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エッセイスト・イラストレーター きくち いまさん

エッセイスト・イラストレーター きくち いまさん

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ほぼ一年中着物で過ごし、着物ライフの楽しさをイラストとエッセイでつづる。執筆の他、着物や帯などのプロデュースも手がける。「着物は人生に寄り添うもの。おしゃれで楽しくて、お守りのような存在の布になれたらと願い、ものづくりをしています」

どんな格好よりも着物は わたしを一番素敵に見せてくれる ファッションなんです
初秋の赤トンボを思い浮かべ 帯締と口紅を赤で合わせました

暦は立秋を迎えて、残暑見舞の季節。「夏の名残と秋のはじまりを意識して、今日は赤トンボのイメージなんです」と、真っ赤な口紅が女性らしく、きりりとした明るい印象のきくちいまさん。「帯締と口紅をリンクさせて、秋らしくべっ甲の千鳥の帯留を。襟元にはブルーの麻の刺しゅうが入った半襟を合わせました」。着物のコーディネートのポイントは、全体で見た時にだいたい3色以内にまとめること。基本は2色、プラス1色。色数が多すぎるとごちゃごちゃして、どこを見せたいのか分からなくなってしまう。

「今日は帯締と口紅で秋をイメージ、そこから逆にコーディネートしています。じゃあ、この帯をしよう。それにはこの着物が似合うかなって。着物を選ぶのは一番後。小物を活かすコーディネートが好きなんです」。そうすると、自然と着物は無地系や柄数の少ないものが多くなるそう。今日の色は青系とベージュ、赤。「帯締だけだと赤の割合が少し足りないので、口紅で調整して。そんなふうにピアスをする時もありますね」。着物との組合せを考えながら、口紅を選ぶのも好きというきくちさん。「着物にははっきりとした明るい色の口紅が意外と似合うんですよ」。
OL時代は着物で出社! 着物はおしゃれで楽しいファッション
毎日着物で過ごしているきくちさん。普段は洗濯機で洗える綿か麻の着物。そこに半幅帯をして割ぽう着というのが常のスタイル。そんな着物での暮らしはとても自然な流れのことでした。「うちの母は日頃から着物を着ている人で、家事も仕事も着物。本屋をしていましたが、着物でスクーターに乗り本の配達をしているような人でした。授業参観では母の着物姿をみんなから格好いいねとほめられるのがうれしくて、大人になったらわたしも着物を着たいと思っていましたね」。

着物関係の広告会社でコピーライターとして勤めていたOL時代は、もちろん着物で出社。周りのスーツの人に浮かないようにと、黒や紺、茶系を選びながらも、半襟を水玉にしたり、満員電車で足を踏まれても汚れないようにと色足袋を履いたり、日々試行錯誤しながら自分なりのビジネススタイルを確立します。

好きだから着る、気持ちを大切に いろんな場所へ着物で出かけてほしい
小さい頃から愛読書は『美しいキモノ』というきくちさんをより自由に導いてくれたのは、会社の年上の先輩です。「着こなしがすごく粋な人で憧れましたね。カッコイイーって。冠婚葬祭やお茶席ではきちんと着る。それ以外はファッションなんだと改めて思いました。基本は崩さず、けれど着ていて楽しくなくちゃいけない。相手の人が見て、うきうきして、おしゃれっていいねって思ってもらえるのが着物なんですよね」。
きくちさんにとって着物は、自分を魅力的にみせてくれるファッション。洋服を着ている時は絶対に声をかけられなくても、着物を着ていると「素敵ですね」と声をかけられる。それは自信にもつながりました。「着物はシルエットが美しい。着物を着ていると、自分の影がきれいだなと思えます。どんな格好の時よりも自分に満足できるんです」。
そんなきくちさんが手がける商品は、手持ちの帯や着物に馴染みやすいデザインのものが多い。「人からゆずり受けたものでも、帯留や半襟に自分らしさを少し足すだけで、ぐんと自分らしい着物になってくれる。自分に近づかないもの、納得のいかない格好で出かけるのって残念ですよね。360度どこからでも私を見て! という時はやっぱり楽しい。そんなふうに思ってもらえるきっかけになれたらいいですね」。
誰におもねることなく「好きだから着る」。その気持ちを大切に、着物を広めるための活動を続けてきたきくちさん。「着物で行っちゃいけない場所はないし、誰にも迷惑はかからない。お茶席だけじゃなくイタリアンにフレンチ、ケーキ屋さんに映画館。同窓会にもぜひ着物で出かけてほしい。きっといい女っぷりが上がるから。お洋服の隣に着物がある。お洋服、ときどき着物っていうスタイルがもっと増えたらいいなと思っています」。

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