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とらや『髙根羹』 師走の南座で日本一の吉祥柄を 「和菓子のデザインから」vol.2

とらや『髙根羹』 師走の南座で日本一の吉祥柄を 「和菓子のデザインから」vol.2  

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旬の食材を取り入れるだけでなく、見た目の季節感も大切にする和菓子の世界。季節を少しだけ先取りするところも、きものと通ずる心があります。共通する意匠やモチーフを通して、昔から大切にされてきた人々の想いに触れてみませんか。 今回は「とらや」で見つけた迎春にぴったりの富士山の柄の羊羹をご紹介します。

南座正面の「まねき」

今年は12月5日から始まりました、京都南座の吉例顔見世興行。

正面に「まねき」と呼ばれる出演役者の名前が書かれた看板が上がると、必ず夕方のニュースで取り上げられるほど、京都では師走の風物詩となっています。

いつもは昼の部と夜の部の2部制での上演ですが、今年は3部制に。1部あたりの演目数が減ったことで、チケットも少しだけお求めやすくなっている模様。
着物で顔見世観劇デビューをお考えの方にはチャンスかもしれませんね。

顔見世の華やいだ雰囲気を横目に四条通から大和大路を下がると、おなじみのロゴの入った暖簾がお出迎え。

とらや四條南座店外観

「とらや」といえば、羊羹。
羊羹といえば、「とらや」。

そのくらい、だれもが知っている有名な老舗ですが、今回のお目当てはこの時期だけの季節の羊羹『髙根羹』です。
髙根(たかね)とは「高嶺」「高峰」と同じく、高い峰や山を表す言葉。

「和菓子のデザインから」第二回目は「山」の意匠についてお送りします。

とらやの『髙根羹』は明治40年の注文記録で確認ができるほか、大正7年の菓子見本帳にその姿が描かれ、大正天皇のもとにしばしばお納めした記録が残っているそうです。

髙根羹のパッケージ

「一富士、二鷹、三茄子」と新春の縁起物とされる神々しい富士山を模した意匠の羊羹は、毎年12月の頭に販売をスタート。年内にはほぼ完売してしまう人気商品なのです。

初日の出を思わせる赤い空、象徴的な白い山の頂、中腹から裾野が水色ではなく緑色であるのも、 縁起物らしい素敵な配色。

お歳暮や迎春のおめでたい菓子として購入される方が多く、取材日もオープンと同時に来店された老紳士が「夜の梅」と併せて贈答用にいくつも注文をされていました。

山には「山笑う」「山滴る」「山粧う」「山眠る」との季語があるように、和菓子の世界でも「山」をモチーフにした季節のお菓子が実に豊富に存在します。

正月の「富士山」、春は「吉野山」、秋には「高雄山」や「龍田山」など、季節の表情を色濃く見せてくれるのが山なのかもしれません。

「富士山」は和装では七五三の男児の羽織をはじめ、紳士物の羽裏などに描かれることが多いため、男性的な柄とのイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、女性物の帯の題材としても人気があります。

古くから霊峰と名高く、万葉集や古今和歌集でも多くの歌に詠まれたほか、『富嶽三十六景』などの錦絵の題材に選ばれるなど、日本人の信仰や美意識に大きな影響を与えてきました。

特選西陣織袋帯「北斎百選」
出典:京都きもの市場

古くは女人禁制だった富士山ですが、祀られている神様は女性。
木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)は、家庭円満・安産・子安・水徳の神とされ、火難消除・安産・航海・漁業・農業・機織等の守護神として全国的な崇敬を集めてきました。

また、「富士」は「不死」と音を同じくすることから、不老長寿の願いを込めた意匠でもあると考えられているのです。

子の健やかな成長を祝う七五三や、おめでたい席で締める袋帯などに用いられるのにふさわしい吉祥柄といえるでしょう。

さて、話を羊羹に戻しまして。

髙根羹は白小豆、手亡、福白金時からなる白あんベースの羊羹です。
赤、白、緑の部分に味の違いはありませんが、三種の豆を使っているためか、奥深く、ふくよかな味わいが感じられます。

髙根羹セット

食べてみたいけれど羊羹はなかなか一本消費できそうにないかも…という方におすすめしたいのが京都四條南座店に併設の喫茶室。
こちらのお店限定で、とらやオリジナルブレンドの玉露と一緒に『髙根羹』を一切れいただくことができるのです。

「おうちで召し上がる際は、もっと厚く切っていただいてよいのですが…」とのことですが、こちらの喫茶でお出しする際は、このちょっと薄めのスライス幅にしているのだとか。

寸法を伺うと厨房からすぐに「四分です」と答えが返ってくるのも、老舗らしくてグッときます。(曲尺の四分≒1.21cm)

実は南座とは中で繋がっているこちらの喫茶室。
公演終了後に南座の中からそのまま来店し、甘いものをいただきながら観劇の余韻にひたる、そんな至福のひと時を過ごすのにもぴったりです。
(※公演終了後は南座劇場内連絡入口から入店いただけますが、南座劇場内への入場・再入場は現在、南座正面入口からのみとなっています)

髙根羹セット

師走の慌ただしさの中のちょっと一息に。
先様の健康を願う、贈り物に。
新年を寿ぐご挨拶がわりに。

いろいろなことが当たり前ではなくなってしまった、この一年。
変わることを強いられる今だからこそ、泰然としたこの姿に改めて安心感を抱くのかもしれません。

なにせ、動かざること「山」の如しというではありませんか。

『髙根羹』(大形)7,884円
『髙根羹』(大形ハーフサイズ)3,942円
『髙根羹』(玉露付き)1,452円(虎屋菓寮京都四條南座店限定)

全国のとらや店舗、オンラインショップで12/1〜売切れ次第終了

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