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金彩伝統工芸士 志賀豊さん 【YouTube連動・インタビュー編】 「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.5-1

金彩伝統工芸士 志賀豊さん 【YouTube連動・インタビュー編】 「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.5-1

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先日惜しくも花街を引退した人気芸妓・紗月さん。こちらの連載は、引退前に撮影した第5弾~第6弾まで続々公開予定ですのでどうぞお楽しみに!!さて今回は、瑞宝単光章を授与された金彩伝統工芸士・志賀豊さんを訪ねて。京友禅における「化粧係」と呼ばれる金彩の繊細な作業を間近で拝見する貴重な機会…基本技である筒描きに苦戦する紗月さんのオフショットにも注目です!

金彩の名工を訪ねて【YouTubeリンク】

約350年続く花街文化を支える職人さんたちの匠技を紹介することで後継者を発掘し、この先も絶えることない花街文化を継承していくお手伝いがしたい!そんな思いからスタートしたスペシャル企画番組「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」。

YouTube動画でMCを務めるのは、2013~2019年までの7年間、祇園甲部の売花奨励賞一等賞(人気ナンバーワン)を獲得した紗月さん。

実はこのたび2021年11月1日、紗月さんは、ご結婚のため大変惜しまれつつも花街を引退することとなりました。「きものと」ではその引き祝い*の様子もお届け予定ですが、引退前月となりました本連載の撮影時に花束をお渡しさせていただきました!

まずは紗月さん、今まで本当にありがとうございました!

*引き祝い:芸妓や舞妓が花街を辞めて出る時に行われるご挨拶周りのこと
11月1日に芸妓生活に幕を閉じた紗月さん
サプライズでお贈りした花束

芸舞妓のなり手や花街を支える職人さんを増やすため、SNSやテレビ番組を通じて積極的に発信を行ってきた紗月さん。こちらの連載も来年2月まで続きますので、引き続きどうぞお楽しみに!

今回も「そんなり姿」でご登場の紗月さん。

お召しになっているのは、風趣な竹笹文様が一面に染めあらわされた小紋。さりげない節感のある紬ちりめん地に描かれており、落ち着いた中にも豊かな表情が浮かび上がります。

竹笹文様の紬に京友禅の染め帯をスタイリング

帯には、御所解文様を描いた京友禅の染め帯を合わせて。
こっくりとした深みの焦茶色が美しい塩瀬地に紅葉を思わせる柿朱色の帯締めが映えて、季節にふさわしい、そして大人の風情漂わせる装いです。

御所解文様が描かれた京友禅の染め帯

そしてこちらの第5弾でお送りするのは、金彩の世界。

「金彩」は、染め上がった生地に金や銀の箔・金粉などを接着加工する技術です。着物を最終段階でより美しく彩る作業であることから、”化粧係”と呼ばれることも。
その驚くほど繊細な金彩伝統工芸士の手仕事をご堪能ください。

金彩伝統工芸士の技

瑞宝単光章を与えられた匠の技

今回取材させていただくのは、京友禅の金彩伝統工芸士・志賀豊さん。
瑞宝単光章受賞のほか、第16回金彩工芸展金彩優秀賞をはじめ手描友禅染作品展や工芸染匠作品競技会等々、数えきれないほどのたくさんの賞を受賞されている京の匠です。

「うちも普段から金彩を使ったお着物を着させてもろうてるので、(お話を伺うのが)楽しみです!」

と、紗月さん。

伊と幸ビルの6階に本社があります

訪れたのは、志賀さんのマネージメントも担われているという京都室町の絹の老舗白生地メーカー『伊と幸』。

同社の素材を採用した着物や帯の仕上げを、志賀さんが担当しています。

まず、紗月さんが志賀さんに教えていただいたのは、金彩の基本。

友禅染の糸目糊を引いた後の白く残った線を金線でなぞっていく、「筒描き(つづがき)」や「金括り(きんくくり)」と呼ばれる技法についてです。

瑞宝単光章 志賀豊さん
瑞宝単光章受賞 志賀豊さん
筒描きに必要な道具、渋柿で固めた和紙と中金
筒描きに必要な道具、渋柿で固めた和紙と中金

柿渋(かきしぶ)で固めた強度のある筒状の和紙には、“中金”という穴の空いた金属製の小さな筒が入っています。これはお菓子づくりに使われる絞り袋のような役割を果たし、筒の先端が細ければ細いほど、繊細な線を描くことができるのです。

0.01mmの中金は目を凝らしてようやく見えるほどの大きさ
0.01mmの中金は目を凝らしてようやく見えるほどの大きさ

志賀さんは仕事によって色々な太さの中金を使い分けていますが、一番細いものは何と0.01mm!ほとんど穴が空いていない状態になっています。

そしてこちらが、極限まで細い先端で描いた『孔雀明王』。

明王が背負った孔雀の羽の一枚一枚までも、すべて金彩にて細密細緻に表現されていること…お分かりいただけますでしょうか。

金彩で描かれた孔雀明王
すべて金彩で描かれた『孔雀明王』
「純金ですか?」と紗月さん

「使われている金粉は純金ですか?」という紗月さんからの質問に、志賀さんは思わずどきり!

「いえいえ、純金やったらえらい金額になるのでね(笑)。金粉と金糊を混ぜてといたものを使っています」

金粉と金糊を混ぜ合わせたものを筒状の和紙に流し込む
金粉と金糊を混ぜ合わせたものを筒状の和紙に流し込む

それを少しずつ絞り出しながら線をなぞっていくのですが、これがとても難しい作業。
一見簡単そうに思えるのですが、力を入れすぎると筒から太く出てきてしまうので、線がしっかりなぞれてかつ強すぎないよう、絶妙な力加減に調整する必要があります。

今回は本格的な金彩体験の前に、少しだけ紗月さんも作業に挑戦させていただきます!

着物に化粧を施す、金彩一筋58年

筒描きに初挑戦

志賀さんのように0.01mmの中金を使うのは難易度が高いため、紗月さんには、少し太めのものをご用意いただきました。鉛筆持ちではなく軽くグーした状態で先端を掴み、生地と平行に左から右へと引っ張るイメージで線をなぞっていきます。

筒描きに苦戦中の紗月さん
筒描きに苦戦中の紗月さん

「あ〜もう難しい〜〜!(笑)」と苦戦する紗月さん。

何より難しいのは、「均等に」金を出していくこと。どうしても最初は、紗月さんのように出し過ぎてしまい、線の先端がダマになってしまいます。

志賀さんの作業を見つめて

一方、伝統工芸士としての技を極めた志賀さんはなんとこの道58年。
中学卒業とともにこの道に入ってから現在まで金彩一筋、集中力が問われる手作業をずっと担ってきました。

金彩の楽しさを語る志賀さん

「着物の仕事としては、色や染めの工程を経た最後の方の作業になります。だから女の人で言うたら、“お化粧”をするような仕事なのですごく楽しいです。この仕事を辞めようと思ったことは1回もないですね」

京都にいる金彩の職人は組合に入っている方で26名。筒描きの技術を持てども、志賀さんのように極細の筒描きを可能とする職人は他にいらっしゃいません。中金も市販の物ではなく、特注で作ってもらっているそうです。

そんな志賀さんが仕上げた貴重な作品を見せていただきました。

志賀さんのお話を聞く紗月さん
熱心に耳を傾ける紗月さん。
志賀さんが仕上げた友禅染め

雄大な流水文様を背景として、松葉や竹笹などの伝統意匠が豪華に描きあらわされた京友禅の豪華な訪問着。
よく見ると波濤は銀箔で縁取られ、松葉の先端は金箔に、そして遠山も金砂子であらわされていることがわかります。

立体的に見えるよう工夫された金彩の壺
立体的に見えるよう工夫された金彩の壺

また立体的に浮かび上がるような壺が描かれた、志賀さんオリジナルの染めの名古屋帯も。

「人が見はって、『どうしてはるんかな?』と気になってもらえるように頑張っています」

そんな志賀さんが手がけた作品は、一般の方から有名人まで幅広い方々がお召しになっています。演歌歌手の石川さゆりさんがロームシアターでコンサートを開催した時には、その衣装を仕上げたことも。昔からご皇室の方々の着物も手がけていらっしゃるそうです。

「これは誰が着はるという依頼で注文が入ることもあるので、それはやっぱりやってて楽しいですよね」

金彩体験中の模様

なにやら、とても楽しそうな様子のお二人。

次回はいよいよ、紗月さんが友禅&金彩を体験!筒描き以外の技法についても志賀さんに教わっていきます!

撮影オフショット

カメラテスト中の紗月さん、今日も笑顔が素敵です!
カメラテスト中の紗月さん、今日も笑顔が素敵です!
焦茶色の塩瀬地に御所解文様が映えて、後ろ姿も華やかに
焦茶色の塩瀬地に御所解文様が映えて、後ろ姿も華やかに
興味深く、金彩についてのお話を伺う紗月さん
興味深く、金彩についてのお話を伺う紗月さん
58年間、金彩一筋でやってきた志賀さん
58年間、金彩一筋でやってきた志賀さん
筒描きに苦戦する紗月さんを優しく見守ってくださいました♪
筒描きに苦戦する紗月さんを優しく見守ってくださいました♪
金彩を施すことにより、さらに着物が美しく上品に仕上がります
金彩を施すことにより、さらに着物が美しく上品に仕上がります
志賀さんが手がけた京友禅の前で記念撮影
志賀さんが手がけた京友禅の前で記念撮影

京都で花開き発展した京友禅。日本三大友禅の中でも最も歴史が古く、豪華絢爛な染めの技法として世界に名を馳せています。まさに日本を代表する伝統工芸品の一つ。日本のみならず世界中の着物ファンを魅了してやまない京友禅。知っておきたいその歴史や特徴、京友禅ならではの技法や魅力も詳しく解説しています。

京友禅染匠・富宏染工、京友禅の未来

彩琳社長、藤井友子さんのコラムはこちら!
「ひとつひとつの色をつくる 、京友禅染匠がみる景色」

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