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そばに置き、使えるモノへ 「きものは布」第四回

そばに置き、使えるモノへ 「きものは布」第四回

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かつてご家族が着ておられたきものや帯は、その一部を見るだけでイメージや着姿がよみがえることがあります。そのまま廃棄してしまわずに、日常的に使ったり置いたりすることで、ご家族の歴史や繋がりを身近に感じ、形を変えても自身の生活に引き込んでいくことができます。

コラム 「きものは布」

きものは布

古代の人は、樹皮や草を編んだり、獣の皮などが身体を覆うものでした。
身体を衣服で覆う唯一の動物である人間は、布でできた“衣服“に進化をさせ、洋服としてそして和服として受け継がれ、そして楽しみになりました。
洋服だけでも生活がまっとうできる現代、着物は通常着ではないながらも、日本の文化として纏い、憧れ、大事にしています。
すでにある着物や帯、そしてそれらを作り、着ていた先人達への尊敬の念も含めて、まずは身近なタンスやその他収納の内側と向き合うことからはじめましょう!

第一回 着ない着物(使わない帯)、着られない着物(使えない帯)
     “コレ着られるかしら…”

第二回 着物や帯として再生させる
     “やっぱり着たい!”

第三回 手数を減らして着まわす工夫
     “いい(良い)加減がいい”

第四回 そばに置き、使えるモノへ
     “鋏を入れる勇気と捨てる前に生かすこと”

第五回 すっきりとしたその先は
     “次世代へ着姿やキモノを伝えていくアイコンとして”

第四回 そばに置き、使えるモノへ “鋏を入れる勇気と捨てる前に生かすこと”

タンスの中のきものの整理をしていくと必ず出てくるのが…
「着られないけど捨てられないもの」。

理由としては、
・色柄の希望や寸法が合わないけれど譲られたものなので捨てられない
・着られない(加工にお金がかかる)けれど色と柄がおしゃれ
・手の込んだ刺繍や染め・織りがあきらかに良い
・時代やノスタルジーを感じて捨てられない
などかと思います。

それらをどう扱っていくといいでしょうか。

着られないけど捨てられない着物

①「きもの以外の着るモノ」にする

気に入っている紬のきものは「二部式の簡易ジャケット」や「裾よけ」に作りかえることができます。
袖は七分の長さの筒袖にして、家事や作業用・近所の買い物への上っぱりとして活用できますが、やはり専門業者さんへ依頼するようになるので費用はかかります。
もちろんリメイクやリフォームといわれる「洋服に変える方法」もありますが、センス良くチェンジしてもらえるか不安な部分もあります。
費用もそこそこかかりますので、デザインや柄の使い方などを、作っていただく人へよく確認してください。

②着るモノとは思わず「素材(布)」として考える

着るものにはしないので、タンスに収める理由がなくなります。
和だんすは桐で出来ていたり大事な着るものを収めていく収納なので、「きものや帯としては使えない」ものは、別の箱やひきだしなどに入れていきましょう。
もちろんたとう紙からも出します。

・きものや帯として着られるもの/着たいものを「一軍選手」
・寸法直しや八掛け替えなどの加工待ち、もしくは迷っているものを「二軍選手」
・着ない/着られないものは「戦力外」

として、タンス以外の収納や箱などへとしっかり分けていくことが、有効活用につながります。

③「“きもの”や“帯”の形のままで生かす」方法を考える

竹の棒や一本棒に帯のまま、あるいはきものの袖を通して、インテリアに合わせて色柄を選び、壁にそのまま掛けてしまいましょう。
ただ掛けるだけでは前合わせがダレてしまいますので、簡単に前を合わせて縫いとめ、後ろ身頃をみせるように飾ると美しくみえます。

よほど古いものでなければ薄い洗剤液で手洗いをしてアイロンを当て、匂いやカビの除去をします。
きものとしては着ないこと、また水洗いで縮んで小さくなる方が壁に掛けやすいので問題はありません。
単衣や夏のきものを選ぶとアイロンが楽ですし、水洗いによる胴裏や八掛けとのひずみが出ません。

全通の帯や古い丸帯でしたら、タンスの側面に垂れるように掛けたり、室内に40cm幅ほどの窪みがあれば、突っ張り棒を用いてインテリアにもできます。
糸が複雑な織の帯もあるので、洗わずにあて布&スチームアイロンで折じわを取る程度がいいのではと思います。

④ 形を変えて「布」にしてしまう

泥染めの男物大島を解く

〔 きもの、羽織、コート類 〕
・(古いものなら)縫い目の端を少しだけ切って一気に左右に裂く
 →縫い糸が劣化しているので簡単にパーツにわかれる
・縫い糸がしっかりしていたら、縫い目のすぐ脇を、よく切れるハサミで裁つ

切れないハサミは作業がスムーズに進みません。
よく切れる新品か、研いだハサミをおすすめします。
きものとして再生させないので、縫い目を苦労してほどく必要はありません。

〔 帯 〕
・裏地や帯芯ごと柄を考えてカット(使いやすい大きさに)
・帯芯を取り除く
・断ち目の緯糸(よこいと)を適当に抜く
 →経糸(たていと)がフリンジのようになる

これらの作業をする際は、必ずレジャーシートなどを敷いてその上で行いましょう。
糸くずやほこりが出ますので、あとの掃除が楽になります。

四角い布がたくさんできたところで、その使い道をいろいろ考えていきましょう。

◆お出かけに使えるモノにする
→バッグ・袱紗入れ・バッグインバッグ・名刺入れ・巾着・日傘など

どれも和装小物やさん・日傘工房さんなどへ布を持ち込むことで、定番の形への活用が可能です。
用尺についてはそれぞれの加工先へご相談ください。
(写真は、コートを仕立てた際に出た残り布で作ったバッグです。)

コートの残り布で作ったバッグ
母の嫁入り時の帯を額装にしたもの

◆室内のカバーリングや部分使いなど
→手の込んだ刺繍の太鼓柄、思い出の帯などを部分使いで額装へ

ほこりや電磁波よけ、鏡や家具のおおいやひきだし内の敷き布などに。
パッチワークのように生地を繋いで大きな布にしても、使い道は多くなります。
センス良くつないでみてください。
(写真は、母の嫁入り時の帯を額装にしたものです。)

◆縁縫いや手を加えてキッチンでつかう 
→鍋敷き・鍋つかみ・ポットウォーマーなど

麻のきものは水をよく吸うので、使いやすい大きさにカットしてからよく洗い、除菌をしてフキンとして使えます。

◆掃除用具やそのほかの用途として

昔の人は、古いきものを細く裂いて「はたき」にしていました。
現代の掃除で「はたき」を使う人は少ないですが、つや出し用やからぶき用に、絹やウール素材のハギレは使えます。
きものを解体したときに、幅広では使えない部分をそういった拭き掃除用やふすまや障子の穴ふさぎ、汚れ、破れ隠しなどに使ってみてください。

かつてご家族が着ておられたきものや帯は、その一部を見るだけでイメージや着姿がよみがえることがあります。
そのまま廃棄してしまわずに、日常的に使ったり置いたりすることで、ご家族の歴史や繋がりを身近に感じ、形を変えても自身の生活に引き込んでいくことができます。

思い出だけでなく、工芸品としてのすばらしい技術や文化を残す手段でもあります。
費用を掛けるか掛けないかはみなさまそれぞれの価値観があると思いますが、着られないきものや帯の全部でなくても、厳選して、ぜひ活用を考えてみましょう。
丁寧で豊かな生活を送る実感を体感できると思います。

男物の大島をすっきりと着こなす

次回最終回は、第五回「すっきりとしたその先は “次世代へ着姿やキモノを伝えていくアイコンとして”」です。
世界的パンデミックとなった2020年、外出を控えて家の中の片付けをした人も多いと思います。
自分を見つめ、家族をさらに思いやる機会ともなり、大切な身近な物も丁寧に選んでいくなかで、あらためてタンスの中のきものや帯の存在感や価値を見直してみませんか?

頻繁にではなくても「何か気持ちが動いたときに選ぶファッション」として、このコラムがタンスを開けるきっかけの一助となるとうれしいです。

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