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海外でも愛用されるきものガウン 『ローズメイカー 奇跡のバラ』『幸せの答え合わせ』 「きもの de シネマ」vol.1

海外でも愛用されるきものガウン 『ローズメイカー 奇跡のバラ』『幸せの答え合わせ』 「きもの de シネマ」vol.1

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。連載初回は、現在公開中の『ローズメイカー 奇跡のバラ』『幸せの答え合わせ』をご紹介します。

異国のバラ園で、キモノひらり

はじめまして。
梅雨の晴れ間といいますか、梅雨は何処に?と訝しむほどの暑さに、フライングで小千谷縮を出してしまった、映画大好きのんべぇライター椿屋です。以後、どうぞお見知りおきくださいませ。

きものでシネマ

わたくしのモットーは、「映画はひとりで、劇場で」。
年間200本以上の新作を映画館で鑑賞しておりますので、一日に2,3本ハシゴすることも珍しくありません(人生最高本数は、モーニングショーからレイトショーまで1日8本!)。シネコンはもちろん京都の単館は複数シアターを有しているため、予告の時間を見越して続けざまの予約もお手の物でございます。
ときに号泣し、ときに爆笑し、ときに眠り……ながら、シネマライフを満喫しております。

さて、そんな映画愛好者のわたくしが、記念すべき初回にご紹介するのは――洋画に登場する「和」の装い。

先日テレビ放映された『ボヘミアン・ラプソディー』の人気ぶりが記憶に新しい方も多いと思います。あの有名作のなかでも、和服が使われていたのをご存知でいらっしゃいますか?
イギリスのロックバンド「クイーン」のヴォーカル、フレディ・マーキュリーは親日家でも知られ、キモノがお好きでした。来日すると休日には京都を訪れ、キモノや骨董品などを買い求め、果ては自宅に日本庭園まで造ったというからよっぽどです。
作中では、ガウン代わりに長襦袢を着ているシーンで何気ない日本愛を示してくれています。

そして、現在公開中の映画でも、印象的な和の衣装を身にまとう女優をご覧いただけます。
ひとつは、『ローズメイカー 奇跡のバラ』。

『ローズメイカー 奇跡のバラ』
『ローズメイカー 奇跡のバラ』© 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

倒産寸前のバラ園を舞台に、バラ育種家とド素人3人組が、世界にたったひとつだけの新種のバラ創りに挑む心あたたまるサクセス・ストーリー。

『ローズメイカー 奇跡のバラ』
『ローズメイカー 奇跡のバラ』© 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

亡き父から受け継いだバラ園のことしか頭にない頑固な園主エヴと助手のヴェラのもとにやってきた、世間から見放されて人生に躓いたはみだし者たちが、数々の失敗や問題を乗り越えながら、少しずつ心を通わせていく朗らかな作品です。

『ローズメイカー 奇跡のバラ』
『ローズメイカー 奇跡のバラ』© 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

人間味あふれる想いに目覚めていくさまをユーモラスかつ情熱的に演じたのは、『大統領の料理人』でも知られるフランスの国民的大女優、カトリーヌ・フロ。
彼女が美しい花々にも劣らぬ「華やかな桃色の襦袢」をガウン代わりにバラ園を颯爽と進んでいくシーンは、思わず見入ってしまいます。

『ローズメイカー 奇跡のバラ』
『ローズメイカー 奇跡のバラ』© 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

ままならないことも、理不尽なことも、人生には山ほどございます。自分自身に嫌気が差すことだって、他人を信用できなくなることだって。けれど、禍福は糾える縄の如し。だから、人生は面白い。互いに譲り合い、ときに傷つけ合いながら、歓びを分かち合う、心の適度なディスタンスをとても巧みに描いた良作です。

気軽に羽織って、自由自在に

そして、もうひとつ。全国順次公開中の『幸せの答え合わせ』も併せてご紹介いたします。

『幸せの答え合わせ』
『幸せの答え合わせ』© Immersiverse Limited 2018

こちらは、ほんわかほのぼのとはまいりません。
ゴールデングローブ賞に輝く名優たちの競演にて紡ぎ出されるのは、ほろ苦さが残るリスタート・ストーリー。

『幸せの答え合わせ』
『幸せの答え合わせ』© Immersiverse Limited 2018

結婚29年目のある日、夫による突然の離婚宣言で始まる本作は、ウィリアム・ニコルソンが自らの両親との実体験をベースに脚本を書き上げ、監督も手掛けた家族劇でもあります。

まさにその、別れを切り出す重要なシーンで、主人公扮するアネット・ベニングが、シャツ&デニムというカジュアルな服の上に「いくつもの四角形がちりばめられた羽織」を重ねているのです。丈の短い羽織は、軽めの上着としても重宝するという良き見本ですね。

『幸せの答え合わせ』
『幸せの答え合わせ』© Immersiverse Limited 2018

邦画でも、キモノといえば時代劇に偏りがちですが……、中山美穂が遺伝性アルツハイマーを患う作家役に挑んだ『蝶の眠り』(2018年公開)では、キモノを部屋着として着用している姿が大変印象的でした。

また、さまざまな女性たちが集い、美味しい食事と楽しい会話で心を満たす『食べる女』(2018年公開)の主演を務めた小泉今日子が、洋服の上にキモノをコーディネートしていたのもお洒落で、思わずうなってしまったのを覚えております。

映画でもドラマでも本の中でも、すてきなキモノ姿に出会いますと、着たい、欲しい、誂えたい……といったキモノ欲が際限なく湧いてくるものでございます。であるならば、たまにはキモノで映画館を訪れてみてはいかがでしょうか。これからの季節、単衣や浴衣に半幅帯などを合わせて軽やかに。
洋画におけるキモノの活躍を、どうぞスクリーンでご覧くださいませ。

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