昨年リニューアルオープンした京都市京セラ美術館にて「京都染色美術展」が開催されました。

「京都染色美術展」入り口

本展は、京都の職人による京友禅、京鹿の子絞り、京刺繍の高度な染色技法によるものづくりにこだわった作品展。1952年から毎年春に開催されており、今回はその第71回となります。

会場の様子
会場の様子2

毎回この日のために、京都でも指折りの作り手が渾身の作品を製作。会場には各社の職人が高度な技術で染め上げた、見るも華やかな計60点あまりの訪問着や帯がずらりとならびます。

手描き友禅の手仕事

「京都染色美術展」を主催するのは、本展がスタートした1952年に発足した京都染色美術協会。

伝統産業である京友禅、京繍、京鹿の子絞に携わる、最高峰の技術を持った事業所13社で構成されています。

伝統技術の向上を図り、新しい時代に合った、また普遍的に支持されるものの啓蒙につとめ、呉服店やものづくりの発展を目的とした普及啓発活動を積極的に行ってきました。

刷毛を使った型染め友禅

流れる「水」は腐らず。
伝統産業も良い方向に流れるよう

第71回のテーマは「水」。

古来から「穢れを払う、清める」といったイメージを持つ「水」が今年のテーマに選出された理由とは。京都染色美術協会現会長、染匠市川代表の市川昌史さんにお話を伺いました。

京都染色美術協会の会長を務める市川昌史さん
京都染色美術協会 会長 市川昌史さん

「“流れる水は腐らず”と言いますが、私たちの生活も高度な技術を持った伝統産業も、ともに良い方向に流れていくようにと願いを込めて『水』を今年のテーマといたしました」

コロナ感染拡大防止のための外出自粛により、着物を着たり販売する機会が減少し、京都染色美術協会に所属する事業所も大打撃を受けました。そのような厳しい状況下では、多くの職人が持つ高度な技術が眠ったままになってしまいます。

「職人さんは、腕を動かしてなんぼ、というところがあり、その技術が途切れないようどの事業所も仕事を作り出すために努力しています。そんな大変な中ではありますが、それぞれの想いが詰まった作品を出品してもらっています。

実際にご来場のみなさまから、本当に選りすぐりの作品が並んでいて見応えがあった!というお声をいただけてとてもうれしかったです」

訪問着「琳派四季版下絵」成謙工房謙蔵
訪問着『琳派四季版下絵』成謙工房謙蔵

染匠市川の作品をご紹介

穏やかな春の日差しに咲く桜をイメージ

そんな市川さんが代表取締役社長を務める染匠市川からは3点が出品されました。

まず目に入るのが、澄みわたる春の青空をイメージさせる明るい水色に枝垂れ桜が咲き誇った訪問着。

訪問着「枝垂れ桜」染匠市川
訪問着『枝垂れ桜』染匠市川

穏やかな春の日差しの中に咲く桜をイメージしてあえて金加工は抑え、実に柔らかな雰囲気が作り出されています。

そしてこちらは、本金箔を使って鶴を描いた色留袖。

色留袖「松に鶴」染匠市川
色留袖『松に鶴』染匠市川

「こんな時代だからこそ、普段は業界でも使用する機会の少ない本金箔を用いてしっかり加工したものを見ていただきたかった」と市川さんは語ります。

「純金は上品な黄金の輝きを持っていますし、年月を経ても決して酸化して黒ずんだりしません。
加えて刺繍も金糸でしっかりと頭から詰めていき、背に向けてぼかしていくことで立体感が出るように表現しています」

最後は、グスタフ・クリムトの絵画『生命の樹』をモチーフにデザインされた訪問着です。

訪問着「生命の樹」染匠市川
訪問着『生命の樹』染匠市川

同画家の『接吻』からも一部デザインを抽出し、二つの作品をミックスしたような遊び心にあふれた一着。まずほかにはない秀逸なデザインです。

クリムトの「生命の樹」と「接吻」を一部トリミング
異なる地色の作品を並べることでメリハリをつけた
あえて異なる地色の作品を並べることで、陳列にもメリハリをつけて
染匠市川 市川昌史さん

すらりとした高身長に、ぱりっとした白シャツが目を引く市川昌史さん。京都で三代続く染め元の、今に息づくものづくりを受け継ぎます。当初、個人へのインタビューは…と固辞されておられたところをお願いし、京都御苑の紅白梅を背景にお話を伺いました。

京都の美しい伝統産業を身近に

訪問着「生命の樹」染匠市川
訪問着『月夜の桜』成謙工房謙蔵

最後に、京都染色美術協会の今後の活動についても伺いました。

「京都染色美術協会は、京都の伝統産業の高度な技術や技法を一般の方にも見ていただき、その良さを肌身に感じていただくこと、そして職人さんの技術の向上と継承をその目的としています。

毎年、春を迎える3月に京都染色美術展を開催しており、来年は第72回となります。その際にはみなさまにお越しいただけましたらと思います。」

撮影/スタジオヒサフジ

京友禅サリーで、日本の卓越した技術を誇る手しごとを世界へ

京都市内で、「京友禅サリー」がお披露目されました。展示会場を鮮やかに彩るのは、京都伝統の京友禅で染められた、インドの伝統衣装・サリー。振袖のような華やかな配色に、古典的な文様が描かれています。京友禅の未来への技術継承のため京都府のサポートを受けた、新しい挑戦です。

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