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御菓子司 亀廣脇 秋色愛でる『四季の茶心』 「京都・和の菓子めぐり」vol.10

御菓子司 亀廣脇 秋色愛でる『四季の茶心』 「京都・和の菓子めぐり」vol.10

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二条城の北西に店を構える「御菓子司 亀廣脇」。「売るための菓子づくりではなく、買うための菓子づくり」を創業から三代にわたって貫く。京の老舗「亀末廣」のDNAを受け継ぐ名店で見つけた「小さな秋」の詰め合わせをご紹介します。

夏が終わったというにはためらいが残るものの、朝夕のさらりとした風や空高くを流れる雲の形に秋の気配を実感する今日この頃です。

そんななか、和菓子の世界には着々と秋の訪れが…。

亀廣脇外観

「御菓子司 亀廣脇」は千本丸太町から徒歩約3分。
これからの涼しい季節なら、地下鉄東西線の二条城前から二条城のお堀をぐるりと眺めつつ、のんびり向かうのもいいでしょう。

住宅街に馴染む気さくな店構えながら、端正な白暖簾がただ者ではないことを告げているよう。

亀廣脇の暖簾

「ひろ脇」の文字を囲む丸は、よく見ると亀の姿を意匠化したもの。
これは、初代が暖簾分けを許された京都の老舗和菓子店「亀末廣」(姉小路烏丸東入る)と同様。

京菓子店の屋号には「亀屋」さんが多くありますが、暖簾の他に包装紙や店内の意匠にも亀のモチーフや亀甲柄が使われているので、意識して探してみると楽しいですよ。

亀廣脇店内

店内に入ると、亀の親子がちょこんとお出迎え。
畳縁にも亀甲柄が使われています。

さて、本家ともいえる「亀末廣」の代表銘菓といえば、お干菓子の詰め合わせ『京のよすが』。
中を四畳半の間取りのように区切った箱に季節のお干菓子が入っていることから、そのまま「四畳半」の愛称でも親しまれています。

こちらの「亀廣脇」の詰め合わせは、間取りが半畳控えめな四畳タイプ。
『季節の茶心』と名付けられた詰め合わせには、落雁や琥珀、金平糖などのお干菓子と、こしあんを包んだ求肥製の半生菓子が美しく収まっています。

干菓子と半生菓子の詰め合わせ『四季の茶心』

四畳半のDNAを受け継ぎつつも、「極力、亀末廣さんと同じものは詰めないように心がけています」と話してくださったのは3代目店主の口脇 治さん。

なんと治さんのお祖父様は亀末廣で働いていた頃、『京のよすが』の誕生に職人として深く関わったのだそう。

「僕は直接、祖父のことは知らないのですが、それが祖父の自慢だったと父から聞かされたことがあります」

干菓子と半生菓子の詰め合わせ『四季の茶心』

そして初代であるお祖父様の代から好評を得ているのが、左下の一畳に収められている求肥の半生菓子。
お干菓子に比べると日持ちが短くなってしまう半生菓子ですが、これを楽しみにしている常連さんも多く、治さんもやはり特に気合が入る一品だとか。

干菓子と半生菓子の詰め合わせ『四季の茶心』

「材料は同じでも、季節感が一番感じられるのがお干菓子や半生菓子だと思うんです」と話す治さん。
それは言い換えれば、材料はいつでもほとんど同じだからこそ、なおさら季節を意識してつくらねばならないということ。

つくり手の心をも魅了する奥深さ。
繊細な手しごとに裏打ちされた季節の表現。

色のかさねや意匠だけでなく、もっちりとした食感や、しっとりほどける口どけ、全ての要素が豊穣の秋の恵みへと繋がっていく印象です。

お日持ちは約1週間。
全て食べ終わる頃には、すっかり過ごしやすくなっていることを祈って…。

亀廣脇外観

撮影/佐藤佑樹(Grit)

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