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湿感と戯れる 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.3

湿感と戯れる 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.3

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雨に濡れながらも咲き誇る紫陽花やくちなしの涼やかで麗しい姿は、どんよりとした天気と対照的でとても目を惹きます。このような花々を見習い、湿感と戯れるというテーマで湿度も味方にする着姿を再現してみましょう。

紫陽花の花

春をゆっくりと愛でる間もなく、初夏となり、気づけば梅雨の時期となりました。この数ヶ月、今までにない新しい生活や時間の過ごし方を実践された方も多くいらっしゃるかと思います。

久々に外出すると肌を刺す冷たさはすっかりまとわりつく蒸し暑さに変わり、季節から置いてけぼりを感じる反面、当たり前のごとく季節は巡っていることにほっと安心感を抱きます。

それぞれがみなのために静かに忍耐強く過ごす姿は、以前ご紹介した不自由な中においても工夫して過ごす、おしゃれを楽しむ江戸の人と何ら変わりないように感じます。(『江戸の粋・不自由の中の自由』参照)

そのような精神力を持つ私たちですから、じめじめと湿度が高く、どんよりとした天気が多く、けして快適とは言えない季節においても、持ち前のプラスに転じる心のあり様と見方で、気分の上がるコーディネートを自由に考えてみましょう。

みなさんの想像力を掻き立てられるよう”湿感と戯れる”という造語を作ってみました。
”湿感と戯れる”とは、湿度を楽しみ湿度を味方につけると言う意味を込めた造語です。
空気に含まれた水分をプラスに転化する3つの漢字(瑞、潤、艶)を元にイメージしてみましょう。

お好きなように湿感と戯れてみてください。

湿感と戯れるコーディネートのコツ

今回、湿度を味方につけ湿度を楽しむということで、蒸し暑さは変わらないとしても発想の転換で捉え方を素敵に変えてみましょう。

空気に含まれる水分を纏って瑞々しくなり、時間と共に瑞々しさは潤いへと変化し、そして潤いは艶となり、気づけば水分はすっかりあなたとなじんでいる。

この発想は映画からいただきました。トラン・アン・ユン監督の『夏至』や『青いパパイヤの香り』というベトナム映画です。ご存知の方もいらっしゃるかと思います。水分や湿度を多く感じる映画で、内容よりもそのしっとりとした空気感の中で女性の美しさが際立つ印象を今でも覚えています。

朝から昼へそして昼から夜へと、時間と共に水分と馴染み3つの漢字と共に印象が変わるようにコーディネートしてみました。

瑞では、フレッシュで軽やか
潤では、エレガントで柔らか
艶では、マニッシュで淑やか

皆さん自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート「瑞」

瑞コーデ前後横

・本藍染の絞りの木綿の単衣
・織の格子柄の名古屋帯
・紺色の麻の帯揚げ
・紺色の三分紐
・水色の雲柄の帯留め

瑞々しく軽やかでフレッシュ

着物コーディネート 潤

潤コーデ前後横

・横段模様の型染の単衣の小紋
・鳥獣戯画柄の透け感のある袋帯
・白にストライプ柄の絽の帯揚げ
・ブルーグレーの三分紐
・ブルーのグラーデーションカラーのガラスの帯留め

潤って柔らかでエレガント

着物コーディネート 艶

艶コーデ前後横

・変わり格子柄の塩澤紬の単衣の小紋
・自然布の名古屋帯
・黒にドット柄の絽の帯揚げ
・緑色の三分紐
・光沢のあるダイクロガラスの帯留め

しっとりと淑やかでマニッシュ

センスを磨くには Part.2

センスを磨くには

前々回(『口説かれ着物の纏い方』参照)に着物コーディネートはセンスとお伝えし、センスを磨くにはということで、私なりに3つのアドバイスをさせていただきました。

 1. 想像力を養うこと
 2. 一般的な概念や型に囚われないこと
 3.自分を知ること

今回はセンスを磨くにあたり、着物や帯を購入する際の具体的な事例を3つ挙げさせていただきます。
頭で考えるというより感覚を養うという意識でご参考になさってみてください。

1. たくさん見る触れる

どちらの着物や帯も先入観を持たず、たくさん見て触れてみる。
時によっては作り手の方のお話に耳を傾け、熱量を感じてみる。そしてできれば複数のお店や展示会に足を運んでみる。
色々見る中で五感をフル活用すると新たな好みを発見できたり、好みの傾向を知ることができます。
たくさん知っている上で購入に至る方が納得感、腑に落ち感が変わってきます。
私自身着付けを習って間もない頃、着物はパステルカラーと花柄のイメージが強く、限られたものしか知らない時は正直あまり興味を持てませんでした。
色々見るようになってから、自分の好みを発見でき、興味がとてもわくようになりました。

2. 自分しか似合わないような幻想を抱く

とても傲慢に聞こえるかもしれませんが、このような直感的な感覚が大切だと考えています。
自分だけが似合うものなど世の中にありません。
しかしそのような幻想さえ与えてくれる着物、帯などであれば、購入を検討する価値は大いにあると考えています。
直感的にドンピシャ好みという時、合わせた感じが素敵でテンション高くなっている時、着装シーンまで想像する時など色々あると思います。
私たちの多くは着物は普段着ではなくおしゃれ着であり、着物以外も色々興味があるのが当然です。
私自身が実際そうです。よってちょうどいいハードルだと感じています。

3. 着装シーンや他アイテムとのコーデを考える

着物や帯などを購入する際、単品もしく一式で購入する通常2パターンあると思います。
どちらであっても購入する前にどのようなシーンで着装したいか想像してみてください。
なんとなくでも想像しにくい場合は、購入はじっくり検討した方がいいと思います。
また手持ちの他のアイテムとのコーディネートも考えてみてください。
他と合わせるのは難しいとなっても構いませんし、合わせられるとなればコーディネートの幅が広がります。
想像してみることが大切であり、何にでも合うものがいいわけではありません。
一式で購入する場合は最初のコーディネート以外難しいという方もいらっしゃるかと思います。
無理に変える必要はありませんが、他とのコーディネートが新たな好みの発見に繋がることもあるので試してみてください。

本物の着物!?

本物の着物とは

センスを磨くにあたり着物や帯を購入する際の事例のひとつ目で、たくさん見る触れるとお伝えしました。

今も機会があれば、最初から興味がないと決めつけず色々と見るようにしております。
今でも新しい発見や出会いがある度にドキドキわくわくします。

最近は多種多様な着物が世の中に存在していることを知り、大変驚いています。
日本に限らず世界中もっと多くの方が着物に興味を持ってもらうために、たくさんの方々が色々と工夫されていてすばらしいなと思います。

素材は人工素材や洋服素材、柄はインクジェットプリント、着物の形状が上下別々、帯がベルト風、そしてコーディネートも着物の下にスカートやタートルニット、履物は靴やスニーカーなどなど。
世の中の変化や現代空間に合わせ、着物もファッションとしてありとあらゆる面で進化し続けているようです。

一方で昔ながらの着物がどんどん希少になっていくと思うと、悲しい気持ちになります。
確かに着物は簡単に着れるわけでもなく、低価格の消耗品でもなく、普段役立つものでもなく、今や嗜好品のくくりかもしれません。しかし意味のある貴重な文化財だと思っています。

人の手の温もりで作られた着物を身に纏えば、肌に触れても心地よく、伝統文化に身を包まれているようで、何だか誇らしい気分になれます。
そんな気持ちにさせてくれるのは着物ならではないでしょうか。進化も文化も応援したいです。

ここで質問です。
あなたが300年後先の後世に遺したい、未来の美術館に奉納したい着物は何ですか?
あれこれ迷ってしまうと思いますが、選ぶ理由も考えながら一点に絞ってみてください。

それが本物の着物です。

センスを磨くにはたくさん見る触れる
着装シーンや他アイテムとのコーデを考える
自分しか似合わないという幻想を抱く

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