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今さら聞けない!アニメ『鬼滅の刃』に登場する柄・模様と、込められた意味

今さら聞けない!アニメ『鬼滅の刃』に登場する柄・模様と、込められた意味

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「個性豊かなキャラクター描写」は『鬼滅の刃』の魅力のひとつ。それをより強固にしているのが、彼らが着ている”衣装”です。今回は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に登場するキャラクターの着物に描かれた柄・模様をご紹介。まだ『鬼滅の刃』の世界に触れていない方も、文様に込められた意味から作品を楽しんでみてはいかがでしょう。

個性豊かなキャラクター描写が光る『鬼滅の刃』

2020年、空前のブームを巻き起こしたアニメ『鬼滅の刃』。
新型コロナウイルスが収束しないまま2021年も春となりましたが、『鬼滅の刃 遊郭編』 テレビアニメ化が決定するなど、この作品の大ヒットも今なお熱く続いています。

本作は週刊少年ジャンプ(集英社)で連載されていた吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さんによる漫画が原作で、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は年末に興行収入324億円を突破し、ついに国内興行収入1位となりました。

原作のおもしろさやアニメの映像美など、ヒットした理由は様々に考えられますが、魅力のひとつとして「個性豊かなキャラクター描写」が挙げられます。
それをより強固にしているのが、彼らが着ている”衣装”。
和と洋が融合した、色とりどりの衣裳が注目されています。

大衆文化が花開く大正時代

鬼に家族を惨殺された主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が、鬼に変貌した妹・禰󠄀豆子(ねずこ)を人間に戻すため、鬼退治を目的とした組織「鬼殺隊(きさつたい)」に入隊し、成長していく姿を描いた『鬼滅の刃』。

その舞台は、大正時代です。
大正は、1912年から1926年まで約15年という短い期間に、大衆文化が美しく花開いた時代でした。

第一次世界大戦の影響により日本は不景気になり、さらには関東大震災が起きたことで国民の間で不満がたまりはじめた大正初期。
国民は自由な暮らしを求め、1918年には米価格の急騰に伴う米騒動が発生。第二次護憲運動を経て1925年には普通選挙を実現させるなど、民衆によるデモクラシー運動が盛んに。
その裏で発展していったのが、西洋文化も取り入れた“和洋折衷”の大衆文化でした。

洋風の建物も増え、ビジネスオフィスやデパートなどが建設されたのもこの頃。
ファッションに限っていえば、洋服を取り入れた「モダンボーイ」「モダンガール」と呼ばれる若い男女が登場し、女性はスカート、男性はスーツなどを着用しはじめます。

和服にも変化があり、「アール・ヌーヴォー」というヨーロッパ発祥の美術運動の影響を受けた、花や草木などの植物をモチーフとした柄も流行しました。この時期の着物は色あざやかでかわいらしく、今でも「アンティーク着物」として根強い人気を誇ります。

また女性の高等教育もはじまり、制服として、着物よりも動きやすい袴を着る女学生も。
紫と白で構成された矢絣の着物に、赤茶色の袴を重ねた『はいからさんが通る』の主人公・花村紅緒のスタイルも有名ですね。

情勢も文化も、変革期。
民衆の力で時代を動かせるかもしれない!という勢いがあり、今なおこの時代の文化や雰囲気に憧れる人が多いのも頷けます。

『鬼滅の刃』の衣装

『鬼滅の刃』でも、一般市民の服装を見てみると、着物や袴を着ている人もいれば、原初の鬼「鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)」のようにスーツを着用した人たちもいました。

一方、鬼殺隊の剣士たちはみんな学ランのような隊服を着用しています。
学ランのように上下がつなぎになっており、スボンは幅広。裾はたっつけ袴同様、膝から下が脚絆のように仕立てられています。
鬼殺隊とひと目で判断でき、なおかつ鬼と戦いやすい軍服のような役割を果たしているのでしょう。

ただその反面、全員が同じ衣服を着用していると、キャラクターの見分けがつきづらくなるという難点があります。
近年はアニメキャラのコスプレをして写真を撮ったり、イベントに参加したりするファンも多いため、マーケティング戦略的にもひと目でキャラクターを判別できる個性的な衣装が欲しいところ。

そのため『鬼滅の刃』では、メインのキャラたちはみな、隊服の上に色鮮やかな羽織を着用しています。

今回は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に登場するキャラクターの着物に描かれた柄・模様を紹介いたします。

繁栄をあらわす「市松模様」で命を繋ぐ炭治郎

まず、主人公の炭治郎(たんじろう)が着用している羽織は「黒と緑色の市松模様」が特徴的。

「市松模様」は、江戸時代に歌舞伎役者の佐野川市松が舞台『心中万年草(高野山心中)』に出演した際、白と紺の市松模様の袴を着用したことで、当時女性の間で流行しました。
“推し”とお揃いの衣装を着たいという気持ちは当時から存在したのですね。

また、碁盤目状の格子が色違いで交互に並べられており、その柄が際限なく続いていくことから“繁栄”の意味が込められています。
「子孫繁栄」や「事業拡大」の意味で贈り物などにも使われる柄ですが、炭治郎の場合は、「鬼から家族や市民を守る=“命を繋いでいく”」という意味が込められている…とも解釈できそうです。

さらに市松模様は『鬼滅の刃』と合わせて、今年開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムでも使われているため、令和初期の時代をあらわす旬の柄。
コロナでどのような開催となるかはいまだ不透明ですが、オリンピックの気運が高まった際にさらりと市松模様を取り入れたコーディネートでお出かけすれば、注目されること間違いなしです。

厄除け・魔除けの「麻の葉模様」を着る禰󠄀豆子

そして炭治郎の妹である禰󠄀豆子(ねずこ)も、赤と白で構成された市松模様の帯をしめています。ただ、彼女は鬼殺隊ではないので、隊服は着用していません。

その代わりに、ピンクのかわいらしい色味をした「麻の葉模様」の着物を着て、その上から、隊服と同じく黒の羽織を合わせています。

「麻の葉模様」は古く使われてきた伝統的な文様で、正六角形が際限なく重なり合うデザインが特徴的です。

星のようにも見えるこの形が植物の麻の葉に似ているということからその名が付けられましたが、麻の葉そのものをモチーフにしているわけではありません。
大正時代に流行した植物文様由来のものではなく、麻の葉模様は、「子供の健やかな成長」を願う厄除けや魔除けの意味で、江戸時代にも、産着や子どもの着物に使われていました。

鬼に惨殺された炭治郎の家族の中で禰󠄀豆子が唯一生き残ったのも、この「麻の葉模様」の力が影響しているのかもしれません。

善逸を守る「鱗文」の羽織

善逸の羽織には鱗模様

また、善逸(ぜんいつ)が着用する羽織の「鱗文(うろこもん)」も、麻の葉と同じく魔除けの力を持つと言われています。
いざという時には禰󠄀豆子や仲間のために覚醒し、鬼と戦う頼もしさもありながら、普段は気弱で怖がりな一面がある善逸にぴったりな“守り”の柄ですね。

善逸はこの柄の羽織を、育手(そだて)である“じっちゃん”こと桑島慈悟郎(くわじまじごろう)から譲り受けました。
桑島は自分と同じ鱗文の羽織を、善逸と、もう一人の弟子にも渡しています。
その弟子と善逸が再会する場面は、ぜひ漫画でご覧ください。
切ない展開ですが、弟子である二人に魔除けの柄を渡した桑島の愛情が伺えます。

心の炎を燃え上がらせる、杏寿郎の「炎の柄」

そして、映画の実質的な主人公である「柱(はしら)」の一人、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)が着ている羽織には「白地に炎の柄」が施されています。

他のキャラクターが伝統的な柄の羽織を着ているのに対し、杏寿郎の羽織は彼の熱い情熱をイメージしたオリジナルの柄と言えましょう。
炎の柄の着物や帯は一般的にみられるものではありませんが、もし出会えましたら、杏寿郎が燃え上がらせた心の炎のように、身につけるだけで勇気が湧いてきそうです。

今後の展開も楽しみな『鬼滅の刃』。
“推し”と同じ柄を取り入れて楽しむのはもちろん、まだ『鬼滅の刃』の世界に触れていない方も、文様に込められた意味から作品を楽しんでみてはいかがでしょう。

煉獄杏寿郎を象徴する炎

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