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花も着物も、エネルギーに満たされて。 フラワーデザイナー 和気雅美さん 「今、きもので輝くひと」vol.4

花も着物も、エネルギーに満たされて。 フラワーデザイナー 和気雅美さん 「今、きもので輝くひと」vol.4

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鮮やかで生命力あふれるニューヨークスタイルのフラワーデザインを手がける和気雅美さん。「花も着物も、色と組み合わせの妙」という和気さんに、アーティスティックな観点からの着物の楽しみ方をうかがいました。

仰々しくなくて、パーティ映えする着物

和気さま全身

和気雅美さんは、ニューヨークスタイルを得意とするフラワーデザイナー。
ウェディングやイベントの空間プロデュースや装花を手がけるほか、初心者向けから米国の難関認定資格取得者向けまで、多彩なコースを用意したフラワースクールも主宰しています。

この日の撮影は、広尾のFleur Universelleにて。
なんと、着物に合わせたフラワーアレンジメントを作ってきてくださいました。

フラワーアレンジメント

鮮やかで、パワフル。
着物と花束の色彩のアートの中に息づく生命力が、見る者の心を躍らせます。

天目染めの着物

鮮やかなピーコックブルーの着物は、牡丹の地模様の反物に天目染めをほどこしたお品。

「ライトの加減によって牡丹の地模様が浮き出て見えるんです。

仰々しくなくて、かつパーティ映えするゴージャスさもあって。とても気に入っています」

牡丹の地模様
唐草模様の帯

「帯次第でいろんなシーンで活躍できることもポイントのひとつ。
名古屋帯を選べばすごくカジュアルに着られるし、今日は袋帯で華やかにしてみました。また、たとえば白地の帯も合うでしょう?」

今回合わせた西陣織りの袋帯は、黒地にエメラルドグリーンの宝相華文様が織り出された作品。無地にも見える着物にジュエリーのような華やかさを演出する、躍動感のある模様です。

帯留めに使ったアンティークブローチ

帯留めには、羽根をかたどったブローチをあしらって。

「これはアメリカで買ってきたアンティークのブローチです。実は洋服に合わせることはなくて、帯留め用として選んでいます。着物に合わせるからといって和物でなくては、とこだわることはないですね。
髪やブーケにあしらった孔雀の羽根や、今日の帯の雰囲気にも合うアールヌーボーなデザインを選びました」

「羽根や蝶、シルバーのブローチはアメリカのアンティーク。1950年代のものかしら。
こういうエナメルのものが流行ったんですよね。珊瑚のブローチは香港で見つけました。とってもかわいいでしょう」

帯留め用のアンティークのブローチ

さらに、この装いに合わせたフラワーアレンジメントのポイントもうかがいました。

フラワーアレンジメント

「ピンクが基調ですが、ピンクの中でも青っぽいピンクを選んで、ピーコックブルーの着物との統一感を出しています」

孔雀の羽根飾り

「アレンジメントに加えた孔雀の羽根は、髪にもあしらってみました」

一つひとつのアイテムがそれぞれ個性を主張していながら、全体として見事に調和したコーディネートはさすがのもの。

「着物自体がお花みたいなもので、お花と同じようなパワーがありますよね」という和気さん。フラワーデザインのセンスを活かして着物のコーディネートも楽しんでいらっしゃるお話を、もっと詳しくうかがっていきます。

ニューヨークスタイルに魅了されて

和気さんのキャリアのスタートは化粧品会社。
化粧品の高級ラインの海外展開や、フランス人クリエイターが手がけるフレグランスやメークアイテムのマーケティングに携わっていました。

当時から日本でフラワースクールに通っていたものの、このころはまだ趣味の範囲でした。しかし出張でフランスやアメリカに赴いた際に、海外のフラワーデザインにインスパイアを受けます。なかでも和気さんを魅了したのは、パリではなくニューヨークのフラワーデザインでした。

「パリとニューヨークでは、色合わせが全然違うんですよ。
パリのフラワーデザインはナチュラルに、同系色でふわっとまとめるんですが、ニューヨークのそれは反対色を使った組み合わせが特徴。紫と黄色とか、青とオレンジとか、赤とグリーン、白と黒とか。

そういう組み合わせにインスパイアされて、ニューヨークで花を習いたい、と強く思いました。そしてたまたま家族が留学することになったのを機に、生後1ヶ月の娘の育児休暇中に一緒にアメリカに行っちゃいました(笑)」

アレンジを微調整する和気さま

ニューヨークスタイルのフラワーデザインを現地で習得した和気さんは、2008年にはAIFD(アメリカフラワーデザイナー協会)の認定に合格。一定期間勉強すればとれるというものではなく、いわばフィギュアスケートの芸術点のように、審査員の感性に訴えて高いポイントを取る必要があります。

2009年には『FLORALUXE』を法人化し、ニューヨークスタイルのエッセンスとテクニックを学ぶカリキュラム構成のNewYork Flower Schoolを六本木ヒルズ、南青山にて開校。AIFD審査員の資格も取得している和気さんから、AIFD取得のカリキュラムも受けることができます。

「日本にも日本フラワーデザイナー協会(NFD)の認定がありますが、これは多くの人が取得しています。次の段階としてアメリカの資格をとりたいという方が、うちにいらっしゃるんですよ」

日本にも”いけばな”という花の文化がありますが、ニューヨークスタイルのフラワーデザインとはどのような違いがあるのでしょうか。

「日本のいけばなは引き算の美学で、空間をすごくきれいに見せますね。点と線で結ぶようなデザインです。
ニューヨークスタイルでは、もっと迫力が求められます。山のように花材を使いますし。エネルギーがある花、見る人にパワーを与えるような花がめざすところとなります」

和気さまトップ画像

まさにふんだんに花材があしらわれ、圧倒的な生命力と存在感を放っている、和気さんのフラワーアレンジ。

和気さんご自身からあふれる鮮やかで優しいエネルギーを分けていただいているような気がしてきます。

イブニングドレスに匹敵する、着物の着こなし

エネルギーあふれるニューヨークスタイルの世界観は、和気さんの着物のスタイルにも確かに通じるものがあります。どんな感覚で着物を着こなしていらっしゃるのでしょうか。

「鮮やかな色って、パワーがあります。
たとえば今日の着物のピーコックブルーなら、帯はフューシャピンクを合わせてもいいですね。青みがかったピンクなら合うと思います。あとは白も合いますね……そんなふうに、私は着物のコーディネートにくすんだ色は使わないですね。グレーなどは選ばないですし、花も同じでくすんだ色は使わないです」

ターコイズブルーの半襟

重ね衿にはパキッとしたターコイズブルーを合わせて。

「大好きな色です」

指に止まった二羽の蝶は、ヴァン クリーフ&アーペルのリング。フラワーデザイナーである和気さんにぴったりです。

緑の中を歩く和気さま

そもそも和気さんが着物に親しむようになったきっかけは、「海外のパーティで着たいと思ったから」だそう。
渡米前に、自分で着られるようにと着付けを習いました。

「日本人として一番魅力的に見えるのは着物だと思っていたので。
イブニングドレスは上からすとんと落ちたデザインで肩を見せます。着物の場合は肩を見せませんが、日本人が着たらすごくエレガントですよね」

散策する後ろ姿

「着物を選ぶ時には、アメリカのパーティで映えるような、帯合わせや着こなしを考えます。
無地ならイブニングドレスと同じような感覚で着られるし、模様があったらもっとゴージャスに。

フランス大使館でのセリーヌのオープニングパーティにも、桜の訪問着を着ていきました。
洋服ならそのブランドのものでなくてはいけませんが、お着物だったらブランドの邪魔にならないし、フランス人のみなさんはとても喜んでくれましたね」

着物の裾
ヒールの高い草履

「草履も、洋装のヒールに負けないように高さのあるものを選んで、着物はあえて長めに着るんです。鼻緒が見えないぐらい長めに着ると、すごくエレガントに見える。
それが私なりのポイントです」

日本の女性は、もっと海外で着物を着ていかないともったいない、とおっしゃる和気さん。ゆくゆくはニューヨークで着物の情報を発信するスタイリスト的な仕事もしたいといいます。

「アメリカ人の友人から、着物探しを手伝ってほしいと頼まれたことがあるんです。ディスプレイ用に子どもの着物がほしいとリクエストされて、一緒に探しました。

一流の料亭に行くその一晩のためだけに、VIPのお客様が100万円を超える着物を誂えたという話も聞いたことがあります。文化に寄り添う着こなしをしていくことが、料亭に対する敬意のあらわし方だと。そういう心意気、素敵ですよね。そういう方のために、コーディネートの仕事をしたいと思っているんです。

花を組み合わせるように着物や帯、小物の色を選んでいます。そんな風に選ぶのがすごく楽しいんです」

和気さまを後ろから

和気さんは、20代の娘さん、そして大学生になったばかりの息子さんのふたりのお母様でもいらっしゃいます。

娘さんを生後1ヶ月でアメリカに連れていったというエピソードも聞かせていただきましたが、おふたりのお子さんを育てながらも、一流のクリエイターとして第一線で活躍されてきた和気さん。そのエネルギーの源はどこにあるのでしょうか。

「ラグジュアリーなライフスタイルを表現する方法として花という手段を選び、今はメインの仕事にしています。でもそれは仕事だからやっているわけではなくて……ライフスタイル全体を通じて、デザインすること、表現することが好きなんです。着物もそのひとつです。

ライフスタイルそのもので、気持ちも上がる。子どもがいるからセーブする、というものでもないですね。子どももその世界に引きずり込もうとしてて(笑)。今、息子に花を教えようとしています。本人もけっこうやる気になってるんですよ、『男性が花をいけられるのもいいね』って」

「好き」に正直になる=自分のスタイル

フラワーデザインにも着物の着こなしにも、はっきりと個性が映し出されているところには本当に憧れます。早速、元気の出る鮮やかな色合いのコーディネートにも挑戦してみたくなりますが、選ぶコツについて聞いてみました。

「自分が好きだと思う色を選ぶのがいいんじゃないかしら。好きなのが一番です。
私、選ぶのに迷わないですもの。好きなものは好きだから、ひと目でそれを好きかどうか分かります。

あとはそうですね、透明感は必要だと思います。にごってなくて、クリアな透明感がある色。黒にしてもはっきりとクリアであること。着物はシルクで光沢があるから、色が沈まずクリアに出やすいですよね」

着物の柄を見せる和気さま

なるほど、着物は鮮やかな色を楽しむのにうってつけというのは発見でした。
それに、和気さんの「自分が好きだ、と心動かされるものが一番」という言葉にも元気づけられます。

「やっぱり自分が好きなものっていうのが大切。それを突き詰めていくと自分のスタイルが身につくんじゃないかなと思います。

私は着物と帯を合わせて買うという考え方はしていなくて、それぞれ単独で魅力があり、惚れ込んだ品を選びます。自分が好きだと感じるものを集めていけば、自然とどれを組み合わせても大丈夫。無駄なものは出てこないと思いますよ」

散策する後ろ姿

「もちろん着物に限らずTPOは大切で、どの場にどんなものを着ていくのかはすごく重要だと思いますけれど。

基本的なルールをひととおり勉強すればあとは全部応用なので、あんまり怖がらなくても大丈夫かな」

とてもエレガントで、お手本にしたいところも多い和気さんの着物スタイルでしたが、何よりも見習いたいのは自身の「好き」を大切にするということ。
心躍るような「好き」を探しに出かけたいと思わせていただける、和気さんとの素敵な時間でした。

最後に、本記事公開にあわせて和気さんよりいただきましたクリスマスアレンジを。

和気雅美さまのクリスマスアレンジ

Happy Christmas!

構成・文/伊藤宏子

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