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小暑:七夕のモチーフで夏着物を楽しく 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

小暑:七夕のモチーフで夏着物を楽しく 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

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小暑は「暑さがだんだん増していく頃」という意味で、この「小暑」から「大暑」までが「暑中」となります。この頃、相手の健康を気遣って出す手紙が「暑中見舞い」というわけです。7月7日といえば「七夕の節句」。街には七夕飾りがあふれていますね。でも実は、本当の節句は旧暦で行ってこそ意味があるのです!

(1) 二十四節気とは

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

どこかで見聞きしているものの、いまひとつなじみがないというあなたにこそ知ってほしい「二十四節気」。
いにしえの知恵「二十四節気」に親しむことで、

□ 季節を感じる感覚が豊かになる
□ 着物コーディネートが上手になる
□ 着物を着る機会が増える

こんな素敵な毎日がはじまりますよ。
月2回アップするこちらの連載で「旧暦着物美人」をめざしてみませんか。

(2)「小暑(しょうしょ)」とは

さて、明日訪れる十一番目の節気は、

「小暑(しょうしょ)」

小暑は「暑さがだんだん増していく頃」という意味で、この「小暑」から「大暑」までが「暑中」となります。

この頃、相手の健康を気遣って出す手紙が「暑中見舞い」というわけです。
9月初旬の「立秋」の前日までは「暑中見舞い」、その後に出す場合は「残暑見舞い」となります。

さて、7月7日といえば「七夕の節句」。
街には七夕飾りがあふれていますね。

でも、日本列島は梅雨の真っただなか。
ほぼ毎年、織姫と彦星の逢瀬がお流れになって可哀想…

それは新暦で七夕をしてしまうゆえの悲劇なのです。
本当の節句は旧暦で行ってこそ意味があります!

旧暦の七月七日は、今年2020年は8月25日とかなり後になり、梅雨はすっかり明けた時期となります(昨年2019年の旧暦七月七日は8月7日でした)。

8月25日の七夕の暮れはじめる空には、まるで船のような形をした上弦の月が見つかるはずです。

そして、天の川の西には「おりひめ」(こと座のベガ)、東には「ひこぼし」(わし座のアルタイル)が光ります。

夜半過ぎ、船の形をした月に乗って、おりひめが天の川を西から東へとゆっくり渡って行く美しさといったら…

月は、毎月、天の川を西から東へ横切っていますが「上弦の月」の姿で天の川を横切るのは、旧暦の7月7日だけ。
本当に年に一度の光景です。

今年は夏着物姿で夜空を見上げて、織姫彦星の逢瀬を見守ってみませんか。

(3)「小暑」のアンティーク着物コーディネート

◎ 着物…夏お召 星と錨・抽象文様 薄物
◎ 帯…アール・デコ 船文様 絽 腹合わせ帯
◎ 帯留…ドイツ製アンティークブローチ・セーラーハット 
◎ 半襟…立絽縮緬 抽象文様
◎ 履物…畳表草履 パイナップル文様刺繍鼻緒

黒地の夏お召に織り出されているのは「星」と「錨(いかり)」。

錨の柄が織りだされて

黒地を夜に見立てての星なのでしょうか、大正~昭和の着物にこんなモダンな柄があることに驚かないではいられません。

半襟は、立絽縮緬になんとも不思議な柄を染めたものを選んでみました。
まるで惑星と天の川のような柄ゆきです。

着物と色の近い半襟を引き立てるために、白の伊達襟を細く襟元にのぞかせて、涼しさをプラスしてみました。

帯はアール・デコ調の船が描かれた絽の腹合わせ帯

帯はアール・デコ調の船が描かれた絽の腹合わせ帯です。
帆を上げる船の近未来的なデザイン、星もちりばめられていて、まさしく宇宙船の雰囲気です。

「腹合わせ帯」とは違う帯地を合わせて仕立てた帯のこと。
この帯は裏地が白の繻子となっています。

白繻子はそのつや感から氷の冷たさを思わせる…という視覚効果。
アンティークの夏帯にはよく使われる生地です。
体感の暑さよりも、見た目の涼しさをとる心意気…なのですね。

帯留には宇宙船の船長をイメージした、ドイツ製のアンティークのブローチを転用してみました。

ブローチを帯留として使える金具「ブロッシュ」は、着物がお好きな方ならひとつお持ちになるととても便利です。

帯留には宇宙船の船長をイメージしたアンティークのブローチを
赤と白の菱文様・ダイヤ柄の手鏡をアクセントに

ダークな色調の着物コーディネートのポイントは胸にあしらった手鏡。
赤と白の菱文様・ダイヤ柄は強烈なコントラストで、着物姿を鮮やかに。

実は着物の前身頃・後身頃にも大きなダイヤ柄が織りだされています。
密かにモチーフを合わせるのもコーディネートの楽しみです。

実は着物にも大きなダイヤ柄が
足元も冒険してパイナップルの刺繍の鼻緒を

宇宙の半襟・アール・デコの夏帯にドイツ製のブローチときたら、足元も冒険を…
ということで「パイナップル」の刺繍の鼻緒をセレクトしてみました。

(4) 「夏お召」という絹織物 

御召を夏用に薄く織り上げた夏御召

夏御召は、御召を夏用に薄く織り上げたもので、初夏から盛夏を通して着用することができます。

タテ糸・ヨコ糸ともに撚り(より)をかけて糊付けし、織り上げた後、湯につけると撚りが戻ってできる美しいシボが特徴で、見た感じは染めのようにも見える、最高級の先練り先染め織物です。

シボのあるひんやりとした風合いは、紬と友禅のどちらにもない個性をもっています。
しわになりにくく、着やすく、また着くずれもしにくいという特徴があります。

裾さばき小気味よく、立ち姿もすっきり見える御召の着物。
大正から昭和の時代には京都はもちろん、東京山手の奥様やお嬢さんのお出かけ着として活躍しました。

かつては、パーティーには縫取御召、観劇やおよばれには風通御召、お茶会には上代御召、お稽古着には絣御召などと、織り方や柄、糸質によって多くの種類がある御召を着分けられていましたが、現在では、本当の夏御召は見ることが少なくなりました。

夏お召、ことに黒地は長襦袢の白を透かすので、見る者により涼しさを与えてくれます。
そんな奥ゆかしい着物が夏お召なのです。

(5)「小暑」の帯結びと小物あわせ

船をイメージした「変わり角出し」に結んで

袋帯とほぼ同じ長さの腹合わせ帯は、帯結びを楽しむことのできる帯です。
今回は帯の柄である船をイメージした「変わり角出し」に。

粋な結び方といわれる「角出し」ですが、帯の上辺にダーツを寄せて狭く、下辺にふっくらとふくらみを持たせて船底型にし、ちょうど船が帆を上げている姿に仕上げました。

斬新なのは帯揚げのアレンジです。

着物の黒の反対色である黄色の帯揚げをねじって、船を繋ぐロープを表現。
通常は前の中央で結んだり、いりくにしたりしますが、あえて後ろに薔薇の花のような飾結びにしました。

帯揚げのアレンジで薔薇の花を
星と薔薇といえば「星の王子さま」!

星と薔薇といえば、サン=テグジュペリの「星の王子さま」の物語を思い出します。

異国情緒たっぷりのモチーフで、和の着物をコーディネートするのも楽しいものです。

暑さがだんだんと強くなっていくこの時期は、暑さをはね返す存在感のあるモチーフが素敵にうつります。

船・波・貝・カモメ・網干(あぼし)・笹・七夕・天の川・朝顔・百合・鬼灯(ほおずき)・半夏生・蛍・花火など、季節のモチーフを取り入れて「小暑」のお洒落を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(6)「小暑」の着物スタイルをイメージする

七夕のヒロイン・織姫はその名の通り、織物の名手でした。
その織姫にあやかるようにとはじまった中国の乞巧奠(きっこうでん)が、日本でも奈良時代、宮中の節会として取り入れられ、民間に普及して七夕祭となりました。

短冊に技芸・学問の上達の願い事を書いて、笹や竹に吊るす行事を行うように、「小暑」にどんな着物スタイルを楽しみたいか、心に思い浮かべるイメージをカレンダーや手帳にメモしてみましょう。

無地や縞・格子の着物に節気のモチーフをひとつ取り入れるだけで、自然と調和した素敵なコーディネートになりますよ。
一年で二十四回、二週間ごとに着物に親しむ、あなただけの「二十四節気の着物スタイル」のはじまりです!

次回は7月22日に訪れる「大暑」についてお話しします。
前日21日の配信を楽しみにお待ちくださいね!

『旧暦で楽しむ着物スタイル』河出書房新社
 
※写真はさとうめぐみ著『旧暦で楽しむ着物スタイル』(河出書房新社)より。

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