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特別展『江戸☆大奥』東京国立博物館  「きものでミュージアム」vol.49

特別展『江戸☆大奥』東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.49

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特別展『江戸☆大奥』が東京国立博物館で開催中。四季折々の装い、刺繡掛袱紗、調度品、女性歌舞伎役者の衣装に貴重な資料などが一堂に。篤姫や和宮の実像に迫る展示や最新の研究成果が明かす女性たちの生活や生涯を。NHKドラマ『大奥』で使用された衣装やセットも!

2024.06.25

よみもの

『オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』三菱一号館美術館 「きものでミュージアム」vol.48

大奥の実像をひも解く

今回は、東京国立博物館で開催中の特別展『江戸☆大奥』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。画像写真の無断転載を禁じます。

展示風景

現在の皇居には、かつて江戸城の本丸・二の丸・西の丸が存在し、その奥に“将軍の私的空間”として築かれた「大奥」がありました。

そこは、庶民どころか江戸城に出入りする武士ですら、大部分は入ることの許されない閉ざされた空間でした。

展示風景

豪奢に見えるその後宮には、歴代の御台所(正室)や側室、そして彼女たちの暮らしを支えた女中たちが暮らしました。将軍家という巨大な権力の陰で、壁書や女中法度により厳しく制度化されたその世界で、女性たちそれぞれの人生が繰り広げられていました。

本展では、小説やドラマで描かれてきた幻想とは異なる大奥の実像を、近年の研究成果や調査をもとに、歴史資料と衣装や小道具、刺繡掛袱紗などの遺された品々から紐解いていきます。

展示風景

さらに、ドラマ10『大奥』(NHK)のセットや衣装も展示され、撮影可能なエリアも!!

美しく豪華な衣装の数々はきもの好きさん必見です!

展示風景

音声ガイドナビゲーターは冨永愛さん

音声ガイドナビゲーターは、ドラマ10『大奥』(NHK)で徳川吉宗役を務め、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺』(NHK)に大奥総取締 高岳役で出演中の冨永愛さんが就任。

音声ガイドナビゲーターの冨永愛さん

音声ガイドナビゲーターの冨永愛さん

内覧会当日にご来場、会場で熱心に鑑賞されていました。

音声ガイドナビゲーターの冨永愛さん

2025.03.14

よみもの

『べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館』浅草に開館 「きものでミュージアム」vol.44

2025.07.24

まなぶ

メディア王・蔦屋重三郎の武器は、今より半歩先のトレンド!「知ってた?べらぼうなお江戸話」vol.1

東京国立博物館の職員のみなさんもきもので

内覧会では、担当研究員の小山弓弦葉さん(東京国立博物館 学芸研究部調査研究課長)の解説を伺いました。メモなしで丁寧にわかりやすく語る姿が印象的でした。

担当研究員の小山弓弦葉さんと

担当研究員の小山弓弦葉さんと

この日小山さんは、最も格式の高い礼装である夏の黒留袖をお召しで、丹精込めて育てたこの展覧会を晴れて世に送り出す輿入れに臨むような思いで選ばれたそうです。

また、東京国立博物館の職員有志のみなさんも、この日はきものをお召しで会場に花を添えていました!とてもはなやかで改めてきもののよさを実感しました。

東京国立博物館職員のみなさまと

東京国立博物館職員のみなさまと

小山さんは『美しいキモノ』で「江戸城大奥の華麗な服飾」を連載中です。そちらもぜひご覧ください。

大奥の誕生と構造

春日局かすがのつぼね(1579–1643)は、明智光秀の家臣・斎藤利三の娘の娘として生まれ、三代将軍家光の乳母として知られる大奥の礎を築いた人物です。

《春日局坐像》 江戸時代 17世紀 京都・麟祥院(京都市)

《春日局坐像》 江戸時代 17世紀 京都・麟祥院蔵(京都市)

《徳川家光像》 池田継政筆 江戸時代 延享3年(1746 ) 岡山・金山寺(岡山市)

《徳川家光像》 池田継政筆 江戸時代 延享3年(1746 ) 岡山・金山寺蔵(岡山市)

家光が将軍に就任後は、将軍付きの局となりました。徳川家直系の子孫に将軍家を継がせるために、側室・側妾を積極的に迎え入れ、女性たちの序列や役割を整備しました。

御台所や側室、そこに仕える女中たちの序列が整えられ「大奥」の礎を築きました。

また、二代将軍秀忠の娘・千姫(家光の異母姉)も、出家して天樹院と号し、将軍家直系の子孫を養育し、大奥の草創期を支えた存在として知られています。

天樹院( 千姫)復元衣装 令和3 年( 2021 ) 兵庫・姫路城

天樹院( 千姫)復元衣装 令和3 年( 2021 ) 兵庫・姫路城蔵

江戸城の本丸は

「表」「中奥」「大奥」

に分かれており、「大奥」は将軍の御台所(正室)・側室・御年寄(老女)をはじめとする女中たちの居住空間でした。

次期将軍の世継ぎや将軍亡き後の御台所たちは「西の丸」や「二の丸」に移り住みました。

大奥には「長局」と呼ばれる居室がずらりと並び、女中たちはそこに暮らしました。

御年寄は大奥内でもっとも大きな権力と財力をもち、親族の身分を引き上げるほどの影響力を持っていました。絵島や瀧山など後世に名をとどろかす人物もいました。

江戸城本丸大奥総地図 江戸時代 19世紀

江戸城本丸大奥総地図 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵

歴代の御台所たちゆかりの品

世継ぎを生む役目を担った将軍の正室や側室たちは、大奥という閉ざされた空間で、対立や駆け引きの中、重圧と戦いながら日々を過ごしていました。ここでは、そうした女性たちが紹介されます。

桂昌院 けいしょういん(お玉の方)

桂昌院けいしょういん(お玉の方)は、三代将軍徳川家光の側室で、五代将軍徳川綱吉の生母です。京都の八百屋の娘に生まれました。家光の側室お万の方に仕えていましたが、家光に見初められて側室となり、綱吉を生みました。

綱吉の将軍就任にともない、絶大な権力を振るい、女性最高位の従一位の官位を賜りました。八百屋の娘から女性最高位まで立身出世し「玉の輿」という言葉の語源になったとされています。

重要文化財《振袖 黒綸子地梅樹竹模様》 桂昌院(お玉の方)所用 江戸時代 17世紀 東京・護国寺(文京区)蔵 前期展示:7/19(土)〜8/17(日)

重要文化財《振袖 黒綸子地梅樹竹模様》 桂昌院(お玉の方)所用 江戸時代 17世紀 東京・護国寺蔵(文京区) 前期展示:7/19(土)〜8/17(日)

桂昌院所用と伝わる重要文化財《振袖 黒綸子地梅樹竹模様》は、裾から梅の木が立ち上がる立木模様で、枝が湾曲しながら上半身に広がる意匠です。

藍地の幹や枝、紅地の竹の節には、型紙を使って染料を摺り込む「摺疋田」技法による斑点が施されています。

江戸時代には度重 なる奢侈禁止令が繰り返され、元禄期には手間がかかり高価な鹿子絞りに代わり摺疋田が主流となりました。本作は、摺疋田を用いた最古の例とされています。

《長裃 鶸色麻地松葉小紋》 伝徳川綱吉所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館

《長裃 鶸色麻地松葉小紋》 伝徳川綱吉所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵

綱吉所用と伝わる《長裃 鶸色麻地松葉小紋》は、麻の平織に細かい松葉が型染めされた模様です。その寸法から、綱吉が小柄であったことがうかがえます。

瑞春院 ずいしゅんいん(お伝の方)

瑞春院ずいしゅんいん(お伝の方)は、綱吉の側室で男女二子をもうけました。長男は幼くして亡くなりますが、綱吉の実子はこの二人だけだったため、綱吉から寵愛されました。

重要文化財《刺繡掛袱紗》は、年始をはじめとする年中行事における将軍からの贈答品に掛けられていた袱紗とみられます。全31枚前後期ですべて展示されます。

重要文化財《刺繡掛袱紗》 瑞春院( お伝の方)所用 31 枚 江戸時代 17~18世紀 奈良・興福院(奈良市)

重要文化財《刺繡掛袱紗》 瑞春院( お伝の方)所用 31 枚 江戸時代 17~18世紀 奈良・興福院蔵(奈良市)

模様はすべて刺繡で表され、当代最高峰の刺繡の技がみどころです。燃りのかかっていない平糸(釜糸)と呼ばれる絹糸を紅、黄、萌黄、緑、水浅葱、藍、海松茶、黒に染めた色糸と、金箔を紙に貼り細く切った平金糸を芯糸に巻き付けた燃金糸を駆使しています。

浅葱繻子地杜若と撫子に酒器「長生」字模様

浅葱繻子地杜若と撫子に酒器「長生」字模様

平繡、纏繡、撚金糸を駒繡、留繡など様々な技法と絶妙な糸の引き加減で絹糸の艶と最大限に生かし立体感のある仕上がりです。

描かれている模様は、吉祥植物や宝尽くし、熨斗などの縁起の良い意匠が散りばめられ、

「福」「貴」「寿」「萬」

などのおめでたい文字を盛り込んだ葦手模様も見られます。

それにしても掛袱紗がこれほど豪華なのですから、これらを掛けられた贈答品はどんなに豪華だったのでしょう。

重要文化財《刺繡掛袱紗》 瑞春院( お伝の方)所用 31 枚 江戸時代 17~18世紀 奈良・興福院(奈良市)

重要文化財《刺繡掛袱紗》 瑞春院( お伝の方)所用 31 枚 江戸時代 17~18世紀 奈良・興福院蔵(奈良市)

十一代将軍徳川家斉の娘、景徳院(溶姫)や十三代将軍徳川家定の最初の妻、天親院(鷹司任子)の衣装も展示されています。

左:《単衣 紫絽地流水葦雁模様》景徳院(溶姫)所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館 高木キヨウ氏寄贈、右:《搔取 白綸子地菊立涌花束模様》天親院( 鷹司任子)所用 江戸時代 19世紀 東京国立博物館

左:《単衣 紫絽地流水葦雁模様》景徳院(溶姫)所用 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵 高木キヨウ氏寄贈、右:《搔取 白綸子地菊立涌花束模様》天親院( 鷹司任子)所用 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵

天璋院(篤姫)と静寛院宮(和宮)装いと暮らし

幕末期の天璋院てんしょういん(篤姫)、静寛院宮せいかんいんのみや(和宮)のことは比較的資料が遺されています。

天璋院 てんしょういん(篤姫)

十三代将軍家定の正室、篤姫は、薩摩藩から政略的に輿入れし、婚儀からわずか1年9か月で家定と死別しました。剃髪し天璋院と号し、幕末の大奥を支えました。

《道服 淡紫紗地筥牡丹模様》 は、天璋院が着用した夏の道服です。道服は高位の人が出家後に普段着として用いた、広袖で裾にひだを取った羽織のような服です。輿入れ前に養女となった近衛家ゆかりの筥牡丹紋を織り出しています。

《道服 淡紫紗地筥牡丹模様》 天璋院( 篤姫)所用 江戸~明治時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団 [7/19~8/3展示]

《道服 淡紫紗地筥牡丹模様》 天璋院( 篤姫)所用 江戸~明治時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵 [7/19~8/3展示]

《搔取 萌黄紋縮緬地雪持竹雀模様》 天璋院( 篤姫)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団 [8/5~8/17展示]

《搔取 萌黄紋縮緬地雪持竹雀模様》 天璋院( 篤姫)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵 [8/5~8/17展示]

《搔取 萌黄紋縮緬地雪持竹雀模様》は、竹林の雪景色に苫屋が描かれ、雀が飛び交います。篤姫は、雀の意匠を好み、衣装や漆工品などに用いられています。

搔取かいどりは打掛のことで大奥でも御所風にこう呼ばれました。

展示室でひときわ目を引いたのが《薩摩切子雛道具》です。薩摩藩で作られた薩摩切子の雛道具で、天璋院(篤姫)が輿入れの際に持参したと伝えられます。繊細なカットが施され美しく輝き、薩摩藩の格式を象徴しています。

《薩摩切子雛道具》 天璋院( 篤姫)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団

《薩摩切子雛道具》 天璋院( 篤姫)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵

《松唐草牡丹紋散蒔絵雛道具》も篤姫所用と伝わる蒔絵雛道具です。ガラスとはまた違った美しさがあります。この時代の大奥では、上巳の節供の際に、雛人形などとともに調度品を並べ、にぎやかに飾ったことが記録されています。

《松唐草牡丹紋散蒔絵雛道具》 天璋院(篤姫)所用 江戸時代 18~19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団

《松唐草牡丹紋散蒔絵雛道具》 天璋院(篤姫)所用 江戸時代 18~19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵

静寛院宮 せいかんいんのみや(和宮)

十四代将軍家茂の正室に迎えられた和宮は、孝明天皇の妹として内親王の宣下を受けた身でした。大奥での暮らしも、武家流ではなく宮廷のしきたりに倣いたいと望み、武家の格式を重んじる天璋院との間に緊張が生まれます

しかし、幕末の不安定な時代、徳川宗家の存続を願う思いを共有する中で、ふたりは次第に心を通わせていきました。

《搔取 白綸子地桜牡丹藤源氏車模様》 伝静寛院宮( 和宮)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団[7/19~8/3展示]

《搔取 白綸子地桜牡丹藤源氏車模様》 伝静寛院宮( 和宮)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵[7/19~8/3展示]

搔取の地の色は紅・黒・白があり、白綸子にまんべんなく刺繡をほどこしたものが特に格が高いとされました。《搔取 白綸子地桜牡丹藤源氏車模様》は、桜や牡丹、下り藤を花束にし、金糸の駒繡や摺疋田で装飾されます。刺繍に紅色を使用しない「紅なし」です。

現在の感覚だと可憐で美しく、大変華やかな色合いに見えますが、「紅なし」であることから歴代将軍や御台所の命日に着用した可能性があるそうです。

《和宮手廻り小物》 静寛院宮(和宮)所用 江戸時代 19世紀

《和宮手廻り小物》 静寛院宮(和宮)所用 江戸時代 19世紀

《和宮手廻り小物》をご覧ください。タツノオトシゴや貝殻、毛植え人形の犬、ミニチュアの七福神などかわいらしいものがたくさん!

九連環きゅうれんかん」という中国由来の知恵の輪もあります。生活の一端が垣間見えるようで、親しみがわきますね。

《伊勢物語歌かるた》 静寛院宮(和宮)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団

《伊勢物語歌かるた》 静寛院宮(和宮)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵

季節をまとう衣装の美しさ

展示風景

この壁一面に広がる展示を見て思わず歓声をあげました!きもの好きなら、いや、普段きものに縁がない方でも胸が躍る展示です。

四季折々のきものー搔取、小袖、帷子、単衣……産着や帯もあります。みな保存状態がよく美しいです。絹の光沢、麻の清涼感、贅を尽くしたきものが並ぶ壁面は、いつまでも眺めていられそうです。

江戸文化研究者・三田村鳶魚の『御殿女中』によると、天璋院は1日に5度の着替えを行い、衣装は月替わりで「御納戸払い」のときに高位の女中に下賜されたそう。身分や季節によって細かく衣装の素材や模様が定められていました。

展示風景

そして、横に目をやると、3体のマネキンに着装された展示が。これらは復元されたものではなく、正真正銘18~19世紀のものです。

《搔取 萌黄縮緬地松紅葉牡丹流水孔雀模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館、《間着 紅縮緬地藤棚模様》 江戸時代 19世紀 個人蔵、《掛下帯 萌黄繻子地源氏車花束模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館

《搔取 萌黄縮緬地松紅葉牡丹流水孔雀模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵、《間着 紅縮緬地藤棚模様》 江戸時代 19世紀 個人蔵、《掛下帯 萌黄繻子地源氏車花束模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵

冬の搔取と夏の腰巻、それに火事装束。こうして実際に着つけられると布の重なりや落ち感、着付けのひだまで見え、美しく感じます。担当の方のお話では、着付けには大変神経を使ったそう。

《帷子 白麻地花束紗綾形源氏車模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館、《腰巻 黒紅練緯地梅椿亀甲花菱模様》貞恭院(種姫)所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館、《提帯 萌黄白段格子源氏車藤牡丹模様錦》 貞恭院(種姫)所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館

《帷子 白麻地花束紗綾形源氏車模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵、《腰巻 黒紅練緯地梅椿亀甲花菱模様》貞恭院(種姫)所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵、《提帯 萌黄白段格子源氏車藤牡丹模様錦》 貞恭院(種姫)所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵

腰巻は、18〜19世紀の武家女性が夏に着用した正装であり、格式と季節感のある特別な装束です。帷子の上に重ねて袖を通さず腰に巻きつけるという、独自の着装法が特徴的です。

細く硬く織られた提帯には芯が入れられ、腰巻の袖を通して左右に張り出すことで、まるで羽を広げたような優雅な姿を演出します。

《火事装束 猩々緋羅紗地波鯉千鳥模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館

《火事装束 猩々緋羅紗地波鯉千鳥模様》 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵

江戸時代は火事が多く発生したので、火事装束も用意されました。これは大変凝ったもので、非常時でも威信をたもてるようなものです。非常時に備えたものですが、なんだかかわいらしいですね。

圧巻!大奥で演じられた歌舞伎の衣装

展示風景

歌舞伎は江戸時代の娯楽として庶民にも親しまれましたが、大奥の女性たちは気軽に歌舞伎見物など行けません。

その代わり、坂東三津五郎に弟子入りした女性歌舞伎役者・坂東三津江が大奥で歌舞伎を演じました。今回は大奥で演じた歌舞伎衣装を一挙公開するのは初めてです。

展示風景

なんと絢爛豪華なのでしょう!こちらもじっくりひとつひとつ鑑賞したいです。

展示風景
《打掛 黒繻子地注連縄海老模様》 坂東三津江所用 江戸時代 19世紀 東京国立博物館 高木キヨウ氏寄贈

《打掛 黒繻子地注連縄海老模様》 坂東三津江所用 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵 高木キヨウ氏寄贈

あこがれの大奥――ドラマや明治時代の錦絵に描かれた大奥

江戸時代、庶民にとって大奥はあこがれでありながら、江戸城の奥深くに隠された世界でした。このエリアでは、江戸時代から現代にいたるまで、庶民があこがれ想像した大奥が紹介されます。

御鈴廊下周辺は撮影も可能ですので、大奥の世界に浸り撮影もお楽しみください。

NHKドラマ10「大奥」の世界が再現

展示風景

NHKドラマ10『大奥』の御鈴廊下のセットと衣装が再現!衣装を間近で見るとドラマのシーンがよみがえります。

展示風景

《千代田の大奥》 40場面を通期で公開

明治期の浮世絵師・楊洲周延が手がけた《千代田の大奥》は、江戸城の奥深くで生きた女性たちの日常を繊細に描いた全40場面の錦絵です。大変華やかで、衣装や設えにも目をみはります。

2025.07.06

まなぶ

浮世絵きほんのき!

大奥の世界を、全場面ご覧いただける、またとない貴重な機会です。

《千代田の大奥》 楊洲周延筆 明治27~29年(1894~96)東京国立博物館

《千代田の大奥》 楊洲周延筆 明治27~29年(1894~96)東京国立博物館蔵

《千代田の大奥》 (部分)楊洲周延筆 明治27~29年(1894~96)東京国立博物館

《千代田の大奥》 (部分)楊洲周延筆 明治27~29年(1894~96)東京国立博物館蔵

展示風景
《奥奉公出世双六》万亭応賀作、歌川国貞(三代豊国)筆 江戸時代 19世紀 東京都江戸東京博物館[前期

《奥奉公出世双六》万亭応賀作、歌川国貞(三代豊国)筆 江戸時代 19世紀 東京都江戸東京博物館蔵 [前期]

《奥奉公出世双六》は、江戸時代の女性が大奥で出世していく様子を描いた双六。下働きの「御はした」から「御中臈」「老女」まで、役職ごとの装いや所作がコマに描かれ、遊びながら大奥の階層構造を知ることができます。イラストが絶妙です。

「偐紫田舎源氏」 柳亭種彦作、歌川国貞( 三代豊国)筆 江戸時代 文政12~天保13年(1829~42)東京・法政大学図書館 古川久文庫

「偐紫田舎源氏」 柳亭種彦作、歌川国貞( 三代豊国)筆 江戸時代 文政12~天保13年(1829~42)東京・法政大学図書館 古川久文庫蔵

柳亭種彦が手がけた江戸時代の合巻は、庶民の間で爆発的な人気を誇ったベストセラーです。

『源氏物語』を着想の源に、室町期の足利将軍家を舞台とする物語は、豪華絢爛な歌川国貞の挿絵に彩られ、読者を魅了しました。作中には大奥を彷彿とさせる暮らしぶりも描かれ、当時の人々の夢や憧れを映し出す作品となっています。

2025.04.24

まなぶ

源氏物語の女君がきものを着たなら

最後に

展示風景

大奥の女たちが紡いだ物語は、装束や調度、記録にそっと刻まれています。大奥は、歴史の彼方に消えた存在ではなく、今も私たちのあこがれや想像をかき立てます。

本展はきもの好きにとっては大変興味深く、楽しめる展覧会です。ぜひ時間に余裕をもってお出かけください。

この日の装い

この日の装い1
この日の装い2

大奥の豪華な衣装に合わせて、黒地の絽の流水に華文の刺繍訪問着に、名物裂の夏帯を合わせました。帯締めは道明の三井寺です。

この日の装い 帯回り

2025.07.07

よみもの

『大吉原展』 東京藝術大学大学美術館 「きものでミュージアム」vol.33

2023.09.19

まなぶ

有職組紐 道明(東京都台東区上野)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.6

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

江戸☆大奥

特別展「江戸☆大奥」

東京国立博物館 平成館(東京都上野)
https://ooku2025.jp/

日時:2025年7月19日(土)〜9月21日(日)※入館は閉館の30分前まで9:30~17:00(入室は閉室の30分前まで)

※毎週金・土曜日、8月10日(日)、9月14日(日)は20:00まで開館
※会期中、一部作品の展示替えを行います。

休館日:月曜 ※祝日の8月11日(月)、9月15日(月)は開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

『きもののヒミツ』ポスター

きもののヒミツ 友禅のうまれるところ

京都国立近代美術館(京都市左京区)
https://www.yomiuri-osaka.com/lp/kimono/

日時:2025年7月19日(土)~9月15日(月・祝) 10:00~18:00(金曜日は20:00まで)※最終入場は閉館の30分前
※前期(~8月17日)、後期(8月19日~)で、展示替えを行います。

休館日:月曜休館、ただし8月11日、9月15日は開館。8月12日は休館。

『芭蕉布展』ポスター

移転開館5周年記念 重要無形文化財指定50周年記念 喜如嘉の芭蕉布展

国立工芸館(石川県金沢市)
https://www.momat.go.jp/craft-museum/

日時:2025年7月11日(金)〜 8月24日(日)9:30-17:30 ※入館は17:00まで

休館日:月曜日(ただし8月11日は開館)、8月12日(火)

『素描コレクション展』ポスター

スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで

国立西洋美術館 [東京・上野公園]
https://drawings2025.jp

日時:2025年7月1日(火)~9月28日(日) 9:30〜17:30 (金・土曜は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで

休館日: 月曜日、9月16日(火)(ただし8月11日(月・祝)、8月12日(火)、9月15日(月・祝)、9月22日(月)は開館)

◆ 読者プレゼント ◆

江戸☆大奥

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は特別展『江戸☆大奥』東京国立博物館の招待券を3組6名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoto__

◆X
https://x.com/kimonoto___

※応募期間:2025年8月7日(木)まで

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