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浴衣をより美しく ー 日本舞踊家 花柳凜 「2020夏 浴衣考」vol.1

浴衣をより美しく ー 日本舞踊家 花柳凜 「2020夏 浴衣考」vol.1

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爽やかな緑風吹きぬける初夏から、どこか切なげで哀愁香る晩夏まで…夏の風物詩のなかでも「浴衣」はその代表格。浴衣の歴史や着こなしのポイント、和装だからこその美しい所作や立ち居ふるまいを通じて、この夏「浴衣」をより美しく楽しみましょう。

1 浴衣を楽しむために知っておきたいこと

そもそも浴衣のはじまりは?

そもそも浴衣のはじまりは、平安時代の貴族が蒸し風呂に入る際着用していた「湯帷子(ゆかたびら)」が元と言われており、江戸時代に入り吸水性の優れた木綿を素材として湯上りに着用されるようになって今の浴衣の原型が確立されました。

おしゃれ着のイメージが強い浴衣ですが、本来は湯上りに纏った部屋着であり、それで外を歩くのはありえないことでした。
しかし今では可愛らしい柄ゆきや多様なスタイリングが存在し、浴衣はひとつのファッションへと進化を遂げました。

そのなかで私たちが浴衣を楽しむためにオシャレはもちろんのこと、浴衣の歴史や文化の成り立ちを知り、浴衣だからこその着こなしや所作で「品」を忘れず楽しむためのポイントをいくつかご紹介します。

2 おさえておきたい浴衣の着こなしテクニック その① 襟元編

どんな着こなしでも、品を失わないためには「襟合わせ」がポイント。

「1」にもあるように浴衣は本来湯上り着ですからおしゃれに着こなすには上品さを失いたくないもの。
大きく開いたりクタッとした襟元はそれだけで本当にただの湯上り着に見えてしまいます。
襟合わせの角度は縦にスッキリでも、横広でも好みでOK。印象を決めるポイントは胸元の見える面積で、襟が合わさる位置が下過ぎると素肌の面積が広くなってしまいだらしない印象に。

ピッタリと上目で交差した襟元さえ意識すれば、品を失わずさまざまな着こなしを楽しめます。

3 おさえておきたい浴衣の着こなしテクニック その② 裄編

品を失わないためには襟合わせがポイント

浴衣をこなれた雰囲気で自然に着こなすには、「十分な裄丈」が必要です。

裄丈とは洋服でいうところの袖丈で、ベストは手のグリグリが隠れるくらい。裄が短いとあまり上品でないだけでなく、どこか野暮ったい印象になってしまいます。

既製品ではS・M・Lなど大体のサイズになってしまうため、普段の洋服のサイズで浴衣を選んでしまうと、身幅は合ってもだいたい裄丈が短くなってしまいます。
身幅は着付けで調整可能なので、既製品の浴衣を買う際は普段より大きめサイズを選ぶのがポイント。
仕立てる際も、裄の長さは要チェックです。

4 おさえておきたい浴衣の着こなしテクニック その③ 裾編

今回お伝えするなかで最も上級テクであり、お?っと思わせる着こなしを実現できるポイントが、「裾」。

キューっと体のラインに沿ったキレのある裾と、上前の裾先がキリっと上に上がっていることがポイント。ここで着こなしが決まると言っても過言ではないほど重要なポイントです。
前から見ても横から見ても、裾がすぼまっていくスッキリとした着付けが理想的です。

品もありながら粋で、真夏の浴衣姿をより涼やかに見せてくれます。

5 涼やかな浴衣姿に大切な所作

=忘れてはいけないのが、所作

どんなに美しい浴衣を選びハイセンスなスタイリングをしても、忘れてはいけないのが「所作」。立ち居振る舞いですべての印象が変わってしまいます。

また、洋服と違い1枚の大きな布ですべての部分がつながっている浴衣は、どこかを引っ張ればどこかがずれ、こちらが崩れればあちらも崩れるという…着るまでよりも着てから気を遣う、所作がとても重要な着衣なのです。

◆浴衣姿で気を付けたい所作① 「手首や足首をなるべく見せない」

浴衣は、強い風やちょっとした動きで簡単にめくれたりはだけたりしてしまいます。
高いものや遠くのものを取るときは、袖を反対の手で押さえたり、腕だけでなく身体を寄せて取るようにすれば、袖から腕がぬーっと出ることなく美しい所作が身につきます。

◆浴衣姿で気を付けたい所作② 「歩くときの裾さばき」

浴衣で美しく歩くには慣れが必要です。
特に、小走りになったり階段を上がったりするときの裾さばきに困っている方も多いと思います。
そんなときは上前の褄下(つました:前身頃の衿先から裾までの部分)をキュッとおさえながら歩けば、階段を上がったり走ったりしても、前からの強風でも、裾がはだけて蹴出し(裾よけ・肌着)があわらになるようなことはありません。

◆浴衣姿で気を付けたい所作③ 「姿勢」

書ききれないほどの大切な所作…
そのなかでも最も大切なのがこの「姿勢」かもしれません。
肩甲骨を寄せ、肩を下に引き、胸を張って丹田に力を入れ、お腹とおしりをグッと引き寄せるイメージで、横から見た時に体のラインが真っ直ぐになる姿勢を作ります。
最初は大変ですが、慣れてくれば姿勢だけでなく腹筋も背筋も筋力が上がり、自ずと立ち座りの姿も美しくなり着崩れもしにくくなります。
何よりもまず姿勢が良くなれば、上品で自信にあふれ華やかな様子になります。

慣れないうちは疲れるし苦労しますが、思い出したときに気を付けるという気楽な気持ちで意識してゆきましょう。

6 さいごに

浴衣は、平安時代から日本人の生活に寄り添い紡がれてきた心の衣として、これからも常に身近にあってほしい存在です。
今年は新型コロナウイルスの影響もあり、浴衣姿が多く見られる夏祭りが数々中止となっています。
祭り囃子に花火の音、カランコロンと鳴る下駄に浴衣姿は夏の最も日本らしい風情ですから、とても残念ですね。
例年の夏よりお出掛けの機会は少ないかもしれませんが、夏祭りだけでなく、ちょっとしたおでかけにも、多くの方々が浴衣をごくあたりまえに着て楽しむ文化になればステキだなと思います。

最初は難しいと思っても、着こなしや所作は慣れてくれば必ず身に付きます。臆せずどんどん和装を取り入れ、自分らしく着物や浴衣を楽しんでみてください。

=自分らしく着物や浴衣を楽しんでみてください

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