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御菓子司 亀廣脇 秋を告げる『高雄』の紅葉「和菓子のデザインから」vol.6

御菓子司 亀廣脇 秋を告げる『高雄』の紅葉「和菓子のデザインから」vol.6

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旬の食材を取り入れるだけでなく、見た目の季節感も大切にする和菓子の世界。季節を少しだけ先取りするところも、きものと通ずる心があります。共通する意匠やモチーフを通して、昔から大切にされてきた人々の想いに触れてみませんか。「一客一亭」のおもてなしを大切に上生菓子は予約制を貫く「亀廣脇」の秋の定番『高雄』をご紹介します。

御菓子司 亀廣脇 秋色愛でる『四季の茶心』 「京都・和の菓子めぐり」vol.10

二条城の北西に店を構える「御菓子司 亀廣脇」。「売るための菓子づくりではなく、買うための菓子づくり」を創業から三代にわたって貫く。京の老舗「亀末廣」のDNAを受け継ぐ名店で見つけた「小さな秋」の詰め合わせをご紹介します。

私だけの秋をリザーブ

「亀廣脇」の上生菓子は予約制である。
以前ならそこでウッと怯んでしまっていた方も、コロナ禍を経て「予約」や「取り置き」に対する意識が身近になったのでないでしょうか。

上生菓子の価格が均一なので、「お任せ」でも安心して注文できるのが初心者にもうれしいところ。
3日ほど前までに電話で注文すれば大丈夫です。

予約制をとっているわけは「一客一亭」つまり、一人の客と亭主だけの茶事のように、お客さま一人ひとりにしっかりと向き合うことを信条としているから。
創業以来、「売るためのお菓子作りではなく、買うためのお菓子作りをせよ」との継言を貫いているのです。

秋の定番の一つが、こなし製の紅葉の上生菓子。
白あんに小麦粉と餅粉を加えて蒸しあげた「こなし生地」でこしあんを包んでいます。

生菓子「高雄」

この季節の黄色や橙色の上生菓子といえば、そぼろ状の餡をつけた丸いきんとんでも、四角い羊羹でも、ほぼほぼ紅葉をモチーフにしているといっても過言ではありません。

もみじの菓子型

「どんなに抽象的な形でも一目で紅葉だとわかってもらえるなか、フォルムがはっきりとする型を使った上生菓子は京都では逆に少ないかもしれませんね」と口脇さん。

生菓子の作業風景

この上生菓子のチャームポイントは何と言っても色彩の表現。

黄色と橙色に染めた2色のこなし生地を重ねる際に、中心を少し外しているのが気になっていたのですが、その理由がわかるのはのちほど。

2色を重ねたこなし生地で、さらにこしあんの玉を包んでいきます。

生菓子の作業風景
生菓子の作業風景

型にはめる際にちらりと見えたのは、橙色の生地にポッと浮かび上がる黄色の染めぼかし…!

上下の木型で挟んでから、強めにトンッと手のひらに打ち付けるようにすると、葉脈が刻まれた紅葉が現れました。

中心を外して重ねた黄色がほんのり透ける様が見事です。

生菓子の作業風景

「このボカシがど真ん中だと、面白くないんですよね。モミジは真ん中から染まるのではなく、陽の当たる端の方から染まっていきますから」

黄色と橙色が入り混じったさりげないグラデーション。
葉っぱ一枚の姿ながら、錦繍に染まりゆく山全体を表しているようにも見える、繊細かつ大らかな美しさです。

モミジの語源は揉出(もみづ)から

秋になると赤色や黄色に色づくカエデ科の植物の多くを「モミジ」と呼びますが、もともとは染料をギュッと揉んで染色する「揉出(もみづ)」という動詞が名詞へと変化したものだといわれています。

柄名としては「楓文(かえでもん)」が一般的。
着物や帯の柄でも秋の定番であり、組み合わせによっては通年お召しいただける万能柄にもなります。

楓文は「長寿」を表すおめでたい柄であるほか、季節によって色を変え、その美しさで人を喜ばせることから世渡り成就のモチーフとしても愛されています。

また、柄の組み合わせによって呼び名が変わるのも面白いところ。

秋の行楽が紅葉狩りなら、春の行楽は花見。
日本人が愛してやまない二つの季節の美しい桜と楓を合わせたのが「桜楓文(おうふうもん)」です。
季節を問わずお召しいただけ、華やかさもあるので成人式や結婚式、パーティなどのおめでたい席に重宝する柄行きです。

流水文様と合わさると「竜田川」柄になります。
流水文様には、よどみなく流れる水の浄らかさや、厄を流すといった魔除けの意味があるので、子どもの着物にもぴったりです。

歌枕としても使われてきた「竜田川」は、古くから紅葉の名所で、現在の奈良県生駒郡斑鳩町にある竜田山を流れる川のこと。
和菓子においても楓と水の意匠を取り入れたものの菓銘として使い方が共通しています。

菓銘で訪ねる秋の名所

秋の和菓子店を鮮やかに彩る、紅葉をモチーフにした和菓子たち。

その菓銘も「初もみじ」「色づき」「照葉(てるは)」「錦繍(きんしゅう)」「遠もみじ」「錦野」「深山(みやま)」「梢の錦」など、さまざまです。

そんななか、「竜田川」と同じく、紅葉の名所を菓銘にしているのが亀廣脇の『高雄』。

「うちではずっと昔から『高雄』の銘でお出ししています。見た目がはっきりとしているからこそ、直接的ではない菓銘をつけることができたのでしょうね」と、口脇さん。

3代目の口脇 治さん

嵐山や嵯峨野のさらに奥に位置する「高雄」。

数多くの紅葉の名所を有する京都でも、いち早く色づき始めるのが、栂ノ尾(とがのお)・槇ノ尾(まきのお)・高雄(高尾)からなる「三尾(さんび)」エリアだといわれています。

それでも色づくのはまだ少し先になるのが待ちきれないという方は、まずは和菓子の紅葉狩りから楽しまれてはいかがでしょうか。

紅葉モチーフの上生菓子「高雄」

撮影/佐藤佑樹(Grit)

京都きもの市場 秋のアウトレット特集

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