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寒露:草木に降りる露が冷たく感じられる、袷の季節! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

寒露:草木に降りる露が冷たく感じられる、袷の季節! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

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秋といえば実りのシーズン。収穫を迎える「稲穂」、イガイガもつやつやコロンとした形も可愛らしい「栗」、赤い実の中にぎっしりと果肉が並ぶ吉祥文様「柘榴(ざくろ)」、ユーモラスな形の「落花生」、秋らしさいっぱいの「柿」、そして小さな卵でおなじみの「鶉(うずら)」がまるまると肥える季節です。

(1) 二十四節気とは

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

どこかで見聞きしているものの、いまひとつなじみがないというあなたにこそ知ってほしい「二十四節気」。
いにしえの知恵「二十四節気」に親しむことで、

□ 季節を感じる感覚が豊かになる
□ 着物コーディネートが上手になる
□ 着物を着る機会が増える

こんな素敵な毎日がはじまりますよ。
月2回アップするこちらの連載で「旧暦着物美人」をめざしてみませんか。

(2) 「寒露(かんろ)」とは

さて、明日訪れる十七番目の節気は「寒露」です。
「寒さが増し、草木に降りる露が冷たく感じられるようになる時期」 という意味の節気で、旧暦でいうと九月九日・重陽の節句の時期にあたります。

古代中国では、数字を陽(奇数)と陰(偶数)に分け、陽を吉数とし、十に満ちる前の陽の極数である「九」という数を敬ってきました。

また、神の使いである龍は、九×九=八十一枚の鱗を持つといわれ、旧暦の九月九日は「九」が 二つ重なるめでたい日、「龍祭り」の日とされて来ました。

「重陽の節句」は、
 ・人日の節句(一月七日)
 ・上巳の節句(三月三日)
 ・端午の節句(五月五日)
 ・七タの節句(七月七日)
と続く五節句の最後の節句で、古来より菊を浮かべたお酒を飲んで長寿を願う風習などが行われていましたが、明治五年(1872年)に旧暦から新暦に改暦されると、新暦の九月には菊の花はまだ咲かないことから、五節句のうちでもっとも廃れた節句になってしまったのはとても残念なことです。

菊の節句にちなんで

別名「菊の節句」とも呼ばれる重陽の節句の再興を願い、鮮やかな菊の模様の着物をベースにした、アンティーク着物コーディネートを組み立ててみました。

(3) 「寒露」のアンティーク着物コーディネート

◎ 着物…錦紗縮緬地 菊と紅葉文様(袷)
◎ 帯…綸子地 鱗に波と菊刺繍腹合わせ帯
◎ 半襟…縮緬地に乱菊の刺繍
◎ 帯揚げ…縮緬
◎ 履物…トランプ文様 草履 
◎ 小物…百徳つなぎ巾着袋

錦紗縮緬に大胆に描かれたのは花火のような乱菊。よく見ると、ダイヤ型の地取りのなかに菊が配置されていることがわかります。伝統的な図案も洋風にダイヤと一緒になることで、モダンな雰囲気になるのがおもしろいですね。

寒露のアンティーク着物コーディネート
寒露のアンティーク着物コーディネート(後ろ姿)

帯は、龍の鱗を思わせる鱗模様に菊の刺繍の腹合わせ帯。
帯の裏側のダイヤ模様を見せる「富士太鼓」という変わり結びにして、着物とともにモダンさを演出しました。

着物・帯のインパクトに合わせるには帯締めにもひと工夫。
ふつうはお太鼓の中に隠す端の房を乱菊に見立て、あえて前帯の中央の結び目の左右に花を咲かせたようにあしらってみました。

帯締めの房を乱菊に見立てて

(4) 「寒露」の小物合わせ

「富士太鼓」の帯結びからちらりとのぞく「ダイヤ」つながりで、草履もトランプ柄で統一。

良家の子女の間でトランプ占いが流行った世相を反映したアール・デコ調のモスリンの面白裂には、「1931」という年号がプリントされていて、自らの生年を物語っています。

ハートの10は、恋愛成就のラッキーカード。
重陽の節句にふさわしい、うれしい知らせが届きますように…

ハートの10は恋愛成就のラッキーカード
大胆な色使いの大柄に合う半襟とは

大胆な色づかいの大柄の着物に合う”半襟選びのポイント”は「色の濃淡」です。

濃い紫の着物に白い半襟では色目が浮いてしまうので、紫色のグラデーションになるようにスリートーンほど淡くした薄紫色の縮緬に、着物の柄と同じ花弁の細い乱菊の刺繍をあしらったアンティークの半襟を掛けてみました。

半襟は、顔に近い分、明るい色を持ってきた方が顔うつり・写真うつりが映えます。

色縮緬の半襟でも、刺繍をたっぷりと施すことで、絹糸のつやがレフ板効果となり顔を明るくみせてくれる…アンティークの刺繍半襟は、本当に女性を美しくみせてくれる手業と叡智に満ちているといつもながら感心させられます。

さて、インパクトのある図柄の着物の手に携えたのは「百徳つなぎ」の巾着袋です。

英語の「パッチワーク」と言った方がなじみ深いかもしれませんが、布が高価だった日本では、「小豆(あずき)三粒ほど包める布は捨てるな」という戒めもあって、誰もが愛しむように小さな布片をも捨てずに大切に残しておき、「布の数を増やすほど災いや厄が少なくなる」と信じて一心に縫い込んで、小物や子どもの着物を仕立てたものでした。

たくさんの布地がつなぎあわされて

「百接ぎ」「百徳つなぎ」という呼び名は、実際にその布切れは百に満たなくても、たくさんある、という意味・数が多いことをあらわしています。

このままでは朽ちるしかない切れ端の寄せ集めを「富貴寄せ(ふきよせ)」と言いかえて、端切れ(ハギレ)をつなぐこの細工は、神仏にお布施の米を供える「仏供米袋(ぶくまいぶくろ)」などによくみられます。

五穀豊穣の感謝の気持ちが込められた手仕事の巾着が、実りの秋にしっくりとなじみます。

(5) 「寒露」のモチーフ

秋といえば実りのシーズン。

収穫を迎える「稲穂」、イガイガもつやつやコロンとした形も可愛らしい「栗」、赤い実の中にぎっしりと果肉が並ぶ吉祥文様「柘榴(ざくろ)」、ユーモラスな形の「落花生」、秋らしさいっぱいの「柿」、そして小さな卵でおなじみの「鶉(うずら)」がまるまると肥える季節です。

帯の柄や小物にこんなモチーフを取り入れてみてはいかがでしょうか。

着物に親しむことで、身の回りにある植物や花、などを自然と再発見できるのも、装いの恩恵のひとつです。自然や季節との調和した着物姿は、着る人をより美しく見せてくれることでしょう。

(6) 「寒露」の着物スタイルをイメージする

帯つきの着姿も楽しい季節

新暦10月1日に単衣から袷に移り変わる着物の暦。
薄くて軽かった単衣から、袷の季節へ…
袷は10月から5月までの秋・冬・春とスリーシーズン着る仕立て方ですが、「秋袷(あきあわせ)」は、俳句の季語となっています。

なんとも風情のある言葉、「秋袷(あきあわせ)」。
しっとりした絹地に身体が包まれる感覚が、文字からも伝わってきますね。裏地の付いた着物の季節にはなりますが、まだ羽織やコートなどは不要な陽気ですから、「寒露」の時期は、美しい帯を生かす着姿「帯つき」を楽しみましょう。

早い秋の袷は、軽めの「一越縮緬」、軽やかなつやのある綸子、さらりとした紬地の「縮(ちぢみ)」から装いはじめ、次第にしぼの高い縮緬や重みのある綸子・お召、真綿紬などへと進めていくと季節とぴったりなじみます。

「寒露」からどんどん深まる秋をどんな着物スタイルで楽しみたいか、心に思い浮かべるイメージをカレンダーや手帳にメモしてみましょう。無地や縞・格子の着物に節気のモチーフをひとつ取り入れるだけで、自然と調和したステキなコーディネートになりますよ。

一年で二十四回、二週間ごとに着物に親しむ、あなただけの「二十四節気の着物スタイル」をお楽しみください。

『旧暦で楽しむ着物スタイル』河出書房新社
 
※写真はさとうめぐみ著『旧暦で楽しむ着物スタイル』(河出書房新社)より。

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