着物・和・京都に関する情報ならきものと

心のままに、色合わせを楽しむ 「花柳凜の、和でも洋でも美しく」vol.5

心のままに、色合わせを楽しむ 「花柳凜の、和でも洋でも美しく」vol.5

記事を共有する

世界はさまざまな美しい色であふれています。空も、海も、大地も、刻々と移り変わる景色の中でひとつとして同じ色はありません。「色」とは私たちにとって常に、季節や心や感情などにすばらしいインスピレーションと活力を与えてくれるもの。着物は「色を纏う」と言ってもよいほど繊細な色彩の表現を大切にする衣服です。そんな着物での色合わせの楽しみ方や、TPOに合わせたナチュラルな色合わせについてお話したいと思います。

自然美に育まれてきた日本人の感性

日本では古来から「色彩」へのこだわりが大切にされてきました。

日本に豊かな伝統色がこれほどまで数多く存在し、それぞれに美しい名前がつけられ大切にされてきた理由…
それは、日本が小さな島国でありながら豊かな四季に恵まれ、その季節ごとに様々な動植物に囲まれ、自然の変化と恵みの上で見事な自然色に育まれた、不可侵の長い歴史があったからだといわれています。

日本の伝統色

例えば「春の色」というと何色が思い浮かびますでしょうか。
桜から連想される「ピンク」でしょうか。

例えばそのピンクひとつを取っても、日本の伝統色であらわせば、その色名はゆうに30色を超えます。
桃色・桜色・鴇色(ときいろ)・牡丹色・薄紅色・珊瑚色…
よく見比べなくては分からないほどでも、そのわずかな違いに気付き、また大切にする感性が日本では育まれてきました。

バリエーション豊富な伝統色

そんな日本人の色彩感覚は、着物の色彩に見事にあらわれています。
しかし、だからこそ、着物・帯・小物、それぞれの細かい色合わせに悩んでしまうこともありますよね。
私も、和装の色合わせとなると何時間でも悩んでしまいます。

今日は「着物の色合わせによっての印象」や「豊かな色彩の可能性からかえって悩んでしまったときにおすすめの組み合わせ」についてお話したいと思います。

◆春におすすめの組み合わせ

春は、フォーマルなイベントから賑やかなパーティまで様々なイベントが行われますね。
色味としては、やはり春は「華やかでありながらやわらかい雰囲気のペールトーン」が重宝されます。

ペールトーン×ちりめん
ちりめん生地

たおやかな桜、霞に包まれたやわらかな新緑など…
自然界も、ふんわりとした優しい色味であふれています。
そんな空気感によく馴染むのは「ペールトーン(色) × ちりめん(生地)」。

ちりめんの生地は、「シボ」と呼ばれる凹凸から生まれる独特の風合いが、とても上品な印象。

光沢が抑えられますから控えめで、楚々とした女性らしいやわらかさがあります。
華やかな色使いでも、ちりめんの風合いは一歩引いた慎みあるムードですし、見た目の印象だけでなく「シワになりにくい」という特徴があるので、座る時間が長いおでかけには大変重宝します。

ペールトーン×綸子

逆に、光沢感を活かした「ペールトーン(色) × 綸子(生地)」も、華やかな場にはぴったり。
春の、爽やかでやわらかな日差しを浴びた綸子の生地は、パッと目を引く華やかさを演出してくれます。

ツヤツヤと輝く「ペールトーン × 綸子」の着物には、顔色も艶やかに見せる効果も。
若々しさと高級感がありますので、特に自然光を浴びるような野外での催しにはおすすめです。質感もやわらかく着心地もよいので、気持ちまで晴れやかになりますね。

◆色合わせのコツ【逆色】

逆色のとりあわせ

着物の色合わせとしての王道は「逆色」の合わせ方です。
もし洋服で、トップスとボトムス、インナーとジャケットなどを逆色で合わせたなら…
あまりに派手でかなり上級のテクニックになりますが、着物ではなんとも不思議なことに、着物と帯、帯と小物など、逆色は「ベーシックな色合わせ」となります。

特に、にぎやかで晴れやかな場には、逆色のコーディネートが重宝されます。

 朱色 × 若草色
 桃色 × 浅葱色

など補色の関係にある色味の組み合わせは、華やかかつ古風な雰囲気をかもし出します。

困ったときには白か黒を使うのもおすすめですので、最初のうちは着物か帯を白や黒から集めはじめると、コーディネートがしやすいかもしれません。

「白の着物に緋色の帯」は、格調高く、また目をひくおすすめの組み合わせです。

白の着物に緋色の帯

◆色合わせのコツ【同色】

同色コーディネート

控えめなムードを大切にしたいときや、モダンでスタイリッシュな雰囲気でまとめたいときには、上級テクニックではありますが「同色コーディネート」をおすすめします。

実は私は、同色コーディネートが好きでよく取り入れています。
特に、お稽古のとき、また裏方で何かお手伝いをするときなどに重宝しています。

同色コーディネートのコツは、小物使い。
帯締めや帯揚げにさり気なく反対色を持ってくることで、ぼんやりとしがちな同色コーディネートにメリハリが出て、主張も強すぎず、スッキリとしたスタイリングになります。

同色コーディネート

着崩れがありお見苦しいのですが…
このとき母はベージュや金茶で、私は薄いグリーン系でまとめており、帯揚げや帯締めなど小物も全て白系です。挿し色もありません。

慣れないと少しおもしろみがなく感じるかもしれませんが、控えめで慎ましい印象となります。

私は、お呼ばれや展示会・美術鑑賞など、自分が目立たずまわりのものを立てたいとき、また美しいものや多彩な色彩があふれるような場に伺うときは、挿し色も入れない同色コーディネートをよく使っています。

◆色合わせのコツ【白と黒】

全身黒のコーディネート

これはかなり特殊ですが、黒の全身コーディネートです。
全身黒(通常は喪服)ですから素材にとても気を付けないといけませんが、アヴァンギャルドな雰囲気で、パーティやイベントなどでモダンに楽しむ新しい着物のスタイルだと考えています。

また、悩んだときに重宝するのは「白 × 黒」の組み合わせです。
これは洋服でも同じですね。

このように「白 × 黒」のスタイリングは、洋服ではシンプルで落ち着いたイメージになります、着物ではどちらかというと存在感を増し派手になります。
「白の着物 × 黒の帯」の取り合わせは、大変に印象的な装いとなりますね。

白×黒のコーディネート

色合わせを楽しんで

洋服と同じく着物でもTPOは大切ですが、どうしても、小紋か付け下げか訪問着か、など格ばかりにとらわれがちです。
しかし実は、色合わせによってもかなり印象が変わります。

例えば、「今日は大切なお友達の結婚式だから振袖(訪問着)ならよし」ということだけではなく、「花嫁さんがメインなのだから同色系でまとめて控えめにしようかな」だとか、「お呼ばれの席でぜひにぎやかにしてほしいと声を掛けてもらったのだから、古風で華やかな反対色のコーディネートにしてみよう」など、着物の色合わせとは、ルールやマナーだけでなく、思いやりの精神にも通じるところがあると感じます。

着物は、敷居が高くきまりも多いと思われがちですが、私としては、十人十色、人によって似合う色も好きな組み合わせもそれぞれで、何が正しいということはなく、心のままに、着ていて楽しいスタイリングが一番だなと思います。

日本古来の豊かな伝統色に想いを馳せて、様々な色合わせを楽しみたいですね。

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS注目のキーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する